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男は単純に出来ているらしい

ポイントは適当で、大事なのは過程である(汗)

 

 チアリーダーが着る衣装は全体的に華やかだ。

明確な色合い、適度な露出度、動く度にロマンが見えるかどうかのチラリズム。


立花さんが用意していた衣装はまさにそれで、紅組にちなんでるのか胸部にレッドチームと英語のロゴが入ってる赤色を主体とした衣装。服の上部は肩が露出しており涼し気で、下部は切れすじ模様の短いスカート。

それらはどこからどう見てもチアガールな衣装ではある。


がしかし、一番のウィークポイントである箇所...が露出されていない......



「うぇぇぇ...... 何だよそれ」


「く、組み合わせでこんな合わない衣装は、ねぇわな......」


 男子達は目の輝きが失われ醒めた表情になってる。

ほんの数分間、希望に満ち溢れていた瞳はどこへいったのか?

チア衣装に着替え終えた女子達が戻ってくるなりこぞって顔を歪めた。それ故に彼らと同じ感想を抱いてしまうのは多分、いやほぼそれが原因だろう。

太ももが露出されていなく、色気というものが感じられない。それどころか......


「はぁ? 別に、あんたたちを喜ばす為に着てるわけじゃないんですけど」


「そうだよね、それにこんな寒い中なんで女子だけ素肌を晒さなくちゃいけないのよ。ジャージを履くことの何がいけないのかな」


 あろうことか、スカートの下に体操着を履いている。幾分その様は異色だ。

寒いとはいえ、そんなことをしたらチア衣装特有のチラリズムが生まれる訳がない。

当然ながら男子達は納得いかないのか抗議を唱えてる。


「ぐ、それなら着なければいいだろうが! 何も嫌々着る必要ねぇだろう」


「だよな...... こんな異質なチア姿を見せられるくらいなら、着ない方がマシだわ」


「一回着てみたかったんだよねぇ、こういう機会でもないと着ようとは思わないし」


 女子の一人は衣装を気に入ってるようで、手で触ったり、男子に見せびらかす仕草をするもやはり色気が皆無だ。


「じ、じゃあ何で肝心の部分を隠すんだよ。スカートを履く意味ねぇじゃねえかか。チアガールっつうのはな、太ももをださないと何の意味もねぇんだよ! 動いた拍子に『チラッ』っと見えるからいいんであって――」


「そんなの知らないし」


「知らなくねぇよ! こういうのは相場があるんだよ。女性警官なら、なめらかなふくらはぎ。看護師ナースなら丸いヒップ。チアガールは健康そうな太ももが――」


「うわぁ、男子最低......そんな目線でしか見てないからモテないんだよ」


 女子達はその男子の発言に本気で引いたようで、それぞれ拒否反応を見せてる。

男はどうしてモテないという言葉に弱いんだろ...... そう思わせられるほどに女子の嫌がる様は何だかショックを受ける度合いが大きい。何故か男はそう出来ているらしい。

発言した男子は事実モテないらしく胸に打撃を浴びせられたように言葉を詰まらせてる。


でも一部を除いてそういう目線で見てない男子は少ないんじゃなかろうか。

俺だってそうだ、限にチア衣装を着ている女子の中に芽森さんの姿がないのは残念でならない。強制ではないんだし着るも着ないも自由か。

中には外見に自信がない人、興味がない人や羞恥心がある人だっている訳だし......

芽森さんに限らず宮村さんや楓さんも衣装に着替えていない。


して衣装を持ってきた本人、立花さんはというと——


「先輩達もどうですかぁ。是非是非、低気温で冷えているので下は着用していても構わないですよ」


 テント内の後ろを見れば、先輩達の分も用意していたらしく、次々に声を掛けて行ってる。

軽そうな口調ながらも先輩への敬意を払ってるみたいだ。

こんなことをしても結果が変わるとは思えないけど......



***


「提案ってチアガール?」


「うん、そだよ。この衣装を女性陣が着る!」


「え? それだけ」


「うん。それだけ」


 質問した者に限らず俺もまた頭に疑問符を浮かべる。

 何を言うかと思えばただ衣装を着るだけって...... 


