危なっかしい恋のキューピッド(2)
「それでね……」
「うんうん……」
「だから……」
普段と変わらず三人仲良く談笑してる様子だが。
なして、標的にされてしまっている芽森さんじゃなくて立花さんを気に掛けなければ行けない理由。
懸ける名も無ければ断定は出来ないけれども。少なくてもメールかラインが流れてきた時点で主犯者の1人はこのクラスにいると考えていいはずだとして。
「えー、なにって~?」
「もー、話聞いてなかったの」
「あ、ごめーん、ちょっとだけお花を摘んでくるね~」
俺が、目星を付けてるのは【彼女】
芽森さんや宮村さんのように突出してはないものの。その"天然っぽい言葉使いからチワワみたいなやわらかな印象を受ける、ゆるふわっな女子、八神さんだ。
男子の場合だと連れションは珍しくないけど、女子がわざわざ声に出してまで言っているのが引っ掛かりを覚えてしまう。まぁ友達間では普通のことなのかもしれないが。
しかしながらその引っ掛かり部分は的を得ていたらしく。
「あー、そだそだ、相談者を待たせてるんだった」
立花さんは思い出したように会話を切り上げた様子なら、えっさほいさと急ぎ足で教室を出て行ていった。まるで八神さんの後を追うかのようにして……
それを見ていた楓さんは足を一歩前に、持ち前の勘の鋭さで付いていくような素振りを見せたが。しかし芽森さんに捕まってしまう。
その間に俺はシャドウウォーク。
ひっそり、人知れず教室から抜け出し行く。忍者になぞらえれば抜き足差し足と壁伝いでの移動。目的はもちろんのこと今はストーカー行為でもなんでも御座れよと……
ーー立花さんが軽い足取りで向かうは昇降口。
外に用事があるみたいだ。そして上履きから靴へ履き替えて次に向かう先はグラウンド上ではなく。普段人があまりよらなそうな裏庭。
楓さんに誘われて来た場所でもあるがーーどうやらそれはフェイク。立花さんは数歩ごとに後ろの確認を取ったりと細身の注意を払いながら裏庭でなく、田舎ならではの地形に面した山々。その方向に向かって歩いていってる。
フィールドワークやかくれんぼはどうなのか。
ただ何も用もなければこんな場所に来ようなんて思わない、はず。だろうから。果たして……
(それにしてもこの間とは立ち位置が逆になってるな)
なんて思いもありながらもこっちもこっちで見付からないよう慎重に足を運ばせる………… わりかしと段ボールは用意しておくべきだったのかも。
* * *
影の薄さはこういう時に役立つことがあるゆえ。どうにか無事、見つかることなくミッションクリア。
しかし安心してはいられない。聞く耳を立てて茂みに隠れていれば。目的に到着してからに、双方ともピタリと歩みを止める。
「ほい。八神さん、ご希望通り人目に付かない場所に来させてもらったよ」
「うん、ありがとうね~ それで~ 実は~ 依頼のことなんだけど~」
恋愛相談という名の手助けだとして。
八神さんは振り向いて正面に向き直る
呼びだした本人は朗らかに立花さんにお礼を告げてみせたものの間延びした声色での会話は続かず…… 代わりに後ろ方から違う人が現れた。それも。
「ーーご苦労様」
1人、2人、3人、占めて6人ほど……
全員クラスが違えば学年も違う女子の軍団。
彼女達はぞろぞろと待ち構えていたように顔を出し始める。もろ依頼事を通してのお呼び出しか。つまりは八神さんも共犯者、内の1人だったということの表し、これが、違和感の正体ーー
芽森さんに対する物言いや向けいる視線。
体育祭の時や海音君の話題が出る度に感じていた悪寒。色々と照らし合わせてみた時。思い浮かぶ人物は彼女しかいなかったというわけだ。
愛美並びに楓さんに滝川さん。
宮村さんにサヤさんにリッツさん。
芽森さんや当然ーー俺の知りうる限り天然と思われるような女子は殆ど幻想で。現実的に考えるとツチノコ並みなのかもしれないが。
