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クローバーの男の子

サブタイトルを変更しました。

 幼い頃から兄妹のように育ち、どこへ行くのも二人一緒。

 喧嘩してもすぐ仲直りし険悪になることもない、いつもくっついてばかりいたせいか周りからも不思議がられるほど仲睦まじい関係に見られていた。


それが小学三年頃まで続いたある日、彼が転校してしまった――



 窓から差し掛かる夕日に照らされ、ゆっくりと過去を思い出すように告げる芽森さん。

 俺はその言葉を親身に聞く。

その内容からは二人が幼馴染であることに疑いはないことがよく分かる。

聞いている限り語ってくれていることは前に海音君が言っていたことと似ている、というよりそのまんまだ。彼も同じようなことを言っていた。それだけ二人の記憶が共通しているということなんだろう。

 だとしてもだ、たとえ語る内容が同じでも人の感じ方や思想は違う。

本人が嫌っていると思い込んでいてもその実、感情を表に出すことが苦手だった。ということも珍しくない。

 素直になれないからこそ誤解を招いてしまう、どこぞのツンデレっ子には良くある話だ。それとはまた別だけど...... だからこそ話合ってわだかまりを取り除く必要があるんだと思う...... ってどの口が言えるんだか、完全にブーメランだ。


「そんだけ、仲が良かったんならさ...... 遠慮する必要はないと思う。今も、彼だってそう思ってるんじゃないかな」


 俺は思ったことを口にした、しかし返事は返ってこない。

 余計な一言だったのか机に座っている俺と窓際に立つ芽森さんの間にまたしても微妙な空気が流れる......

長年会っていなくてお互い環境が違っていようとも関係性は変わらない。仲違いした理由はどうであれ、少なくとも二人の場合はそう感じ取れる。

 教室の窓から見える情景は変わり映えしないのに、じっと窓の外を見つめてる芽森さん。

表情は見えずとも今はその情景を過去と重ね合わせているように思えた...... 


こういう時に気が利く言葉をスッといえる人が羨ましい。

話せるネタもない、喋りかける話題も持っていない俺は横でだんまりを決め込みその後ろ姿を眺めることしか出来ない。



――そうして数分間経った頃、静かな沈黙を破り芽森さんは口を開いた。


「私ね、小さい頃は結構ツンケンでキツい性格だったの。誰かに誘われても遊びたいとは思わなかったし、多分子供ながらに冷めていたんだと思う。それと自分でいうのはちょっとイヤらしいけど...... 男の子にチラチラ見られていた自覚はあったんだよね。バカやらかしても周りは許してくれたけど女の子からはちょっと、ひいきめに思われてしまったり、趣味だって少しゲテモノ感が出てるキャラクターを好きになったり周りと違って浮いていたんだ。そして次第に誰からも声を掛けられなくなって...... ふふ、良くある話だよね」


 ...... 意外や意外だ。

 芽森さんもぼっちだった。心情で軽く衝撃を受けると同時に彼女の過去の姿を想像してみる。

 無論可愛らしい幼女の姿が形成される。ジト目で人を寄せ付けず他人に興味を持たない、そうまるで楓さんみたいな...... よし想像止め。

昔と今で性格が変わる人は珍しくないとはいえ今の芽森さんからは想像でき、なくもないか。毒舌だったり服の趣味だったり節々に面影が残ってる...... 未来なんて誰にも分からないんだし。俺だって昔と今では変わったと思う。

 そんな感想を抱いている間にも芽森さんの話は続けられる。


「毎日冷めた日常を送っていたある日、園児内でちょっとした事件が起きて......」


 そう口にすると芽森さんの声に少し勢いがなくなった。


「事件......」


「事件、というよりかは騒動といった方が良いのかな。通っていた幼稚園で四つ葉のクローバー探しが流行った時があって一人の男の子が私の為に、と必死になって探そうとしてくれたの『もし探して見つかったらさ、あやねちゃんもきっと喜んでくれる』と意気込んで、その男の子には悪いんだけど私はどうでも良かったから面白半分で返事をして......」


 なるほど、それが海音君との出会いという訳か。

 四つ葉のクローバー探し、中々にロマンチックな...... 

