それはまさに恋縄...模様
台詞だけで進行させたくない、もっと冗長で論理的な文が書きたいです...... 無理か(泣)
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「次の競技は学年別クラス対抗の大縄跳びです、参加する人は実行委員の指示に従いグラウンドへ移動してください。競技を終えた選手は少し寒い気温となっていますが水分補給はしっかりと取って下さいね。えー、競技はまだまだ残っている中、現在一位は蒼組となっております。蒼組はこのリードを守れるのでしょうか、はたまた――」
アナウンスの呼び掛けがかかり俺達はグラウンドに移動する。
大縄跳びに出るのは十五人だ。紅組からは俺、芽森さん、楓さん、緒方君に宮村さんと後は――うん、これ以上の名前が出てこない。何せ名前を覚えていないからだ。
今クラスで記憶しているのは担任を含め十人にも満たないかもしれない。しかし問題はない、学園生活の中で人の名前を覚えていない所で困るなんてことはない、何の関わりもないんだし名前を覚えた所で呼ぶ必要もないんだ。担任である栄田先生と憧れである芽森さんの名前を知っていれば十二分だろう。何なら芽森さんの名前だけ憶えていれば万事オーケーだ。
「皆、ちょっと集まってくれ――」
それぞれ指定の位置に並ぶ前に一組のクラス委員、それに男子のリーダー格である緒方君が声を上げた。
手の外側、指先を何回か下り招き寄せる仕草を見た皆は緒方君の方へ集まろうと歩いていく、その様子に俺は数秒どうしようか迷う。普通の日なら蚊帳の外に置かれてる、もしくは自分から距離を置くけど今は仕方がないか。体育祭という場の空気を読み俺も同じく緒方君の元へ駆け寄る。
「練習通りやればいいからな。気負いしなくていい思いっきり飛べ! タイミングを間違わなければ大丈夫だ。何回飛んでるかなんて余計なことは考えるなよ、集中が乱れるからな。加納と古本の二人は慌てなくていいからな、けど阿吽の呼吸は忘れるなよ、頼むな」
「ああ」
「う、うん」
さすがはクラスをまとめているだけ合って緒方君は皆のことを考えてる。
いくら仲違い状態であったりしても競技中までモメ事を持ち込まない所はさすがだ。
「さっそく、そこまで口が揃ってれば大丈夫そうだな」
緒方君がそう口にした途端、近くで『ふふ』っと少笑みがこぼれた。その拍子になぜか二人はまるでスベったかのように赤面したのが分かった。
俺は何が面白かったんだろうと、含笑が聞こえた方向へ目を向けると何と芽森さんだった。丸めた手を口に宛がってる、それに気づいたのは俺の他に何人かいたらしく芽森さんに注目すると、今度は芽森さんがさっきの二人と同じようにあせあせと俯いたが俺はその動作を見て気づく、芽森さんがなぜ含笑を漏らしたのか『阿吽』と『あ、うん』なるほど、そういえば一種のダジャレになってる。どうりで二人は『しまった』という表情になるわけだ。
しかし俺的には何も面白くはない。芽森さんはやっぱり笑い所のツボが変なのかな。
「あ、ご、ごめんね。私お腹のツボが弱いみたいで」
笑っていたのが自分一人だと尚更恥ずかしいもんな。焦りながら当の二人に謝る芽森さん。
そして二人の許しを得た芽森さんは次に心配事を口にした。
「その、それとあの、失敗したらごめんね、でも出来るだけ...... ううん、精一杯頑張るから」
普段男子と女子は体育の時間が異なる為に女子、主に芽森さんの運動能力がどれだけあるのか分からないでいたけど今日の体育祭で分かった。競技中の彼女を見ている限りどうやら運動は苦手そうだ。転んだり、ドジッたりすることは今の所ないけど苦労しているのが見て取れている。そこに少し共感性を覚えてしまう俺ってどれだけ浅はかなんだろ、なんてことを思っていたのは俺だけじゃないらしく、緒方君は芽森さんに対して、優しい言葉をかけた。
「芽森は失敗したっていいんだよ。何なら一回で」
「血迷いごと抜かしてんじゃねぇよっ、失敗したらダメに決まってるだろうが! てめぇ緒方、分かってて発言してんのか? 期末がかかってんだよ」
「ああ持ち分かってっけど芽森は良いんだよ可愛いからな、ただいてくれるだけで、それだけでもう百人力だ。なぜなら可愛いからな。仏さま、女神様、芽森様ってな」
