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気になる二人の動向

 

 ――――ガコンッ。


 ボタンを押すと缶ジュースが一本落ちてきたのでそれを拾い上げる。


俺は朝食時にしかコーヒー類は飲まない。パンには合うけど水分補給には適さないだろうし単品で飲むのは苦手だ。特にブラックなんか飲めたものじゃない。

こういうことをお子様舌というのかも知れないけど俺の舌には炭酸が一番合ってる。それは良いとして問題が一つだけある。

今は人気がないので大丈夫だけど、人に見られると引かれることは間違いない。人がいたら抑え込んだり、少しずつ飲んだりと考慮しないといけないのが面倒だ。自宅で飲んだりする分には困らないんだけど。

上品に炭酸を飲み干せる技やコツはないものか......

当然ながらハイ〇ンウォーキングのアレは参考にしてはいけない。


 そう懸念するも冷たいコーラの蓋を開け半分ほど飲んだ所で盛大なゲップが出た――



この学校に自動販売機は二つある。

一つは二階、パンや野菜が売られている食堂に。

もう一つは校外に設置されてる。

部活で頑張ってる人用だろうと思うけどこういった配慮は助かってるだろうな。汗を欠いたり暑い中で走り回るのは体力を消費する、すぐに水分補給が出来るのは大きいと思う。 

今も休み時間ということもあり数人程の生徒がグラウンドに集まってる姿が見えてる、他の人が来るまでに立ち去らないと。

 ペットボトルはまだしも缶ジュースを一本飲み干すのはそう時間はかからない。

何回かゲップを繰り返しながらコーラを飲み干し、ゴミ箱にボッシュ―と...... したが嫌われた。

ダサいことこの上ない――途端『ハッ』とし横を振り返った、幸いグラウンドにいる人達には気づかれてない。

み、見られなくて良かった......

これは否が応でもカッコ悪すぎて目立つこと請け合いだ。

結局、手で拾い上げ直接入れる羽目になった。慣れないことはするものじゃないか......



***


 コーラを飲んだついでにお手洗いを済ませ、教室に戻ろうと渡り廊下を歩いていた途中で少し足を止めた。

2組の教室内を通り過ぎる前に窓ガラスから中の様子を伺うとクラスの面々、海音君達の楽しそうに漫談している姿が見える。

あの時、公園で海音君と芽森さんの関係を聞いたせいなのか動向が気になるようになり、ここ何日かはつい二人の様子を目で追ってしまっている。それに男女の関係にまつわる宮村さん達の話を盗み聞きしていたせいか余計に意識してしまう。



『おれとあやねは幼馴染なんだ』


 海音君はそんな風に言っていたけど今はもう関係が薄れてる。

 幼馴染として仲が良かったのは小さい頃の話だ。


俺が思うに昔別れた友達や知り合いと距離を詰めるのは簡単なことじゃない。

長い年月が経つと色々変わって話しかけづらくなる。しかしどちらかが寄り添ってくれば自然と振る舞えるようになれるかもしれない。でも今のままだとそれは無理そうだ。

彼の様子を見てる限りは近づこうとはせず、どこか話掛けるのが気恥ずかしいのか他人の振りをしてる。ただ一言『久しぶり』その一言さえ出せれば“きっかけ“が生まれるのに、だけどその一歩が重いんだ......

 クールな見た目と反して温厚な性格で謙虚な態度、そして幼い頃に喧嘩したままという、それらが重なってしまいどうにもタイミングを掴めないんだろう。

芽森さんにしたって自分から話かけられたら苦労はしない。


二人ともクラスが別なので接触することは少ないけど、その少ない中にも注意深く見ていると気付くこともある。

例えば廊下を移動している時だったり、1組と2組の教室が隣ということもあり顔を合わせてしまうことだって少なくない。その時に、ほんの数秒間だけど目線が変わっているのが分かった。

 フィーリングというのか芽森さんが見ていない時は海音君が、海音君が見ていない時は芽森さんが、そして目が合ってしまった時はすぐさま視線を逸らす。

偶然じゃない、間違いなく芽森さんは海音君を...... 


「――おいっ、待てよ真也、それ返せって!」


「――へっ、誰が待つかよ、この弁当を取り返して欲しかったら追いかけてくるんだなぁ」


 何やら前から声が聞こえて来る...... と思ったと同時に扉が開いた。

勢い良くドアの正面から出てきたのは調子の良さそうな真也と、何やら困った様子の海音君?

二人は俺が目に入らなかったのか、それだけ存在が薄いということなのかそのまま教室を出て行き、廊下を走り去っていった。


その際「捕まえられなかったらジュース奢りなぁ~」と言う声が聞こえたけど何が何やら......

取りあえずあの人達はいつも騒々しいな...... まぁ一人テンションが異様に高いだけなような気もするけど、っといつまでも突っ立てるんじゃおかしいか。


 じっと足を止めていても仕方がないので自分の教室に戻ろうと再び歩く。


さっきのあの明るい様子、海音君にしてみれば新しい仲間と接することの方が気楽なのかもしれない。

昔の知り合いより新しく知り合った人の方が長い関係性を保つと言われてるし、小学生より中学生、中学生より高校生で仲良くなった人といった具合に。

でも海音君は関係を取り戻したいと言っていた。タイミングさえどうにか出来れば......


 例えば同じ思い出の場所でゆっくり話せることが出来ればどうにかなるんじゃないか、けど海音君の周りにはいつもあの人達がいて二人っきりになんて、せめて同クラスだったらイベントや何かの行事で話す機会があるのに......


 

 そもそもなんで俺は二人の仲がこんなに気になるんだろ、俺には何ら関係ないことなのに......

 それは自分でも分かってる。たぶん、重なって見えるんだ。芽森さんと海音君の二人が俺とあいつ...との関係に似てるから......


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