喧嘩するほど何とやら
あるヒロインの口調的にも性格的にも棒ツンデレ声優さんの声が浮かんでしまう...... もしかして自分はく〇ゅぅぅ病に掛かってるのかもしれない。『このバカ犬』と罵られたい......
――ハッ!? 自分は今何を......
――ごちそうさま様でした。
心の中で呟きひっそりと食べ終わった。
愛も変わらずの卵焼きにウインナー、それと唐揚げに冷凍食品、極めつけの真ん中に添えられた梅干......さすがに飽きてきた。
早起きして作ってくれるのはありがたいんだけど少しバリエーションが欲しい。母さんに言っておくかって思うけど言うの忘れてしまうんだよないつも。
体育館裏から戻る最中テントでぼっち飯を見られる心配はしていたけど考えるだけ無駄だった。
良く考えるまでもなく誰も一人で食事してようが気にする筈もない、存在が薄い奴が何をしようと誰の目にも入る訳がなかった。でも俺だって他人の立場ならそうする。アイドルと一般人ならアイドルを見てしまうし、所詮そういうもんだよな。ただ、人が苦手とはいえ気づかれないのは少し寂しい気もする......
空になった弁当箱を鞄にしまい隣のテントを横目見ると思わずため息がこぼれた。呆れてしまう。
まだ続いていたのか、鞄を教室に戻したいからこのまま席を立ちたい所だけど今立つのはどこか忍びない......
「ねぇ彩姉聞いてよ、真也ってば私ばっか責めてくんのよ。私何もしてないのに」
「はんっ、何もしてないから責めてるんだろうがっ、大体よぉお前が出てる競技がことごとく最下位ってどうなってるんですかね。おかげ様で海音や俺達がほとんど尻ぬぐいしなきゃなんねぇんだよ。ほんと昔っから運動出来ないよな真緒ちゃんは」
「な、何よ! アンタだって女子の胸や尻ばっか見てるくせして」
「ちっ、ちっ、ちっ。それと、これとは? 関係ねぇよ。むしろ動力限になってるといっても過言じゃない。その証拠に俺はちゃんと結果はだしてるしなぁ。まぁ、あなたの小ぶりなレモンじゃあ何の力も沸いて――ぐふぉ!」
「はぁはぁはぁ...... それ以上言うと殺すわよ。」
「ま、まま、待て。ぼ、暴力はやめろ! というか止めてください。た、ただ正論を吐いただけだろう。彩花さん、見ました? こんな理不尽な暴力ないですよね」
実に賑やかしい、周りが引いしまっているほどに。
どれだけ言い合ってるんだこの人達は、俺が弁当を食べていた時もごちゃごちゃ言ってたし。
とはいうも実質やかましいのは二人だけだ、髪型がウェイブな生意気そうな女子と同じく眼鏡をかけた見るからにチャラそうな男子。
女子が何かを言えば男子は茶々を入れ、結果殴られる。その繰り返し。
弁当じゃないけどこの二人のやり取りもいい加減飽きてきた。仲が悪ければ話さなきゃいいだろうに――
「フフ、今日も一段と仲が良いわね二人とも。けどそろそろ止めた方が良いんじゃない、あなた達の仲に周りの男女は嫉妬してしまってるわよ」
「はぁ!? ど、どこがっ!」
凛とした余裕のある声を上げたのは少し長めのショートヘアーの女性。
その人が静止を促すが二人は声を揃えて否定した。
さいねぇ、と連呼されているのを聞く限り誰かのお姉さんなのだろう。
昼休憩でグラウンドを離れている生徒の空いてる席に座っており彼女も雑談に交じっていた、というよりかは愚痴を聞かされてるみたいだ。
色合いの良い赤いモコモコした服を着ていて、寒いからか顔をマフラーで覆ってる。第一印象は綺麗な女性だ。
「そういう所なんかね、フフ、声まで揃えちゃって。周りを見てみなさい、羨ましそうに目を細めてる人がチラホラと」
それって皆白けてるけてるだけだと思うけど......
「さ、彩花殿。わたしにはあなたの感性がいまいち良く分からないです」
三人と同じく輪の中にいた凛々しい女性徒が頭に手を乗せた様子を見ていた俺は、脳裏に彼女が言わんとしている言葉を想像してしまう。飽きれてるんだろうな。どこからどう見ても不仲にしか見えない。この女性はどんな感性をしてるんだろう。
けど物事をいい方向に捉えれば悪口を言い合えるほどの親交があるともいえる訳だし、その人の言うことにも一理あるかもしれない。本当の意味で仲が悪いなら口喧嘩なんてしない筈だ。それにそういう相手がいるだけ少なくとも、いや多めに見てもボッチよりかは......
