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体育祭準備は気まずい

体育祭の記憶がない、これでいいのか不安。

それは簡潔に終わった――なんて文は書きたくなかったのに......

 

 今日から十日後に行われる体育祭に向けての準備期間が設けられる。

 


この二条高校では体育祭が五月に行われ、文化祭は夏が終わる十月頃にやるらしい。

学校によっては文化祭と体育祭の時期は重なることも多いとは聞くけど、多分クラスの団結を図ってるんだろう。早い時期にクラスがまとまって欲しいという学校による方針があるのかもしれない


ゴメちゃんこと栄田仔五女こごめ先生は昨日、朝のホームルームで体育祭準備について皆で話あっておけよと言っていた。先生曰く、準備は一日早めるだけでも効率が違うとのこと。しかし昨日はクラスで準備についての話合いをすることはなかった。


「おい、どうしたんだお前ら。何か案はないのか...... いきさつは聞いてる、はっきり言って空気が悪い。けどなぁ、とりあえず話合え、体育祭準備はもう始まってるんだ。クラスでやる種目を決めないといけないのは分かってるだろ」


 基本的に体育祭準備は授業の合間に行われる。それはどの学校でも変わらない。中学の時はその為に授業がつぶれることもあり、俺の中では嬉しい反面、苦痛の時間でもあった。

して今この時も授業は体育祭準備による話し合いに充てられている。けど...... 

クラスの雰囲気は最悪だ――



一時間目の全校集会が終わり、教室に戻ると担任による体育祭の概要やルール説明をされる。それは簡潔に終わった。次いで、競技や種目を決める為クラスの皆で意見を言い合う時間が設けられるわけだけど空気が重い...... 


特に教卓の前に立つ男子と女子の二人はまるで見えないバリアでも張っているかのように、お互い距離を離してる。

その二人の様子に栄田先生は呆れてるのか額に指を当てる仕草を見せる。さらにはため息までつきながら。

話し合いはクラス委員が最初に切りださないと始まらない。だけどそのクラス委員を任されているのはこの二人だ。


「あ、じゃ、じゃあ。何か意見がある人......」


「誰か、いないか......」


 先生の注意を聞いた二人が渋々声を上げるが誰も意見を言おうとしない。もちろん俺も。

俺は何だっていい、特にやりたいこともない。基本は人任せだ。悪いと思うけど人には向き不向きがあるんだ。

こういうイベント事は仕切ってくれる人がいれば大いに捗るだろうな。俺には想像がつかないけど仕切り屋がいないクラスはどうしてるんだろ、このクラスには幸いにも引率してくれる人は何人かいるけど、なぜかそういうイベントに限って静かなのが今の現状だ。そのせいかあくびをしてしまう。


このクラスにカースト制度のようなものがあるとしたなら二人はそれぞれ男子と女子のリーダー的な立ち位置になる。序列でいうなら間違いなく上の方だ、芽森さんは言わずもがな。

いつもはバカ騒ぎしてる二人なだけあって、その二人が静かだと他の連中も鳴りを潜めてる。


「ゴメちゃんの言う通りだろ。誰か意見ねえの? おいおい...... これじゃまるでお通夜でも見ているかのようだわ」


 辛気が悪い空気にいい加減痺れを切らしたのか、違う、単に栄田先生が困っているからだろう。浜慈が皆に問いかける。一度はうな垂れるも何も言わない連中に向かってわざとらしい声を上げる。浜慈の席は後ろ側で俺とは離れていたが、しっかりと俺の耳にも届く。おまけに長めの左髪を払いのける仕草もセットで思い浮かんでしまい、俺の中ではあの芸人を連想させられる。


「浜地、そういうお前は何か案があるんだろうな」


「いっ、えっと、俺は何でも良いっスけど...... 二人三脚とか、それも出来ればゴメちゃんと――」


「二人三脚か、他には?」


 今さりげなく話を切ったな。二人三脚か...... 俺も芽森さんと――無理か。

 浜慈の言葉をかき消すように黒板には二人三脚と書かれる。も今のところそれ一つだけだ。


「一応言っておくがな、大体の競技内容は生徒会で決まってはいる。ただな私的にはお前たちに決めてもらいたいと思ってるんだが『皆で青春の汗を流そうじゃないか』なんて臭いことは言わないよ、けどせっかくの体育祭なんだ、笑顔で迎えたいじゃないか」


 まだ何も言おうとしない様子を見て優しいトーンで問いかける先生。その言葉が響いたのか、遠慮していた人達が徐々に手を上げ、意見を言い始め出した。そして黒板には二個三個と種目別に競技の名が書き足されていく。


良い先生なんだろうな、皆のことを気にかけてくれてる。

でも俺にとって体育祭は消化試合だ。単位は関係ないけど行かなければ親を心配させてしまう。中学の時と同じく友達がいないことをバレてしまわないように気をつけないと。


皆はおもむろに意見は言うも口論は起きない、昨日のことがまだ尾を引いているのか女子と男子の不仲が悪いのが見て取れる。

この雰囲気を漂わせているのは俺のせいなのかもしれない...... だとしたら何だか悪いと感じる。親しい人がいない俺には関係ないけど、この雰囲気で体育祭を迎えたいとは思わない。

他の人も――芽森さん......だってそう思ってるはずだ。

あくまで俺が思うことだけど、傍観者の立場からしてみれば暗い雰囲気よりも明るい話声が聞こえる方が良いに決まってる。



そうは思うも、選別や順番が決まらず結局この日の話合いは終わった――若干の不安を残して。



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