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立花緑の観察眼


 出来ることなら何も言わずにお引き取り願いたいのだけれども。



「しかし、しかし...... 公然の場でイチャイチャとはずいぶんお熱ですなぁ」


「あ、あれは......」


 彼女と対面したからにはこういう話題になるのは避けられる筈もなく。

 なおかつ会話の主導権を握られたこちらは防御手に回ることしか出来ない。


一度会いまみえ完全敗北を決してる身だ、用心して掛からないと。



「目立たない奴こそ注意深く。千草先輩の言う見た目で人を判断しない方がいいってことを直に感じ取れたといいますか、君に目を付けた甲斐があったってもんだよ、うんうん。まぁ話声はあんまり聞こえなかったけど」


「ストーキングしておいてその言いぐさって!」


「いやはや、おかげでこっちは良いもん見させて頂きました!」



 ぐっ、あくまでも明後日の方向。

 後ろから見てはいけないとの規約は無いにしても勝手に覗き見ていたことに悪気はないのか。

 満足気にスッキリした顔をされるといっそのこと清々しい。

 事情通じゃなくても何だか立花さんらしいなと思えてしまうんだから凄い、って関心してどうするよ......


「そもそも熱々カップルをご所望なら町中をくまなく歩くなり、校内で目を張り巡らせていれば出会えるように思うけど、絶対そっちの方が確実に」


 俺は普通にして一般的な名案を差し出す。

 立花さんの望む現実的な恋模様はそこら中に転がっているだろうから。

それこそ展開通りに事が進む予定調和じゃない、本物リアルのドラマが星のようにわんさかと。


けれど俺の思うことと立花さんの思う所は違うようで「ちっち、分かってないなぁ」と指を立てた。


「目に見えてラブラブしてる男女はなんかつまらないだよね。ありきたりすぎでしょ。甘すぎてコーヒーなんか飲めたもんじゃないよ。苦いのは論外だけどね、けどその点黒真っちは程よいイチャイチャ加減でかつ、幼馴染同士って所が実にいい風味感が出てて、ああ...... 良いもん見てるなぁって思わせられたね、うん」



 やれやれと言った態度、加えてため息を吐きながら持論を述べ始めた、かと思いきや自分で納得したように頷く。実に分かりやすいまでの変わり様だ。


 甘党ではない。かといってブラックも飲めない。

 実際甘いスイーツをイケる口ではあるにしても、これはもはや彼女なりの例えだろう。

度々感じる立花さんに対しての違和感の正体はもうハッキリしてる。


 彼女のいう現実的な恋愛というものはリアルであっても形なるものに在らず。

 つまり完成されたものには興味を示さないとの解釈、で合っている筈。


 むしろ考えてみてもそうだとしか思えない。


『そこの男子C! いや。“黒沼乃有真”くんだったね』と話しかけてきたことは記憶に新しく。


 あの時いたもう片方の報道部員、千草先輩に出された質問に俺は慎重に答えていたつもりだった。

 けれど逆にその慎重さが仇になった、突如として質問内容の中で冷めた態度で見ていた彼女は人が変わったように問い詰めてきた。



 【幼なじみ】 やっぱりそこが一番のプレイスポイントで。

 俺に執着してくるのもその特異点があるから。


 ...... 怒りとも呆れとも、また違った感情だ。


 この矛先をどこに向ければいいのか。

 俺としてはイチャついた覚えなんてないけど様子を覗き見ていた立花さんには聞き入れてもらえない、どう言いつければ...... そもそも悩む必要がどこにある。


 手を繋ぐ、腕を組む、肩を寄せ合う、抱き合う、時に見つめ合ったり、ファーストフード店などに立ち寄り別々に頼んだメニューを分け合ったり、はたまた路上で大胆に唇を重ねる。

 これらがあればイチャついていることになるんだろうけども。一つとして該当していない。別にやましいことをしていた訳じゃなし、にも関わらずただ二人でいる所を見られていた。