けどそういう意味ならアスカさんとシンジ君違った、宮村さんと緒方君にも進展がありそうだったな。
そんな風に考えてるとまた一段と隣のテントが騒がしくなったようで思考が止まる。
さっきは気づかなかったけど、女性の膝の上から人の髪みたいなものががぴょこんと覗かせてる。
モコモコな服で隠れているせいかそれが何かは分かりづらい。不思議に思い観察していると、その女性と目が合ってしまい瞬時に顔を下に向ける。心臓が脈打ちバレてないよなと願いつつも、もう一度見る。今度はバレないように周囲に目を動かしながら。
「あ、起こしちゃった唯華?」
数秒観察していると彼女は首の下を見てどこか気まずそうにな表情になった。
誰に話かけているのか、それは次の瞬間女性の声が耳に入ると理解した。
ぴょこんと逆立っていたのは小さい子供の髪だったようだ。その女性の服で多い被さっていた為に見えなかったんだな。
その子はただ眠っていただけなようで上体を起こすと目が覚めたばかりか、寝惚け眼で目をこすりながら声を上げた。
「う、う~ん...... あれ、おにいちゃんは?」
「お兄ちゃんはね、今トイレに行ってるの」
「ふぅん、そうなんだ」
まだ小さいから声があどけない、呂律も回りきっておらず自然な可愛らしさだと感じる。
テレビで見るような子役はハキハキと物事を言うから苦手だ、悪く言えば大人ぶってる。子供特有の無邪気さがないというのか、演じてるというのか子供は子供らしく......
でもどっちにしろ子供は苦手だ。それは自分自身がまだ大人になりきれてないせいか。
「わぁ可愛い!」
「あ、あの、この子お子さんですか? 可愛いですね、私の弟と大違い」
「え? 違うわよ。お子さんだなんて恥ずかしいな、私まだ十代だよ、この子は妹よ」
女の子は小さい子供を見るとなぜこんなに興味を示すのか、俺の中の世界ふしぎ微発見だ。
その子に気づいた何人かの女子達がお姉さんに話かけだした。
子供には女性を魅了する能力が備わっているんだろうか、女子達は『キャーキャー』と鳴き声を上げてる。まるでポ〇モンだ、冗談だけど......
確かにその子は可愛いとは思うけど、しかし俺はその子をどこかで見た覚えがないような...... あるような。
「すまない、唯華ちゃんは人が苦手なんだ。少し声を抑えてもらえないだろうか? そう騒がられては」
記憶が瞬時によみがえった。
凛々しい女子がその子の頭を撫でた姿を見たら思い出した、遊園地で迷子だった女の子だ。
通りで見覚えがあったわけだ、そういえばあの時もこのメンツでいたな。
「キャァァー! 可愛い」
「何この可愛い生き物!」
「ほんと、わたしのクソ生意気な弟とトレードしたいくらい」
まぁでも頭を撫でられて目を細めてる女の子の姿は女子達には逆効果だったみたいで、さらに可愛く思ったんだろう、静止虚しくも声のボリュームが上がる。
その様子に凛々しい女子は女の子を見ながらあたふためき出す。
子供なんか対して珍しくはないだろうに。そんなに見たければ保育園にでも行けば会えると思う。
ただ校内では遭遇率が低いせいか物珍しいのかも知れない。今この場に子供、それも幼稚園か低学年に見える小さくて可愛いらしい女の子ときた。
女性の気持ちは分からないけど校内周りを見渡してもその女の子以外の子供は見当たらないようだし、そういうことなんだろうな、知らないけど。
「冗談でもそういうことを言うのはどうかと思うぞ。お姉ちゃんがそんなことを口にしてると知ったら君の弟がどう思うか、恐らく泣いてしまうだろうな。物事は考えて口に出さないと」
数人の女子達が盛り上がってる中、誰かの声が聞こえてきた。
この大きい声のなか透き通っていて良い声だ。途端、声が鳴りやむ。
この声の持ち主は多分と俺同様に皆もそちらに注目する。
「あ、三羽君。まさかこの子って三羽君の妹なの?」
「唯華って言うんだ。大事な妹を勝手にトレードされても困るよ」
「あー、さっきの聞こえてたんだ。ごめん、さっきの冗談だからね。鵜呑みにしないでよ。まぁでも三羽君となら有りかな...... なんて」
「おっほん...... あの、何ならさ、君の弟と俺をトレードしても――」
「は? キモッ。冗談はそのダサい星形眼鏡だけにしろっての」
「てめぇより弟の方が百倍可愛いわ」
「マジキモい......」
一体何をどうしたらここまでの差が出るんだろうか、確かに高乃塚の眼鏡はダサいと俺も薄々思っていた。けど顔はそんなに悪くない。どれだけ女子達の反感を買ってるのか、海音君と比べて女子達の反応の違いが段違いだ。驚きはするも同情はしないけど。
それにしても戻ってきたってことは話が終わったのか、気になるけど気にした所でか。
それに何だか賑やかになってきてここも気まずい、大人しく教室に行っておこうかなと鞄を持ち椅子から腰を上げた途端、気づいた。そういえばあの茶髪ウェイブの女の子会話に参加してなかったような...... まぁいつも話に混ざるとは限らないか。
隣が雑談に華を咲かしてる中、俺はひっそりとグラウンドを後にした。
描写、描写、どうしても描写が美しく描けないんだ......
地の文とは何ぞ......