「ほらほら、今負けてるわけじゃん。得点ボードを見て見なよ。この差ってそう簡単に埋まるもんじゃないと思うんだよね、っつか埋まらないでしょ」


 立花さんが指さすと全員得点ボードに目をやる。


――――蒼組〈623pt〉 碧組〈436pt〉 黄組〈411pt〉 桜組――――


 確かにこのままだと逆転は難しい点差だ。

午前の部と午後の部の獲得ポイントは半々になっていて最高ポイントが1000、紅組が逆転するには200ptは取らないといけない。

午後の部が再開されてからそんなに時間は経っていない、まだ逆転は可能だけどこのままいけば確実に一位は取れそうにない。


「男子の内に眠ってる潜在能力的な何かが開花するかも知れないし。私はそれに賭けよっかなって」


「た、立花さんってもしかしてそっち系の人だったりする?」


 奇怪な物言いに思わず変なことを聞いた何々さんには驚かない、俺も同じことを思った。

潜在能力って、そんなものある訳ないというか、何言ってるんだろ。天然なのかはたまた......

元々の運動センス云々、覇気も薄れ疲れ切ってる中で覚醒というのはありえない......

脱皮や吸収を繰り返し完全体になりさえすればあるいは――いや俺の方が何言ってるんだろ。



「んーなんていうかな、火事場の馬鹿力的な?」


「それ、たぶん違うと思うよ」


 再度、立花さんの天然じみた発言には当たり前につっこまれる。

火事場の馬鹿力はある条件下で脳のリミッターが解除され普段は抑制されているパワーを捻りだすと言うものであり、切迫した状況に追い込まれたり、窮地に陥いった時その土壇場で無意識に限界異常の力を発揮することだ。意図的に出すことも可能だと言われているらしいけど滅多には出せない。

ましてや、レクリエーションで気力がないだけの状態では不可能だ。


「いや、あのさ...... 潜在的な何かは置いといてそんな単純なことで身体能力上がんのかな?」


「そりゃあ上がるっしょ、なんせチアガールだよ。アゲもアゲになるに決まってるじゃん。そだよね男子諸君」


「は?」


「え? お、おう」


 女子の質問に立花さんは瞳を輝かせながら答えた。その流れで男子は急に振られたからか焦りながらも肯定した。


「どうだか」 


「いやあっ、もちろん上がるぜぇ? チアガールで上がらない男はいねぇぜぇ」 


 男子は焦ってるからか微妙にす〇ちゃんみたいな口調になってるのには気づいてないんだろうな。


「んなんでどうにかなる訳ねぇだろうがよ」


「だよねー」


「゛ああ゛ あー何かやる気出てきたわぁ、まさにYAG(ヤル気アゲアゲ元気ハツラツ)」 


「体操着より華やかな、チア衣装が好っきー」


「もし女子がチア衣装を着てくれたらなぁ―― なんだかイケそうな気がするぅ~」


 宮村さん始め、信じられないといった様子の女子に対し露骨に頑張れるアピールをしだす男子。

どれだけチアガール姿を見たいのか、必死過ぎるにもほどがある。おまけにどこかで聞いたことがあるフレーズになってるのは気のせいか。


「分っかりやすいな、てめぇら。本当に逆転出来る保証あんだろうな、まっアタシは着ねぇけどよ」


「右に同じく、っつか彼氏以外に見せたくねぇし」


「あたしは着てみてもいいかな、せっかくなんだし」


「あ、じゃあわたしも」


***


 みたいな感じで今に至るんだよな......

と回想を終え聴覚が冴えると男子はまだ文句を垂れていることに驚く。


それもそうか、男子の期待とは裏腹に華やかなはずの衣装姿があの有様じゃあ、モチベーションが高まるどころか急激に冷めていってるに違いないだろうし、逆転は無理かなやっぱ――



「ほほう、面白そう...なことをしてるな」


 ふと声が聞こえてきた方を見れば、今までどこに行っていたのか栄田先生がにんまりとした表情で割って入って来た。こういう時の先生は何故か嬉しそうにしてると思う。

いや、出て来るのが遅いんだけど......



体育祭の描写ってこんなに長いものなのかな......

過程を大事にすればするほどにテンポがなくなるのに、そもそも展開がもうあれか......

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