その一点だけでこれほどまでに焦燥感を抱いてしまうのは二次元ではない三次元に存在している女子と一緒にいるからなんだろうな。

 まして普段は見せることはない二面性を知られたとなればだ。


 色々と想像するだけならご勝手にどうぞって感じだけど、ここは誤解を解いておかないと面倒なことになりかねないわけで。


「良いもんも何も、あれは本当にただ二人で会話していただけで、とりわけ誤解を招くようなことなんてしてないんだって」


 愛美との間に何もないことは本当のことだとしても、コミュニケーション能力が低いせいでこんなありがちな返ししか出来ないというのが、ほんと自分のことながらに情けない。

 どのみちこの状況では言い訳すること以外の道はないか。

 どういう風に返そうが相手にしたら関係ないんだから。



「なぁんて言いながらも?」


 まさにこういう所だ......


 俺の話に耳を傾けていないかの如く、わざと伸ばしたように含みのある声での問い返しをしてきた。

元々タレ目気味である為か瞼を下げた目線を向けられると意味ありげな具合が強まる印象がある。そして愉し気に緩んでいる表情からは、言う間でもなく期待感がありありで。


前々から思っていたけどやっぱり苦手だ、人として関わり辛いタイプ。

自分のことを棚に上げられる側じゃないけども。



「だから違う――」


 中々食い下がってくれない立花さん。

 痺れを切らした俺は叩き気味に否定しようとしたが、横からの声に遮られた。


「そう実は恋人同士だったりして......」


「ちょっ!!」


 ようやく事態を飲み込めたらしい愛美。

 何を思ってか彼女は自ら寄り添ってくるなり艶めかしく囁いてみせた。

俺は無性に混乱が増すような発言に突拍子(とっぴょうし)な叫びを上げそうになるも「ってないない」と、すぐに否定してくれたことで思い留まる。

 悪ふざけと分かっていても身体は勝手に反応してしまうという。

 ああ絶対遊ばれてるよ。


 しかし、「コイツとはただの幼なじみ」ただ否定するだけに終わらず――


「でもって、昔ながらの腐れ縁ってだけだからっ!」


「がっ、いってーっ!」


 さらにカップルではないと強調するためか背中を叩かれた。

 なのに愛美は、きょとんと。前のめり姿勢で痛がる俺を目にして不思議そうな顔をしてる。


「あれ? そんな強く叩いたつもりなかったんだけど」


 思いっきり人をぶっ叩いておいてその反応はないだろ。

嘘をつけ、嘘と、睨み返そうとしたが。そういえば、言われてみれば確かにいう程の痛さはない?

