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参観、面談、黒真ママ


 騒動があった翌日。


 帰宅部という利点を使いつつ、放課後は学校に居残り怪しい動きがないかを観察。事早しで作戦を決行することにしたのだけれども結果は不発。


 昨日今日で何かが変わるわけもなくば俺のやってることはまさに無駄骨も同じだろう。当然ながら毎回のように心踊る出会いみたいなことも起きてくれるはずもなし。寝た振り作戦? で、誰よソイツっていう。


 結局のところ遅い時間に帰宅しようものなら。またまた、要らない疑いを掛けられての流れから取り留めもない母子間のやり取りが繰り広げられるだけ。



「もしかしたら、もしかしちゃったり」

「しない、しない……」

「ひょっとすると、ひょっとしたり」

「しない、しない……」



 そうしてーー報告するような事象もないまま3日が経てばついにこの日が来てしまった。




 【授業参観】


 それは学園行事に置ける一大イベントが1つ。

 だがしかし高校生ともなれば年齢の有無でも喜んではいられない。基本的に学年が上がっていくに連れて関心は薄れ、親の不参加な所も多くなっていく傾向であり。やがて自然な形で子供の方が来るな、来るなよ、来て欲しくないという、振りじゃなく本心からの拒絶へ移り変わっていくであろうもの。


 文化祭や体育祭は年々変わることなく定番かつ人気の行事だとして、今日日参観日なんてものはあってもなくても大半は興味を持たないイベントが1つと言えるだろう。




 思えば中学時代…… いや。

 もうこうなったら何も言えまい。




 * * *


 きたの朝、重い足取りで教室に入ると早速参観日の話で持ちきり…… というわけもなく。日々の日常話が繰り広げられてるだけ。ただ、その日常話の中に参観日に関しての話題はチラホラ出てはいるようだ。


 少なくても俺と浜慈君の会話内容はそれのこと。席に付けば、挨拶がてら話題を持ち掛けてくる。



「ガキの頃ならともかく参観日なんて、正直嬉しくもなんともねぇよな」


「そうだね、多分。僕や浜慈君同様、大半の人は似た気持ちになってるんじゃない。それに自分の親が学校に来るって考えると今にもさぶイボが……」


「だよな、まぁうちは来ないから。そこんとこ安心だけどよ」


「え、浜慈君の親来ないの!」


「いや、来ないつうより。いまさら参観日なんて行ったってしょうがないだろ、って口だな。まっこっちから願い下げだけど。その反応からすると、そっちは来る感じか?」


「ああ…… うん、言っても聞いてくれずな感じで押しきられたというか、ほんとは来て欲しくないんだけど…… 暇だからって」


「まぁ、参加の率は年々下がっていくとしても絶対ってわけじゃないからな。けど聞けば何人かは来るらしいって言ってたぜ」


「へー、それなら安心…… とはならない! 自分の親が来るかどうかの問題なんだからさ」


「…… 違いねぇ」




 学校全体、他の同級生、ひいてはクラス中。

 情けないことに自らの口と足で統計は取れそうにないものの浜慈君も同意見だということに安心。その手の親に対する反抗期だからという理由もさることながら。



 なぜ来て欲しくないか。


 ・その1


 クラスでの立ち位置が見えてしまうから


 ・その2


 交遊の幅友好関係を知られてしまうから



 ・その3


 居たたまれない姿を見て欲しくないから



 仮にもレギュラーとして試合に出ていれば見られる喜びや価値も出てくるわけでも、ベンチ要員、ベンチ外として試合にも出られない立場なら応援に駆け付けてくれた側にも申し訳が立たない。


 つまりは暇をもて余すだけなんだってこと。






 * * *



 とにもかくにも。

 4時間目の授業が終わった。


 昼休みのことーー弁当を早々に食べ終わったがのち、未だ頭の中で色々考え込んでいると。


 何やら教室の雰囲気が騒々しくなってきたようで。

 もしやまた何か起きてしまったのかと不安視したのも一瞬。別の意味での不安要素が目に飛び込んできた。




「ありぁ誰の母ちゃんだ? どえれー綺麗じゃねぇか」


 開口一番。

 気付けば弁当を持参しながら席の横にいた浜慈君はその人を見て感想を述べたが。後ろを向いた矢先にもあれは<俺の母だよ>とは、言えやしない。それと食べこぼしはやめてもろて。


