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その忠告を理不尽だとは思わない

文章力が欲しい......

 

 午前の部が終わり、一旦休憩タイムが設けられる。

その間は昼食を取るなり寝るなり、雑談するなり携帯を弄ったり何をしてようが自由だ。ほとんどの人は始めに昼食を取ることが多いように思う。

皆それぞれ立ち上がりあちこち移動し始める中、俺も同様に座っていた椅子から離れる。

何か悪寒がする――



 運動場を離れ教室に入ると昼食を食べ始めてる人が何人かいた。

しかしながら芽森さん達の姿は見当たらない。外で食べてるのか、天候が悪いにしても体育祭なんだし、もしくは声を掛けられているか。どちらにせよ芽森さんがいないなら興味はない、別に教室にいたとして俺の行動には変わらないけど、と自分の席からバッグを手に取りそそくさと教室を出る。


 いつも俺が教室で昼食を取っているのは何を隠そう、芽森さんを眺める為だ。

 そうでなければ一人寂しく便所飯......とまではいかないにしても、人が少ないような場所で食べたい。その条件を満たしている中で一番適しているのは最上階にある屋上だけど用がない限り鍵を閉められてる、開けようと思えば開けられるはずだ。職員室で鍵を貸してもらえば、だけど面倒なことこの上ない。

何より、誰もいない場所で一人で食べていると虚空に駆られるようなどこか寂しい感情を募らされる。


 うっとしいと思ってはいてもあの教室の雰囲気は嫌いじゃない、やっぱり一人は...... けど今の教室の気まずさは耐え難い、そのせいもあってかここ最近はわざわざ体育館裏まで弁当を持って行って食べる羽目になってしまってる。もっとも今も教室にいるのが嫌だからここまで来たんだけど......



――そう思考しながらも体育館裏に着くや否や、さっきの嫌な予感は当たっていた。

もしやと思い携帯を取り出してみると、着信が何件か入っていた。


俺には親しい合い柄の人はいなく番号を入れてあるのは父と母だけ......、ただ登録してあるだけの件数を除けばだけど、そして着信経歴はもちろん全て母親からだ――


 俺の携帯はふだん鞄に入れてある為、余程のことがない限り取り出すことはない。

家族が倒れたり、帰り路に事故現場に遭遇してしまったり、はたまた女の子のアドレスや番号の交換...... はないか。サイレントマナーモードに設定してあるから尚更に。いや、携帯持ってる意味あるのかこれ。

 けどせっかく買ってもらったんだ、いつ何時何が起こり得るか分からないし、持っているに越したことはない。そうは言っても、何だかんだで小学生ぐらいから持ち歩いてるんだよなこれも、もう五年ほど経ってるし物持ちが良いと言えると思う。



 母親に電話を掛ける前に一度辺りを見渡し誰かいないかを確認する。

 校内で携帯に触れてる所を見せたことがない為か警戒心が高まる。友達がいない奴がこっそりと携帯を弄っていると知られた日には、思わず能動的にフォルダに入れてある数少ない二次画像を消してしまいかねない。

 特にお気に入りのル〇ズやシ〇ナ、ナ〇、に神〇、それにア〇フォンス...... 一応好きな声優が演じてるだけに保存してあるけど、男キャラは消しても問題ないか。

 周りを見ても俺以外には誰もいないみたいなので、さっそく通話ボタンを押し携帯を耳に充てる。



***


〈もしもし〉


〈あ、やっと出てくれた。何度掛けても出てくれないんだから〉


〈知ってるよ、けど今日は体育祭だから出られなかったんだ。で、何か用でもあった?〉


〈用ねぇ、用っちゃ用だけど...... えっとね、やっぱり心配だから今から見に行っちゃダ――〉


〈メ。絶対に来ないで、って昨日の夜に約束したばっかじゃ......〉


〈有真、約束っていうのはね、破る為...にあるのよ〉


〈いやいや〉 


 汚い、それは汚い。子供の、俺の1/3の純情心を何だと思ってるんだ。

 とはいえ、俺も約束を守れるか分からないしお互いさまか。


〈ちょうど洗濯も干し終わったし、何より暇なのよね〉


〈じゃあテレビでも見ててよ。もうすぐジュウニジナンデスが始まるだろ〉


〈でもね母親としては息子の晴れ姿は見てみた――〉


〈あのさ、もう次の競技始まるから切るよ。ほんと頼むから絶っ対に......〉



《――来んなよっ!!》


 え?