もしかしてくれなくても力をセーブしてくれたのか、とはいえ。


「た、例え痛みをともわなくったってなぁ...... こういう時は自然と声が出てしまうんだよ」


 防衛本能ゆえ。

 自操作しているプレイキャラがダメージを負った時に「痛っ」と感覚的に出でてしまう口癖みたいな。

 その例えが通じる人ならともかくゲームに詳しくない奴に言ってもか。


「ふーん、しかしまぁ、叩きがいのない小さい背中だこと」


「なっ! 叩いた後にそれを言うか? 叩く前にいうのならある程度は分かるけどさ」


 どうせ...... 自分でも語れる背中がないということは重々承知しているさ。

 何も言葉で出さなくたっていいじゃないか。さすがの俺でも傷つくぞ、知らない仲じゃなかろうとも遠慮ってもんがあるだろ。



 けどまぁ、ようやくこれで誤解されることもなくなったはず。

 というか初めから愛美に言ってもらえれば手っ取り早く済んだ話だったり。



「ってな訳で。愛美とはそんな立花さんが思ってるような関係じゃなくて」


 肉体的な自信があろうとなかろうと、弱腰姿勢でいる限り口論では勝てない。

 俺は立花さんの方に目をやりながら「もう分かってくれただろと」と投げやりに言葉を掛けた。それでも彼女に納得した様子はない、どころか。


「やー。そうは見えな――」


「それに......」



 何か言いたげな立花さんだったが、俺は彼女の台詞を上から覆い被せるように言葉を繋いだ。


「俺なんかとは比べ物にならないくらいカッコいい彼氏がいるから」


 理屈としては納得せざるを得ないであろう一言パワーワードを。



 はきと告げれば一瞬の硬直化。

 それでも尚のこと立花さんは俺の言うことが信じられないのか、事実であるか見定めるように愛美を見る。

 言葉に変えることはせずに眼力だけの訴えで。


「まぁ、ね」


 見つめられること数秒。

 勢いに呑まれたのだろう愛美はたちまち遠慮気味に頷いた。

 その本人が事実を認めたことにより、さすがの立花さんも勘違いでいられる筈もなく。


「なぬっ! あやや、それはとんだ勘違いを......」



 タラりと汗の吹き出しというか、目に見えて分かりやすい反省が伺える。


 だが驚きも秒間、すぐさま頭を切り替えたみたいだ。

 となると次なる標的は当然。


「ちなみにその彼氏さんとは」


「同い年なんだけど中学から付き合ってて......」


 ほん先程はたじたじと答えてみせたが、その問いには慌てる様子はない。

 ああした話の流れから自分に来るであろうということは予想するまでもないか。


「今は、へへ、同じ高校に通ってるんだよね」


 なにぶん惚気のろけ話であるが為に振られた愛美はというと控えめでいながらも嬉しそうに口元を緩ませてる。その上。彼のことを思い浮かべているせいか、熱が充てられたように頬がほんのりと赤らいでる。

 自分の彼女にこんな満更でもない顔をされたら彼氏名利に尽きるというものだろう...... ほんとに羨ましく思う。



「ほー、かの有名な、ってお馴染みの台詞を言いたい所ではあるんだけど」


「あはは、うん。お恥ずかしながらまぁ、実際学校の偏差値はほとんど変わらないからね」


 偏差値はもちろんのこと学校によっては制服のデザインも様々。

今は時期的に男女ともに薄手の白シャツだけど。

俺と立花さんが黒を強調とした制服なら愛美のは赤を取り入れた柄になっている。

見栄えのいい制服だからと言って学力と比例しているとは限らないわけだ。


「けどまぁそんなことよか想いあっている彼氏と同じ所に通っているからかな、あいみんが幸せって顔してるのだけはひしひしと感じるよ」


「え、そ、そうかな...... でもあれだね、何だか実際に人からそんな風に言われると恥ずかしいかなぁ、なんて。まぁ悩み多き乙女同士だから分かっちゃうか?」


「もち、ズバリ言うと男には分からない微妙な変化も感じ取れたりもするアレだね」


「女性特有の能力と言っていいかは怪しいラインだと思っちゃうけどね」



 なんだかなぁ、飛び跳ねはしないでも内容が内容なだけに双方とも生き生きしているのが声からも伝わってくる。


 男には分からない云々で意気投合してるみたいだけどそうでもないというね。

 物事に対する考え方や感性が違うにしても、俗に言う直観は性別問わずだろうし。

でもそういう意味でいえば浮気癖の悪さを見抜いたり、何かと察知したりする勘の良さは女の方が強いのかもしれない。騙されて泣きを見るのはどちらかと言うなら男の方が多いって聞く......



