いちゃいちゃフィスティバル
文章を書くのは大変だ......
しかし、ラブコメを書くのは恥ずか楽しいですね。
初っ端から自分の番であったことを忘れていた俺は、競技に入る準備の為に移動する。体育祭実行委員に指定された場所に案内されると、俺と共に出る競技者がもう位置についていた。実行委員は忙しいようで、俺を案内するとせっせと次の行動に移ったようなので俺も位置に着く。
「浜慈、頑張ろうな。ど、どうした、何? 紐が結べないだと、しょうがないな浜慈は。ほら貸してみろ。こ、こら、そんなにジロジロ見るな。そ、そんなに見つめられると、恥ずかしいだろ。ま、まぁ、お前になら...... ってなことを期待していたのに、なぁにが悲しくてお前なんかと一緒に走らにゃなんねぇんだぁ!」
途端、競技者もとい浜慈は俺が来たことに気づいたのか横に並ぶと威勢の良い声で軽く罵倒してきた。その拍子に整えられてるのか、失敗したのか分からない不揃いなアシンメトリ―の髪が揺れ動いた。
そっくりそのまま返すよ。それを言いたいのはこっちなんだけど。
俺だって、俺も芽森さんと走りたかったよ。厚かましいとは思うけど。それにしてもこの浜慈っていう人テンション高すぎだ、明らかにクラスの中で一番暑苦しい...... 結局栄田先生に断られたからか、意味不明な一人芝居打ってるし。そもそも栄田先生はそんなこと絶対言わないと思うけど、一応謝っておこう。
「な、なんかごめん」
「あ゛ぁ? ごめんで済むぐらいならな、いやこれは別にいいか。とにかく今すぐゴメちゃんと変われや」
「えぇっ、そ、そんなこと僕に言われても......」
理不尽な言葉が返ってきたせいか、思わずマ〇オさんばりに驚いてしまう。
それより顔、顔近いって...... もう少し離れて欲しい。
浜慈は怒りが収まらないのか顔をぐっと近づけてくる。反対に俺は顔を出来るだけ後ろに引く。けどこの流れはどこかで見たことあるような...... マズい、これってあの感じに似てるんだ!
「大体な、お前が芽森とデートしたからこんなことになったんだろうがよ。そうでなきゃ今頃はゴメちゃんと......」
そう思想してる間にもジリジリと間を詰め、あの上島〇兵を彷彿とさせるような切れ方で迫ってくる浜慈。
ヤバい、このままじゃキス芸になりかねない...... と思っていた所で浜慈は『はっ』っと鼻を鳴らし顔を背けた。助かった...... いや単に俺の想い込みだろうけど、でもそういうことは先生か誰かに言ってくれないと。もしくは青い狸にでも。
『しょうがないなぁ、もう浜慈君は』
といった感じで助けてくれると思うよ、冗談だけど。むしろ頼めるなら俺が。
まぁあの雰囲気じゃ口を出しにくかったのもあるから、そう考えるとお気の毒かもしれない。そういう俺もか。そもそも浜慈は栄田先生に見惚れてたのが原因なんだけども。
俺は準備の間、暇なので気分転換に他のクラスはどうなってるのかなと周囲を見渡してみる。
大勢の生徒が集まっているせいなのか、普段広いとは思えない運動場が狭く感じる。
体育の時間はクラスだけで、しかも男だけで行うから余計にそう思う。
足元を見やる、天候が悪いとはいえ、昨日雨が降らなかったおかげで地面は荒れていない。これなら転んでも泥がつくことはないから安心だ。
そして俺達と同様二人三脚に出る生徒、しかしあっちを見てもこっちを見ても男女の組み合わせで出る人が多いようだ。浜慈が荒れるのも分かるような――
「三羽、頑張ろうな。む、どうした? 紐がほどけてるではないか、全くほら貸してみろ。いい私がやる。それと、そんなにジロジロ見られると、その。困るのだが、ま、まぁお前になら......」
デジャブというんだろうか、さっき浜慈が懸命に想像していたようなセリフが聞こえるような。
隣を見ると、ひと際目立つような男女が俺たちの横に並び立っていた。
このクールに見える女子は学食のとき助けてくれた人だ。切れ長の瞳に、流れるような美しい黒髪、目を奪われてしまいそうな麗しさ。こういう人を大和撫子と言うに相応しいと思える。
もう一人の男子は海音、君っだったか。
茶髪で無造作に整えられた髪がカッコよく相変わらずのイケメンだ。紺色の体操着は背丈に合わせているのかバッチリと着こなしており、透き通るような澄んだ瞳を見ていると男なのに何故か胸が、ドキドキで〇れそう1000%LOVE、違うっ! これは気のせいだきっと。そうであって欲しい......
