犯行現場をパシャっと激写!
* * *
そしてーー茂みから出てきた軟弱男子が1人。
俺は写真に見立てたポーズを指で作りつつ立花さんの真後ろで"声を張り上げた。察すれば当然……
じりじりと詰め寄りながら、立花さんを睨みつけていた敵意剥き出しの目線が一斉にこちらへと向けられる。
瞬間的に足を一歩引けば怯えそうになるが相手が女子なのが幸いしてかそこはグッと耐えられた。そうして飛び出したは良いのだけれどもーー
完全にノープランだ……
「は? 誰あんた」
「ポーズダッサ!」
「ってか見るからにひ弱そう」
「あ~ 確か同じクラスの~ くろなんだっけ?」
心にもない言葉を浴びせられればグサグサ刺さってくるが。今は、俺の印象なんてどうでもいい……
1人で出ていこうとするなよと、言われていたのに。さてどうしようと頭を悩ましていれば立花さんに声を掛けられた。
「ーー"やっぱり付けて来てたね黒真っち」
「え、バレてたの?」
「もち、あれで隠れてると思える方がおかしいよ」
なんてこった、パンナコッタ。
忍者の如く追跡出来てたわけじゃない。
気付いてない振りで上手く誘ってみせていたのは立花さんも同じで、盗み聞きーー何処かしこに隠れてると知っていながら会話劇を繰り広げていたのか。顔を出した早々数合わせの足しになるかは分からないけど……
「あ、あのー、ところでなんでこんなことをやるのかって聞いてもいいですか……」
俺は弱腰姿勢で問う。
場の空気も然ることながら簡単に答えてくれるわけないよなと思いきや、その成り代りからナメられてるせいか口が軽いのか。一律にさらっと告げてきたのはよくある嫉妬心から来るようなしがらみで。
「あたしらは【海音君】のファンクラブ会員だよ。そのもっとーは、手出しは無用かつ出し抜き禁止で眺め崇めること」
「ところが、最近は浮わついた話が出てきてるって噂じゃん。お似合いとかふざけんなって話」
「要するにあたしらみたいに、それを良い目で見てない連中もいててさ」
「回り回ってその芽森って子とくっつけようと企んでる話を聞いたんだよ。八神ちゃんからね」
「じゃあネットを使ったり芽森さんに嫌がらせをしたのはーー」
間を割った俺の言葉に答えたのは言わずもがな。
「アイドルを独占しようとするなんて許されないよね~ ってことで」
犯人はクラスの中にいたという証明……
チワワみたいな雰囲気があろうが、腹に黒いもんを抱えてるなら天然なんて笑わせるなって話だ……
「気持ちは分からなくないけど、それは傲慢過ぎじゃないかな」
立花さんも彼女達の理不尽な物言いに口を付くが、横暴な姿勢を崩さない。
「ふん、海音君はね。皆のものなのよ。その元凶とも言えるのがあんた。可愛げのないキューピッドちゃんってわけ」
「私の失恋といい、緑ちゃんの介入で泣きを見てる子も何人かいるんだよね」
「よりによって海音きゅんを狙ったのがいけないんだよ」
ネットやクラスのラインを通じてターゲットの移り代わり。点と点が繋がれば、いじめの発端は学園の華を巡る騒動だったと……
アイドルの恋愛事情諸々。
先ほど立花さんは相手の好意を確認した上で気持ちを結び付けてると言及していたばかり。それがキューピッドと名付けられてる所以なんだろうけど。この人達の言うように遠目で眺めることしか出来ないでいたり、誰しもが関係が結び付くとは限らないんだよな…… そう必ずしも恋が実るとは限らない。
最初の初恋は<愛美>
今憧れてるのは<芽森さん>はたまた。
俺にとっての<ヒロイン>は…………
「言い分はともかく、ペラペラと喋っちゃっていいのかな」
「ーー別に、"口封じすればいいだけだから……」
共感や失念を抱いていた最中。
嫌に、物騒な声が聞こえたことで思想が戻された。
「ちょっと待ってよ!?」
俺は咄嗟に注意をこちらに引き付けるべく声を荒ぶらせる。
「こ、こういうのは多勢に無勢ってやつだろ、だからせめて一対一とか……」
「あー、一理あるね」
必死の抵抗もあり、意見が通ったようで一先ず安心するが。
「だったら、"あんたが向かってくればいいんじゃん、その為にノコノコ出てきたんだろ。ちっちゃな正義の味方君」
「え……」
「ここまで付いて来るぐらい好きなんでしょう」
「でも暴力なんて」
「ほらほら、四の五の言わず掛かってきな。愛しの彼女がどうなるか分からないよ」
返す刀で返されるは当然。
少し変な勘違いをされてるみたいだけど、横を見るとさすがの立花さんもどこか不安めいて表情に余裕がなくなってる。彼女は守るべき対象《女の子》だ。だったら、ここは男を見せるべきだろう。
ただし暴力は振るわない。
柔よく剛を制す。型の基本だ。
叩きのめすんじゃない、押さえ込むだけ。
相手は女子1人、行ける、イメージしろっ
"タイマン張らせてもらうぜ"と。
俺は気を高ぶらせながら、小さく拳を握り締めながら、足を踏み出しいけば…… 立花さんの前へ立つ。
そして目前で対峙してるリーダー各の女子生徒に向かっていったがのちーーあろうことか、ドン! と。
"尻もち"を付かされた。
「ぷっ…… ダッサ」
「何しに出てきたんだか」
「まるでコントじゃん」
「はは、そんなんじゃモテないよー、くろっち君」
( …… ダサいなんてもんじゃない)
ただ、子供を払い退けるように手で押し返されただけ。"覚悟"を決めたところで結局は弱いまま。身長も男子の平均以下で女子にも勝てない非力さ軟弱さだってんだから。そりゃそうだよな。文字通りあるがまま必然と任されるまま。
最初から決まっていたように持たざる者の在るべき選択をしただけ。やっぱり俺は【 】になれない…………
対する自信の消失、得てしての失望を再確認させられそうになる中、一筋の閃光が瞬き。
<パシャっ>と、シャッター音が切られた。
「動かぬ証拠見付けたりー、ってな」
決意はせど、すぐに動こうも出来ない
強さ、如何にして表現をどう見せられるか。
最弱ーーゆえに。
そこもまた書き難しいところ、なんですよね……
次話
【その動機、嫉妬の嵐を断絶】