 途端、声が重なって聞こえた。同時に途切れる音も同じタイミングで。

俺とは違う、少し高めの声色だったような......

今のは、と恐る恐る横を見てみる。金色に輝く髪がチラリと視界に入る、その人も俺と同じことを感じたのかやがて互いの瞳が合わさると目に入ったのは楓さんだった、いつの間に...... 

彼女も俺がいたことに気づいていなかったのか、どこか機嫌が悪そうな風貌でスマホに耳を宛がっていた手をゆっくりと下すと二人して黙りと見合う。


「あ、えっと......」


 『楓さんも誰かに電話する為にここに?』

そういう一言さえも言葉に出せない。俺が臆病なだけなのか、彼女が醸し出す雰囲気がそうさせているのか。無言が辛いとはいえ、そんな当たり前のことを聞いてもなぁ。と数秒ほど思想を巡らせていると『ねぇ』という声が耳に入り思わず『はいっ』と楓さんを直視すると、腕を組みながら神妙な顔つきで俺を睨んでいた。

怖い...... その険悪な表情に生唾を飲み込む。


「アンタ黒真乃だっけ? まぁ名前なんかどうでもいいけど、いい機会だからこの祭ハッキリ言っておくよ。ちょうど周りにはあんたとあたし以外誰もいないし。いいか、文音にはもう近づくな...... 触れるな、触るな、話しかけもするな」


「え?」


「前々から言おうとしてたんだよ、ってか、どういう経緯で文音があんたとデートしたかは知らないけどさ。まぁ文音って優しいからさ断れなかったんだろうね。散々忠告してるのに。そりゃ何考えてるか分かんないような奴と二人っきりにしてしまった私の甘さが悪いんだけど......」


 学園のアイドルである芽森さんとデートしたことに楓さんは面白く思ってないんだろう。彼女が見せる冷たい目と突き放すようなキツい言葉に俺は何も言い返すことは出来ず、ただ無言で楓さんの言うことに耳を傾ける。


「――あぁ、それと確か何日か前にあたしに告白してくれたことあったよね」


「えっ、あ、それは......」


 何も言えず委縮していると何かを思い出したのか、さらに追い打ちをかけるように楓さんが口にしたのは俺が教室で楓さんに告白をした時のことだ。

楓さんに話を振られ何か言い訳めいたことを言おうとするも、瞬時にあの時の記憶が脳裏に再生され恥ずかしくなり先の言葉が出ない。俺の初々しい一世一代の告白、それも本人の前から言われてしまうなんて。

こう思うのはなんだけど、楓さんはスタイルが良く今着ている体操着も凄く似合ってるし出るとこは出て引っ込む所は引っ込んでて、実はさっきから目のやり場に困ってしまっている......


「上手くごまかしたつもりなんだろうけどな、文音との付き合い長いから分かってんだよ。あたしのこと好きって言ったの、あれ嘘だろ。本当に好きだったんなら態度に出てるよ、慌てたり、顔が赤くなったりとかね。けどあんたの場合それが一切ない」


「そ、そんなことないよ。楓さんのことは好き、だって思ってるし......」


「好意的に見られているか、いないかどうかぐらいの判断はつくよ、余程の鈍い奴でもない限りはね。それに本当に好きならそんな風に......軽々と好きって言葉は口に出来ないっての。まぁ、今のはあたしの経験談だけどさ」


「あ、そ、そうだよね。ごめん」 


 楓さんをごまかそうと口から出まかせに好きって言ってしまったけれど、すぐさま見破られた。確信を突かれた俺は大人しく肯定するしかない。

どうしよ、バレてる...... バレちゃってるよ。何て鋭い観察眼なんだ、恐らく嘘を重ねた所で彼女を騙すことは出来ないんだろう。確かに突発性の難聴でもなければ人からの好意は気づくものだ。分かりづらい例もなきにしもあらず。