にしても二人が並んでるだけで絵になってる。まさに美男美女、といった風に周囲を見渡せば俺同様この二人に目を奪われてるようだ。
「ぐぅぅっ、な、何なんだあのリア充共は、人目をはばからずイチャイチャイチャとしをってからに...... しかも俺が膨らましてたシチュエーションをああも易々とっ、いけ好かねぇ!」
悲しいことに二人のやり取りは浜慈がさっき想像していたような甘いもので、さしもの浜慈も当然の如く それに反応している。
「それぐらい俺が治すのに、悪いな」
「どっちがやっても同じだろ、なに、いち早く私が気づいただけのことだ。よしっ、これで大丈夫だろう。それよりヘマしないでくれよ」
「ああ、頑張ろうな。そうだ、小鳥。念の為もう一度動きを確認しとくか」
「念には念を、ということか。よし」
紐を結び終えたのか、今度は動作の確認に入ろうとしてる。
目立っているのにも関わらず、周りを気にせずに落ち着いて会話してる。慣れてるんだろうな。っと二人を観察していると急にガシッと頭を掴まれた。驚く間もなく、そのままググッと捻られると身体の向きも自然と変えざるを得ない。少しの微痛を感じながらも、やがて顔が合わさる。
「おい、黒すけ。あいつらには絶対に負けるなよ...... 絶対にだ、もし足を引っ張ったら」
「え、あっと。出来るだけ頑張るよ......」
一瞬ヒヤリとしたも俺の頭を掴んできたのは横にいた浜慈だったようで、何やら燃えているようだ。
内心、二人のやり取りに煮えくり返ってるんだろうな。それが表情に出てしまってるし。
気持ちは分かる、俺も男だし。あんな美少女とイチャイチャ出来たら楽しいに違いない、無理だけど。
それと黒すけじゃないっていうね、俺がチビだからなのか真っ黒〇すけを連想したんだろうな、似ても似つかないっての。
《次の競技は、と言っても最初なんだよね、二人三脚です。選手の方々はスタート位置についていて下さい》
「あっ、そ、そろそろ紐結ばないと」
アナウンスの声が聞こえ、まだ紐を結んでいなかった俺は焦りながら結ぼうとするも中々結べない。
浜慈はそんな俺をじれったく思ったのか『何やってんだよ、ったく。手どけろや』と言い放った。その言葉に俺は瞬時に手を引くと、浜慈はすぐにしゃがみ込む。そしてあれよあれよと言う間に結んでしまった。凄く早い......
そう感心していると浜慈は紐を結ぶ為に伏せていた顔を上げた。同時に腰を上げ立ち上がる。その顔はどこかガックリと落ち込んでるかのようだ。
「おいおい、もう一度言っとくけどよ、マジ頼むぜぇ...... つうかよ、お前も〇玉付いてんならムカつくだろ?あのイチャつきっぷりを見てたんならよ。曲がりなりにも男だろ。それにもしお前があん時の告白が成功して芹沢と付き合えてたら出来てたであろうシチュエーションでもあるんだぜ」
「いや、曲がりも何も男以外の何物でもないよっ」
「だろぅ? 今が男を見せる時だぜ」
いや、たぶん今は違うと思うけど。ただの二人三脚だし、でもそういや、そんなこともあったっけ。
もう遠い昔の記憶に思える、俺が芽森さんを助けたいが為にした偽告白。
残念ながら楓さんには彼氏がいたみたいだったけど...... というか、そもそも残念で有る筈がない。俺が憧れてるのは芽森さんであって、楓さんみたいな人は苦手だ、金髪だし。そりゃ綺麗だから少し残念と思う気持ちもあるけど......
それに多分、俺が楓さんと付き合えていたとしても。あんな風にイチャつくことは100%ないと言い切れる――楓さんもそんな性格じゃないだろうし、楓さんにせよ、って何で俺はこんなに楓さんのこと考えてるんだろう...... やめやめ。
スタート位置につきそんな思考をしていると次はいよいよ俺達の番になる、緊張が走る。
俺達が立ってるレーンの隣にはあの目立つ男女が並んでる。浜慈に感化された訳じゃないけど、負けられない。先生に条件を呑んでもらう為にも点数ポイントはなるべく早めに取っておかなきゃいけないんだ。
《では位置についてよーい、ドン》
『パンッ』と豪快なスタートピストルが鳴らされた。
つんざくような音に両手で耳を塞いでしまいたい気持ちになるも、一瞬で正気に戻る。
俺達は景気の良いスタートダッシュを切り一番に踊り出る、だがすぐに横から追いついてくる組がいた。
チラッと横目で見ると驚くほどの美男美女がそこにいた。あの二人だ。
二人は息を合わせるように『イッチ二、イッチ二』と歩幅を合わせてる。他の組も同様だろ。
だが俺達の掛け声だけは違う......
