ギャルとアンバランスなオモチャ(2)
「え、へぁ、は…… !?」
一体何が起きたのか……
息を吹き掛けられた、なぜに?
耳に光線ないし微熱を感じながらも一旦事態を飲み込めずにいれば。
「ねぇ、少し話し相手になってよ?」
「いやあの、僕なんかと話しても……」
楽しくない、そう…… 口に出そうとしたおり。
「出た、<僕>なんか…… プッ! はは」
一言目からツボに入ったように嗤われてしまう。
仮に、もしも苦手な女子と聞かれればまず、この目前にいる人を真っ先にあげると思う。カウンターを食らったのちの辱しめ。明るい性格であっても苦手意識を持ってしまう方向のパリピ感。
そんな彼女は続けざまに思いがけない事を指摘してくる。
「君もしかしなくても、俺は教室中で目立たない地味なやつだ…… って思ってるっしょ? でも残念、ちょっと目立ちすぎかな」
チッチッチ。甘いよワ○ソン君と。
相棒は見逃そうとも名探偵は見過ごさない。
人差し指を振りながら証拠は上がってるんだよと言い張れば、次いで言い逃れ出来ない証言を持って胸に突きつけてきた。
「パワフルで綺麗なママさんだったもんね」
「っ!」
「ちなみにママさんと談笑してたのがわたしの母ね」
「え……」
まさかまさか、意外なる形で母さんの話相手が判明したのだけれども。「あ、そうなんだ」と、軽快に言葉を返せやしない。吃りは当然、向こうがこちらの返答を待つことなく言葉を紡いできたからだ。
前後に発せられた物言いといい。
ただただ嫌な予感に生唾を飲み込む……
「それだけじゃなくてー、ここ最近はハマジーと良く話してっし。なーんだか芽森達からも評判良さげなのも引っ掛かるし? オマケにーー教室中で一世一代の告白してたのも思い出しちゃった。まぁ、あれはみやむーや緒方の圧というか流れで言わされた感じだったと思うけどね。それでも臆さずにあの場で告白してみせたのは、すっごーく…… 男らしかったよ……」
ピコーン、ピコーン、ピコーンーー
胸のカ○ータイマーならぬ、俺の第六直感が警告音を鳴らしてる。
(逃げなくちゃダメだ、逃げなくちゃダメだ、逃げなくちゃダメだ)
「くろぬまってー、芹沢みたいなのがタイプなんだ」
(去ります…… ここから立ち去ります!)
ギィーーっ!
身の危険から腰を上げて即座に椅子を引いたが。
「そんな日に日に派手なマニキュアを塗りたくるってよりはー、爪痕をガッツリ残しいく影沼君が隅っこで目立たずにいれるわけなんて普通に考えて有り得ないっしょ?」
さらなる横からの追撃に足を止めてしまう。俺は思わず棒立ち無言で彼女の方へと身体を傾ける。そうして目が合わさるとニンマリとした笑みで更なる現状をも突き付けられてしまう。
「始めの頃ならともかく今の状況は正反対だって自分では気付いてなかったのかな?」
人に隠れて日々を過ごせてると思いきや……
忍ぶどころか台風の目となりて皮肉名を言われる有り様。半分は母さんのせいもあるんだろうけどもう半分は自分自身の落ち度なら、知らず知らずの内に陽の目を浴びてしまっていたこと。正直いって直接言われなきゃ気付かないでいたかも知れない。
空気を肌で感じ取れるように、周りを観察してるのは誰だって同じなんだ。であるならばここから抜け出すにはどうすればいい。
(打開案を練れ、打開策を考えろ。沈黙を貫ぬけ)
うん、ダメだ ………… 扉は開いてもくれない。
とーーそんな、目を丸くし唖然とするしかない俺を見てか彼女は愉快げに笑う。
「アッハハ、ちょっとからかいすぎたかぁ」
見た目に反して信也君並みに鋭い観察眼。
弱みを握られたような怖さにビクビクと身構えたり冷や汗が出ていたものの。
「ほぼほぼ初対面だけにイジワルしちゃった。同じクラスでお互い美化委員だけどまともに話したことなんて一度もないもんねー」
ここで初めて親しみを持たせた声色で話しかけてきた。
「綾辻早矢香、サヤって呼んでくれていいよ」
筒のない普通の自己紹介に非ず。
彼女はこちらの目を離さすことなく横位置から後席へと移動。お尻や太ももを見せ付けるような足組みで宮村さんの席に腰掛けた……
フランクな言動といい、これが噂に聞く言わずと知れたギャルの成り…… そんな見姿に今度は違う意味で『ゴクリッ』と生唾を飲み込まされる。
【芽森さん】【楓さん】【滝川さん】【愛美】
今まで知り得てきたどの女の子とも性格が違う。似たような色味のある宮村さんの友達であっても、こういうイケイケな。いわゆる陽キャラと呼ばれるような性格の女子とは関わりがなかったから。これまで以上にどう対応していいのか分からない。
何より。胸元を開けた着崩しスタイルがありありと。いやドドーンと。
男心には堪らず目を見開いてチラ見しまうほどだが、宮村さんや愛美とも引けを取らない立派に実った二つのメロンは目に優しくない……
ただでさえ凶悪なグラマラスボデー…… 魅惑的な部分に加えて妖艶っぽが彼女の卑しさをより引き立ててる感じもして。逃げようにも蜘蛛の巣に掛かったように身動きが取れない。
というよりも身体は正直なのか。
「ぶっちゃけ、興味ありげに黒沼とは一度話したいと思ってたからさーー今みたいな誰にも邪魔されない状況化で」
まるでオスがメスに逆らえないかの如く……
「そ・れ・に・ 暫くやってないから溜まってんだよね…… 」
何とも言えないムーディーな雰囲気の中。
サヤさんは色っぽい声で艶めいた微笑みを浮かべた。
んふっ、早いうちに二人で済ませちぁおうよーー
ギャル=得てして、みたいな感じもあったり、
っていうよりは鉄板ながら男を食らう(吸い取る)サキュバスなイメージなんかな
話的に予定調和とはいえども
正直ここまで書けるとも思ってなかったので……