「良かった...... かしはちゃんと...... てるみたい......」


 からと個々の感想に浸っていれば、傍で独り言ちる声が。

 小言に反応したのは俺だけじゃない、立花さんも「ん?」と思わず眉を寄せたみたいで。


「あ、ううん。みどりんの観察眼は凄いなって、だって本当に今幸せだしさ」


「そりゃまぁ、なんたって占いより確かな自信がありますから」


 その自負心は一体どこからくるのか。

彼女は褒められた嬉しさを表すように「腕が違うのよ腕が」と、その部位に手を宛がいドヤ顔。

水晶で浮かび上がらせての透視見じゃなくて、直接出向いての覗き見だもんな。

そりゃあ確実性は違うでしょうよ。




だから(......)、私としては二人方も中々にお似合いだと思うんだけどなぁ」



 それはいきなりのことで。


「え...... 」


 俺と愛美はそれぞれ手に持っていた空き缶を落としてしまう。

 反射的に、カランコロンと特有の音を響かせて転がっていくものを拾おうと二人して身体が動く。


「あっ」


「ああいいよ、俺が拾うからっ」


 やも、俺は愛美を呼び止めた。

 缶を拾うことぐらい一人で十分、と言うのは建前で。もっともの理由としては立花さんの発言が耳に痛いせいだ。



嫌らしい話、いくら頭で分かっていても自身の欲求、本能、煩悩を抑え且つ、女友達との線引きをするのは理性との戦いが必要になる。それは男である限り避けられない宿命であり、自分の近くにいる異性が魅力的であればあるほど抑制を効かせるのは難しくなるんだ。あくまでそういう目で見ていればの話だけど。


色々とせっかく意識しないでいられていたのに、どうしていちいち掻きまわしてくるのか。有難迷惑ってか無駄に浪費させてくれるよほんと。


 けれどもちょうど有り難いことに坂を登る手前だから時間は掛からない。

 暗がりの足元に気を払いながらも二本分を拾い上げ、元いた場所に戻ってみれば。




「――〇〇ライダーとか〇〇戦隊を始め変身シリーズ物に凄くハマってて」


「ふむふむ、あの小さい成で意外にヒーロー願望ありと、他には」


「えっと...... 小さいときは皆からマザコンくろまって呼ばれてたり」


「ふむふむ周囲が引くほどに母親との仲が親し気と、他には」


「中学に入ると性格が激変して時たま意味がよく分からない用語を使うようになったりとかもしてたかな」


「ふむふむ、思春期男子にありがちな病気を発症していたと、他には」



 ...... って。

 人がちょっとばかし目を離した隙に話の内容自体が全部俺に関するものに変わってるじゃないか、いつの間に話題がすり替わった...... 会話というよりはほぼ質問攻めって感じだけど、油断も隙もないのはこのことだ。



「あ、あの」


 おい、ちょま、ちょまてよっ!


 ニュアンスは似ているようで違う、癖のある万事屋〇さんバージョンで止めに入りたい。

 入りたいんだけどここは抑えないと。

 愛美だけならともかく立花さんもいるんだ。


 まぁいっても嬉し恥ずかし見られて困るような過去なんて、未成年には刺激が強い動画をこっそり見ていたのを母さんに見つかってしまったぐらいのもんで。そのことは当然俺の中の汚点として誰にも言える筈もなく、無論異性である愛美にも話せることじゃない。

言えようものなら隠し立てなんてせずに堂々と「俺だって男なんだぜ、エロ本の一つや二つ余裕で読み漁るだろ」と宣言してる。

 出来れば軽々と言ってのけれる男ではありたいんだけど、実際そんなこと口が裂けても言えないもんな。キャラ的にも



「んんっと、運動神経は良い方なんじゃないかな......」

「ふんふん、あー昔は出来ていた系か、よく聞くね、でも残念ながら今やクラス中でも下から数えた方が早いぐらいからっきしだよ、その内運動出来ない〇〇としてお呼び掛かるんじゃないかな」


 なんて、考えてる間にもせかせかと質問を繰り返す立花さん。

 さすがにそんな酷くないって、いやマジで。少なくてもスキップだけは完璧にこなせるから。

 して、答える方も答える方だ、なに意気揚々と答えてるんだよ、少しは抵抗してくれっ。


 と、そういう意思を込めて愛美を見る。

 すると目が合い、ニコっと涼やかな笑顔を返してきた。


っ...... 今のはヤバい。


 自身で特別可愛いと思ってる異性から不意打ちの笑み。正直おふった。が、ぽけーっと赤らめた顔で現を抜かしている場合じゃない。俺はそんなに柔くはない。いまの一瞬簡単に打ち落とされたけども...... あれは不意打ちだから仕方ないということにしておこう。