「ゴメちゃん、ゴメちゃん、ゴメゴメちゃん」
まるで、ディ〇ダ、ディ〇ダ〇、ダ〇、ダ〇、ダ〇。と言わんばかりの掛け声だ。
浜慈もポ〇モン世代なんだろうな、あのリズムは心に残るもんな。ってか栄田先生好き好きだろ、しかしながら慣れない掛け声に俺は苦戦し、早々に足を止めてしまう。特にコーナーはリズムが取りづらい。
そうしてる間にも後続者は徐々に追い上げてくる。
途端、『あっ』という声が聞こえた。
「大丈夫か、小鳥」
「す、すまん。足がもつれて、ちょっ! どこを触ってるんだっ」
「え、いや。普通に腰だけど?」
「す、少し胸が当たってるんだが...... いや、何でもない」
見るとあの二人も足を止めてしまったようで、海音君は脇の下から手を回し、ちょうど胸を触れる位置 に手が当たってるような、ないような...... これはもしやっ! と思い浜慈を見ると、言いようのない感情が顔に出ていた。何ていうかご愁傷さまって言えばいいのかな。
「チャンスだ、三羽っ」
「ああっ」
俺がもたもたしていたからか、勝機とみた組は一気に前に躍り出ようと勝負を掛けだした。体制を立て直した二人もそれに続く。
トラック半周とはいえ、残りは早くも100メートルを切っている。ここが勝負所だろう。
「があ゛ぁ、足手まといになるなって言っただろうが。くそっ、こうなったらアレをやるしかねぇか」
「あ、アレって?」
浜慈が正気に戻るも止まってる間に一人、二人、と追い越されていく。
文字通り足手まといになった俺は、もう浜慈のいうアレに掛けるしかない。
「俺がゴメちゃんと出る為に用意していた秘策、ワンレッグジャンプステップ! いいか、しっかりついて来いよっ」
「あっ」
いうな否や、片足を上げる浜慈につられ俺も足首が結ばれていない方の足を上げる。
「いくぜ、せーのっ――」
再びあの掛け声、俺も同じく合わせるしかない。しかしなんて恥ずかしい掛け声なんだ......
とは思うも、ワンレッグジャンプステップ、簡単に言えば片足飛びの効果は思いの他凄くグングンと距離を縮めていく。やがて現在トップを独走してるあの二人の背中が見え、イケるっ! と思ったのもつかの間、足がもつれた。
片足飛びは早いというメリットもあると同時にリズムが取りにくく、一度着地を失敗するとかなりのタイムロスとなるデメリットがある。
壮大に転んだ俺と浜慈は当然ながら遅れを取ってしまい、最下位でゴールテープを切った――
「本来ならコケてから効力を発揮すんだけどよ、万が一どちらかが倒れた場合に立ち上がる時に事故を装ってお触りとかな」
転ぶ前提の秘策かよ! って突っ込みは置いておく。
「えっとごめん、僕のせいで、結局足手まといになって」
「別にお前のせいじゃねぇって、結構いいとこまでいってたし。惜しかったよな。心配すんな、これだけ頑張ったんだ、悪いように言われねぇよ」
***
「てめっ、何やってんだ! 分かってんのか、期末がかかってるんだぞ。死に物狂いで走れや」
「おいおい、初っ端から最下位かよ。士気上がんねぇんじゃねぇの......」
「あんなとこで飛ぶなんて、具の骨頂だよね」
「マジないわ、浜慈ないわ」
「貴重なポイントが10PTっておま......」
クラスのテントに戻ると、否応無しの罵詈雑言を投げつけられる浜慈。
さっきの余裕は何だったのか、そして一応俺もいるんだけど...... まぁどうでもいいか。
「お疲れ黒沼君」
俺なんか、と思っていた所で天使のような通る声が耳に入ってきた。この声は、と思い振り向くと芽森さんだった。
着ている体操着は皆と同じなのに、芽森さんが着るとこんなにも可愛いなんて、美少女恐るべし...... 彼女は目立つのが嫌だったのかボソッと呟くと足早と皆の元へ戻っていく。何てことだろう、あの芽森さんから励ましの声を頂けた。声は小さめだけど確かに俺に言ってくれたんだ。もう体育祭終わっていいや...... 冗談だけど。
暇になったので何となく浜慈を見るとまだ貶されていた。
暑苦しい奴と思っていたけど以外に良い奴なのかもしれない。さっきのことで浜慈に対しての印象が俺の中で少し変わったような気がした。あくまでだけなのかもしれないけど。
「ゴメちゃん、俺の華麗なジャンプ見てくれました? 負けたけど、だから慰めてくれると——」
やっぱり気のせいだったみたいだ......
面白みのない文章(話)ですいません......
とりあえず、上級生は出さない方向で行きたいと思います(困)
出すと話が崩れそうなので、体育祭描写、進行の順序が分からない......