それよりも何よりも、ここに集まってる人達は八神さんと同じ動機や目的を持っているということ。
「んー、これはどういうアレなのかな」
おそらく、状況を飲み込めてる様子の立花さんは堂々とした態度で質問を投げ掛ける。
「見て分からない? まんまと誘き出されたってわけ」
「あー、心当たりは有るにしたって。恨みを買うようなことはしてないはずなんだけどね」
「その白々しい態度も、前々から気に入らなかったんだよ。それにあんたのおかげでこっちは迷惑してんだ……」
天然めいてはいても打算的。
ちんまりとして愛嬌もあって物怖じしない性格、相談を請け負う形で先輩達に可愛がられる反面。その掴めない言動が知らず知らずの内に反感を買ってしまうこともあるのだと。まさに信也君が危惧していたような危うい言動が。
その喧嘩を買うか買わないかは関係なし。
目前の女子生徒は一方的に冷たく言い放つと、横からも援護射撃が入り……
「ほんとに、困るんだよね」
内の1人が立花さんに大してのやっかみを口にした。
「こっちはさ、積極的にがっついたり、話しかけたりと毎日毎日絡みに行って色々と頑張ってたのに、それなのに緑ちゃんが横入りしたせいで全部水の泡になっちゃった…… もう少しで落とせそうだったのに」
意中の相手に対しての色恋。
押せや押せでガンガン行っていた中、立花さんのせいで事切れたという言い分をするが。
「いやぁ"少しも何もーー"最初から無かったんじゃないかな。その男子の反応的にも。嫌よ嫌よも好きって言うけど、あれはどちらか一方に好意があるから成り立つんだよね。だから<○○ちゃん先輩>がしたことは逆効果に過ぎないってわけだよ」
しれっと切れ味鋭くスパッと反論。
「1から100に近づけるには骨が折れるだろうけどさ、0から100に近づけるのは相当難しいんだよ。見聞きした情報による分析のもと、私がやってるのは30~50と上の数字、若しくはそれ以上の数値から99に近付けて、そこからさらに100%気持ちを結び合わせること。もともとのアドバンテージが備わってる前提だから」
<○○先輩>
<○○子先輩>
<○○みん>
<○○ぴー>
<八神さん>
そして自論を言い捲った挙げ句、立花さんは残る5人の名前(愛称)を順に言ってのけると無慈悲なる言葉を解き放ってみせる。
「そもそもにーー名呼びすら出てきやしないんだよ。あ、失敬。名前"程度"なら話題の中で挙がらないとも限らないかな」
絶対とは限らないけど無関心は脈なし状態。
片想いと両片想いじゃあ、スタート位置が違うが、立花さんは好感度というメーターを目安に数値へと置き換えてるんだろう。
ただし現実はゲームのように甘くはない。今この状況も危なげないことこの上ないばかりだろうから……
「ふん…… あたしらも随分と舐められたもんだね…… どういう用ってのはね、口の聞き方ってものを教えてあげよっかって意味だよ」
とりわけ立花さんの論はもっともな言い分だろうが。そこで大人しく引き下がるならこのような場所に呼び込むこともしないわけで話が最初に戻りゆく。
今のしがたの口論を加えたのち積もりに積もった鬱憤をぶちまけんとして…… 感じ取るまでもなく見るからに不穏な雰囲気。
これはヤバい……
(あらかじめ連絡は入れておいてとーー)
* * *
一旦深く息を吸い込む、呼吸を整えたあと。
両指を写真に見立てるよう四角にクロス。
俺は、その集団の前に飛び出す。
「う、動かぬ証拠見付けたりー………! ってね」
ザワザワと周囲の声が反響し合ってる教室中
ゲームセンターだとて雑音混じりで聴こえない
毎度の如くピンポイントに会話が聞こえるって有り得るのかなという疑問、モヤモヤが拭えそうにない……
如何にも並べ立てたような台詞といい。
場面場面を描写するのが難し痒しで恥しい……
次話
【在るべき選択…… 犯行現場をパシャッと激写!】