そういえば、さっきからここから動こうとはしないな。楓さんも体育館裏に用があるのか? っと楓さんを見ていると体操着のポケットからたばこケースを取り出した。

楓さんもたばこ吸うんだ、意外だけど一応これだけは言っておこう。


「あ、たばこは吸わない方が良いと思うよ。肺癌になるリスクが――」


 そう注意をしようとするも楓さんの態度を見てすぐさま余計な一言だったと気付く。

 楓さんは俺の注意を最後まで聞かずたばこを口に咥えライターを取り出し火をつけた、そして一息吸うと、それを二本の指で挟み再び口を開いた。


「あんたに言われる筋合いはない、彼氏でも父親でもないからね。ってかさっき言ったこと忘れてないよね、もう一度忠告しとくよ、文音のことは諦めな...... って言っても嘘付いてまで好意を隠してるぐらいなんだ、そう簡単に諦めないよな。まぁどうやって芽森に近づいたのか知らないけど、もしあんたが文音を脅してんならさ、あたしがあんたのこと許さないから。それにね、文音にはずっと心に決めてる男が――」


「悪い遅くなった、芹沢それで話って?」


 嫌悪感丸出しな冷たい声に俺は何も言えなくなっていたのち、話が割られた。

楓さんの話を聞くのに夢中になっていた俺は、背後から近付いて来る、もう一人の存在に気付かなかった。俺はその人に毒薬を飲まされ、る訳がなく、振り向いて見ても、黒ずくめ......ではなく一人の男子が立っていた。

俺はいつの間にか彼の名前を覚えてしまったらしく、三羽海音と言う文字が頭に浮かぶ。



「えっと、もしかして邪魔だったか」


「えっ? ちが――」


「別に邪魔でも何でもないよ、ちょっとね。それより来るの遅い」


 目前の彼は気まずそうに言うが、断固否定する。

男女が二人っきりでいたもんだから勘違いしてるんだろう。多少嬉しい気持ちはあるけど、そういう風に思われるなんて嫌気が差す。俺が憧れてるのは芽森さんだけだ。

楓さんも同じ気持ちだったようで俺が言葉を出す前に飄々とした声で否定した。


「わ、悪い、少し姉貴に捕まってしまって...... そういえば吸ってるんだったな、たばこは吸わない方が良いと思うぞ。健康にも」


「あんたにも言われる筋合いは――ってそんなことはどうだっていいんだよ。さっさと来い」


 楓さんに急かされる彼は何故か俺の方を見てきた。

 その切れ長の目にドキッとしながらも俺は瞬時に理解する、聞かれたくない話か......


「あ、僕もう行くから遠慮なく」


 俺は海音君に話かけると彼の返事を聞くまでもなく身体をUターンさせる。

 そこに居づらくなった俺は二人の元を即座に離れた――




 さて体育館裏は行けなくなったっし、どこで弁当を食べようか。

つっても動き回るのもめんどくさいしテントで食べてようかな。あそこは人がいるからボッチってことはまずバレないだろう。先輩達に悟られたらと思うと恥ずいけど......


 それにしてもまた感じた、海音君を見てるとドキドキしてしまう。

カッコいいからだろうか、何故か女性の楓さんといる時より胸が高鳴るような――これは多分イケメンの力だ。まるで自分が乙女になったようなあの錯覚は......

 気持ち悪いけどイケメンにときめいてしまうことは事実、けどこれは俺が背が高くて切れ長の瞳とカッコいい髪型、いわゆるモデル体型に憧れてるせいもあるかもしれない。そうに決まってる。

俺は〇モじゃない、俺は〇モじゃない...... よし。



 海音君といえば、そういえば楓さん彼氏いるんだっけ。

 さっきのあの雰囲気からしてあの二人は付き合ってるのかも知れない。何の話をしてるのか気になるけど、部外者の俺には考えたってしょうがないか。


 それに、言ってた内容からして楓さんは俺のことを変質者か何かだと思っているんだ。『もうあいつとは会うなよ』

と芽森さんが前に話してくれた時のことを思い返してみても納得がいく、これは相当嫌われてると。

忠告していたにも関わらずデートまでしてしまった俺という変質者に対しての忠告、それは友達を想ってのことだろう、得体の知れない男を親友に近づかせたくないと。


だから俺はその忠告を理不尽とは思わない。



少しは物語の動き(起伏)を出せたかな......


地の文の繋げ方は本当に難しいです。

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