緒方君の発言が気に入らなかったのか、横で黙って立っていた宮村さんが食い掛かった。たぶん今のはいらない発言だったと思う。宮村さんの言い分はもっともだ、期末が掛かってるんだ失敗は出来ない、けど緒方君には同意だ女神様、いや芽森様っていうことは俺も密かに思っていることだ。その芽森さんはどう返そうか困ってる表情を見せているも可愛いと言われ満更でもない様。
「はぁ? 早い話しアタシは可愛くないって言いたいのかよ。けっ、どうせ芽森と違ってブスだよ。結局てめぇみたいなクソ男は――」
宮村さんがヒック、と喉を鳴らし反発する様子を見て今初めて気付いたことがある。
良く観察すれば今日は彼女の化粧が薄い、他の女子もそうだ。汗をかくことを見越してのことだろうな。
化粧が薄めなせいか芽森さんの方が可愛いと認めざるを得ないようだ。
それもあってか他の女子も宮村さんに同意しているみたいで、緒方君他、周りの男子を疎ましい目で睨みつけてる。可愛いは罪って言われることが分かる気がする。
俺にはチークやらつけまつ毛ぐらいしか分からないけど、改めて芽森さんを見るといつも通り飾りっ気ない肌色の素肌だ...... 化粧をしていないのか、していたとしても可愛いことには変わりはないけど。
「誰も宮村がブスなんて言ってないだろ。むしろ可愛い、けどな......」
「あ? えっ、あっと...... と、とと突然なに言うんだよ。ち、血迷ったか」
「あー、よ、よし。そろそろいこうぜ」
緒方君は慌てた口調でそういうと足早と先を歩いていく、それについていく皆と反発していた宮村さんは途端黙り一言も言わず続く、その様子を見ていた俺も同様についていく中、突如ピキーンと俺の中で何かが駆け抜けた。
それはニュー〇イプの直観か、小さな探偵君が犯人の手がかりを見つけたかの如く。否、恋の糸とも言うべき物を頭の中にイメージ出来てしまった。
これは恋模様いや恋縄模様の予感がする、縄跳びだけに......
――グラウンドにつくと飛ばない二人は縄を持つため左右に分かれる、それ以外の人は指定の位置に並ぶ。
まず一番前に何何さん、誰々さんと続き、宮村さんの後ろに緒方君、俺、芽森さん楓さんと、ほにゃららさんが何人か続く。
大縄跳びは両端の紐をどちらか左右に分かれ二人で回し、競技者が全員大円の縄の中に入ってからカウントを取ることになる。通常の縄跳びとはルールが少し異なり縄に入るまで足を引っかけると回数が0のまま終わるということもあるため慎重に縄の中に入らないといけない。加え多人数で飛ぶという難しい競技だ。
一応失敗したらごめんと謝って...... まぁ俺が言った所で――
「あ、あのよ。先に言っとく。芽森じゃねぇけど足を引っかけたらごめんな」
そう思っていると俺の前から宮村さんなる声が聞こえた。宮村さんの声は少しハスキーで特徴がある。
たぶん緒方君に言ってるんだろう、思っていた通り緒方君が返事を返した。
「なんだ、威勢が良かった割には弱気だな」
「うっせぇよ、こういうの苦手なんだよ、タイミングが取りづらいしよ。悪りぃ...... かよ」
「いや、練習してた時も思ってたけど宮村にもそういう可愛いとこがあるんだなって......」
「は?」
「ち、違げっ! 今のは言葉の綾で、誤解すんなよ。だ、だから他意はないから」
「ご、誤解って何のだよ。は、はん。まさかそんなチンケな台詞で私がほ、惚れると思ってんのか? 心配すんなよ、ありえねぇし」
俺はまた始まった二人のやり取りを聞き流し思想する。
現在紅組は三位、蒼組、碧組にポイントで差をつけられてる。さらに俺達一組は最下位。
この先もまだ競技が残っているとはいえ序盤に差をつけられるとやる気が削がれる可能性もある。得点板を見るたび精神面でも負けてしまう人だって、それだけに俺はもう半分諦めてる。
高得点が続けばやる気や意欲が持続しやすく何より、確かこういうことをモチベーションと言うんだろうか、気持ちの持ちようが断然違ってくる。半面、点数が低ければそれだけで俺みたいにすぐ諦めの判断が早い人が出てくる。反対に点差が開いていればいるほど燃えるという逆境に強い人もいるにはいるけど、どうなんだろ?
今は午前の部だからまだ慌てるような時間じゃない、ただ少し余裕が欲しい。気持ちの余裕が出来る為にもここら辺りで繋ぎ止めておきたい。確実に一ポイントずつ決めて...... 一位か二位を狙っていかないと。
「じゃあ、そろそろいくよ。せーぇっのっ!!」
準備が整うのを待った左右の二人は息を合わすと、グラウンドに威勢の良い声が響き渡った。
長くなりそうなので一旦切りました。
ダジャレとシャレの違いが良く分からない......