 小さい頃なら女の子が好きになる要素としては十分あり得るシチュエーションもといエピソードだ。

なんだか恋染紅葉と言う漫画を思い出す、少年ジャップで読み切り掲載された時の衝撃は未だに忘れない。連載版は残念だったとはいえ、それがどうしてお色気路線にいってしまったのか...... 


「結局その男の子は幼稚園から帰った後も日が暮れるまで探し回って警察沙汰にまでなってしまったんだけどね。あの時はほんと悪いことをしたなぁ......」


 幼い子供が日が暮れるまで帰らないと親は心配するから警察を呼ぶのは当たり前のことだ。

まして園児にスマホを持たせる親はいないだろう、少数はいるかも。

 それと確か、四つ葉は日光が少ないと光合成が思うように出来ず成長を妨げられてしまう為に葉を増やす。なので日陰を探せば見つかりやすい、だったか。所詮漫画の知識だけど......

小学生探偵みたいな博識だったり、物知りの親や先生に聞いたらともかく子供の浅い知識だとそう簡単には見つけられない。

 よっぽど必死だったんだろうな、その男の子。当時の海音君の気持ちは良く分かる。同じ幼稚園に通っていたら俺だって同じことをしていたと思う。



「それで海音君は見つけられたの」


 どちらにしろ俺の場合は見つからない側だけど、内心そう思いながら気になった質問を背中に投げかけると芽森さんは「え、かい君?」と声高々にこちらを振り向いた。


「え? うん、その男の子、海音君は四つ葉のクローバーを見つけられたのかなぁ......って」


 なぜ驚いたのか分からず、とっさにもう一度聞いてみた所でしまった、と気づく。

この質問は愚問か、見つけられたからこそ二人の出会いは特別なものになっているに違いないんだろうに――しかし。


「――見つかったよ、でもその男の子は“海君”じゃないんだけどね」


「え......」


「勘違いさせちゃったかな。でもそっか、良く考えたら普通はそっちと思うよね」 


 あんぐりと口を開いてしまったからか苦笑みで返された。


「あれ、王道的には......」


 俺の中では四つ葉を探していた男の子が海音君でそのクローバーを受け取った芽森さん。

そして海音君の眩しい笑顔を向けられた彼女はだんだん心が惹かれていき、果てない闇から救い出してもらう。という自分勝手なストーリーが展開されていたのに――まったく違っていた。

 思い込みって怖い...... そこは普通に王道でいいと思うけど。

今まさに俺の脳内で将来なりたい職業カテゴリーから探偵職が消えた瞬間だった。俄然そんなものは存在しない。

人にあれだけ言っておきながら、実際言ってないけど。現実の出来事を漫画として見てしまうなんて、俺もそっち系の人種であることはもう確定なんだろうな。


 あれ? でもその男じゃないなら海音君は......


「なら海音君はいつ出てくるんだ、って思ってる?」


「え? エス――」


「パーじゃないよ、黒沼君って結構、ううん。見た目どうり大げさなんだね」


 突然考えていたことを言い当てられ思わず口に出そうに...... 遅いか。

ふふ、とこじんまりと笑う芽森さん。

決して人の心が読めるエスパーや心の中を見透かす千〇眼とかそんな非現実的なものじゃないかなんてこと思ってない、そんな非現実的な......まぁ一瞬思ったけども...... 


「で、でも何で分かったの」


「男の子を海君と思い込んでいたんだから、それは流石に、分からない方がおかしいと思うけど」 


 男の子が海音君じゃないのかという俺の見当違いの質問、そこから導きされる答えは......小学生でも分かる単純な答えだった。それを聞いた俺はつまり...... いや、今は項垂れてる場合じゃない、まだ話は続いてる。

 ここが本題なのか芽森さんは目をつむった。


「海君との出会いはそんな運命的でもなかったかな、初めは叱られた記憶があって。確か、四つ葉のクローバーを男の子に渡される時、初めて海君の存在に気づいたの、その時が私と海君の最初の出会い――」



何話か書き溜めてから投稿させて頂こうと思っていましたが、そんな余裕はありませんでした......

ちょっとずつ書いていくのが精一杯......(汗)


 まだ続きます。。。。。。

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