 そんなことはどうでもいいとして。


立花さんがなぜ俺の情報を欲しがるのか、普通は不審に思うなりするもんだろう。

そんな簡単にあれそれ漏洩ろうえいしてくれるなよ、なんて安っぽい友情なんだ、まぁ問われる度に疑うばかりなのもかえって失礼か。



...... 何せ愛美のことだ。


 中学のこともあって相も変わらずに俺が教室で孤立していると見てか立花さんのことを数少ない友達と思ってくれているのだろう。あるいはこれからの交友関係に繋げようと。

疑い深い俺と違って彼女あいつなりの人柄らしさがよく表れてる。



 だとしてもだ、これ以上いらぬ情報を与えさせない為にもここいらで止めないと...... がしかし一歩遅かった。

元々の過去に置いても平凡な背景しか持ち合わせていなく、名を残すような武勇伝もない。聞けることがないのであれば切り上げ時間は早くなる。


よもや俺の情報には事欠かなくなったらしい立花さんはまたも、要らない質問を投げ打ってきた。 



「そっか、じゃあ最後に実はこれが一番聞きたかったんだけど、あいみんから見て黒真っちは異性として考えるなら、ありよりのあり? それとも、なしよりのあり?」



 リンリンと直球勝負! なんて嫌なピッチャーだろうか。


俺がキャッチャーなら決してそんな勝手極まりない配給は望まない、要求された所で絶対にサインは出さない。例えブーイングされたって半ば強引にでも敬遠球へと持っていく。そう意気込んでいたのにまんまとマー〇シュートをストライクゾーンへと放り投げられてしまった。これは俺の判断ミスか。


 しかし意外や意外か、二択の内どちらを選んでもうまみのある答えになってる。立花さんにしてはえらく良心的だな、とか一瞬思ったけどそもそも彼氏がいるって分かっていながらその質問は明らかにおかしいだろ...... 

 少し気を抜いたりすればこれだから...... 


 一方の愛美に目を向けて見れば「え? あー、うーん......」 大いに悩んでいるご様子。

 この質問に対してどう答える。見逃さずしっかり振るのか、それとも見送るのか、当てる程度に収めるのか。はたして。

 嘘だったとはいえ時間を遡れば「俺を男として見てると」言ってくれたんだよな。



 そうして答えが出たのか視線を落とした愛美は静かに頷いた――なんて悠長に観察してる時じゃないっ。

 これは人事ではなく俺事だ。



「うん、わたし的には......」


「――――あぁぁあああっと!!」


 その先は言わせまいとした俺は両手を突き出しかつ奇声を発して二人の間に割って入った。

 


「もうこんな時間だ。お、俺立花さんを送っていくから、もうそろそろ暗くなってくることだしさ。ほら女の子の一人歩きは、ほら被害とかのアレとかで色々危ないだろ」


 自分でも思うけどこんな言葉がつっかえるようじゃどんなカッコつけた台詞だろうと台無しになるよな。

 そう言葉を出しつつも鞄のチャックを開けて空き缶をバッグ中に放り入れる。よしこれで手ぶらになった。やることは決まってる。

 俺は視線で位置を確認すると立花さんの手を強引に掴んだ、すると「ちょいちょい」と戸惑う声。こっちも多分いきなりで驚いたと思うが表情を見る余裕はない。

 そのまま握りしめながら家とは逆方向の道へと走り出そうとして...... 急停止。


「愛美、今日は勉強の邪魔して悪かった、じゃあまたなっ」


「え、あー、うん。また......」



 急いでいようがこれだけは言っておかないと。

 矢継ぎ早に別れの挨拶を添えることも忘れずに、全力でその場を後にした。


偏差値とは何ぞ......

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