 

「俺んの母ちゃんとはえれー違いだわ……」


 あまりにも早すぎる保護者第一号。


 早速見逃せるわけもなく驚きを隠せないようなら再び感嘆の声を漏らす。まるで見惚れてるかのような瞳の色がちょっとばかし気に掛かってしまうけれども…… 栄田先生に同じくキリッとした風貌に細身のショートヘアー(ピンキリ)の大人女子という共通点があるわけだし。


 浜慈君の場合は同年代より年上女性が好きなだけな気がしなくもない。しかしながらもだ。




「ーーえ、あれ誰のお母さんだろ」

「ーーキレイな人、女優さんみたい」

「ーー見た感じ、○○の母じゃねーの」 



 ヒソヒソ、コソコソで注目のまと

 瞬く間に話題が広がりいけば評判良さげな声が続々と聞こえてくる。


 なんだか誇らしいというよりは、恥ずかしいばかり…… あれ程言っといてこの登場の仕方はもう狙ってたとしか…… せめてチャイムが鳴る間際か授業中コッソリ入ってくるものと思っていただけに甘かったよ。



 我思うゆえに母ここに有りと……



 ただでさえ目立ってしまってるというのに。

 はたまた注目すべきはコーディネートだろう。



 紺色のブラウスに花柄な赤色のスカーフを巻いたなら。下はOL風な隙間のない短めのスカート。

 胸元を少し開けてジャケットを羽織れば…… ファッション知識なんてのはいざ知らず。


 分かりやすく例えた時、それはまるで事務服、客室乗務員キャビンアテンダントさんの正装にも似た装いでどこか上品にも見える。



 母さんは流行の服はチェックしてる上。

 出掛ける時にだけおめかしするでもなく。万年ジャージ野郎とは違って家にいる時でさえ服装には気を使うタイプ。


 装飾品にしても。

 首飾りのネックレス。両耳にはイヤリング。

 薬指には結婚指輪、ってそれは割りと普通のことか。

 ここからだと見えないけど口紅、艶めいたリップもほんのりと付けてるはずだ。



 慎ましやかな着物衣服で来られたらそれはそれで嫌だけど、これも少し気合い入れすぎなんよ。


 しかも今のところ保護者はたった1人だけときてる。それもまだ昼休みであれば存在感が際立ってしまうのは当然。





 クラスメイト達に視線を向けられてる母さんは知ってか知らずか。暫くキョロキョロと周りを見渡すと俺を発見。鉄Y○IBAじゃない、ヤバい……っと。


 しっかりと目が合ってしまうが。こちらに手を振り名前を呼ばれる前に口に指を当ててジェスチャーで伝える事に成功。どうにか名指しは防げたわけでも。結局はその場しのぎに過ぎない。

 次いで見知った人とも目を合わさったことで、僅かながらな俺の抵抗は無意味に終わることになる……




「あら。お久しぶりね、芽森さん」


「ご無沙汰しています、黒沼君のママさん」



 そんな風に笑顔で挨拶を交わせばーー


 これ見よがし、その後の展開がどうなるかは考えるまでもないわけで…… それはもう珍しいモノを見るかのように皆の首が180度回転し。






「「「く くくく、<く ろ ぬ ま(……)>くんのママあ"ぁぁあああぁぁぁン?!」」」







(は、ははっ、やっちまったな…… !)


 主人公を目立たずして、目立たせるにはどうすればいいのかーー


 美少女と噂が立ってしまう×


 実は有能であることがバレる×


 波乱万丈……母親を襲来させる○



 妹や姉、母の違いという部分もあれば

 ご都合主義なしにラブコメ(物語)が書けるわけもなく……

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