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泥にまみれようとも


 友達でもなければ仲間でもない利用出来る存在。


 一方的に話を聞いてくれたり、一時的に協力してくれたりと。

 そんな勝手都合のいい。人が良い人は果たしているのだろうか。少なくとも俺には見当も付かない。迷惑をこうむるなら充てに出来るような人はこれまでもいなかった。


 ...... のだけれども思い当ってしまうような人物が一人だけいる。

 単なる直観じゃない、直に話した仲だからこそそういう風に感じさせられた人が。




「あ、信也君」


「ちっす」



 先ほどぶりといえばそう。


 顔合わせ向こうが挨拶を掛けてきたこともあり。

 こちらも言いそびれていたならお礼を兼ねて喋りかけた。

 暖かいコーヒーを奢ってもらった時のことを。



「前に言ってた友達の件だけど、と。その事については一応は解決したよ。アドバイスが役に立ったかは別としてね」


「そっか」



 さらっとお礼を告げると信也君は朗報を聞いたかのようなニュアンスで頷いてくれたよう。



 そうして、本来だったらこれにて会話は終了と。


 仮に男あるあるな連れションだとして。

 用を足すだけなら基本的にお手洗い場で話す話題なんてものはないわけだ。

 無言でいる代わりに横目に見比べてしまうことは稀にあるとかないとか...... 俺はない。そうなれば口を突いて言葉を発してしまうのはどうしてか。


 彼とはクラスが違うから言葉を交わす機会も少なく、自然と話し掛けに行くような仲でもないならここで。場所を限定せず今話すべきだと思ったからに他ならない。



「「あの」」


「「「あんさ」」




 だが...... 不覚にも声が合わさってしまった。



「え、あ。じゃあ、そっちからどぞ」

「や、全然そっちからいいよ」

「いやあのえとでも信也君から」

「なんそれなんのクロやんから」



 ...... てんやわんや。


 互いに遠慮しいなら「分かった」と。

 ここは俺が引き下がっておこうか。無駄な譲り合いよりは話した方が早いしで。多分向こうは折れてくれない気がする。



「またまた相談に乗ってもらう形になるんだけど」



 彼には前もって事情を話しているなら細かい説明は不要だと。

 然らばそう前振りを入れつつ本題に入れる。



「内容は一緒でもただ今回は府に落ちないところが出てきたというか、引っ掛かりを覚えてしまうというか。ここ最近は横耳に入ってくる話題中に忘れ物が増えたということでも...... 何だかモヤるというか...... どこか引っ掛かってて」



「具体的にこうだと、感じる部分があるわけだな」


「それが一日二日だったらいざ知らず。さすがに頻度が多ければドジやウッカリで済ますには何だか様子がおかしいなと、思ったりしなくもなくて。でも自分で答えを出すには根拠が無いからはっきりとは断言出来ないんだ......」


「クロやん的にはその違和感モヤモヤの正体ってなんだと思う?」


「正体......」



 つまるところ芽森さんと宮村さんの喧嘩騒動。


 けれどもそんな中にある噂が流れてる、気掛かりなら引っ掛かりを覚えてしまうのがここだ。

 もしかして、もしかしなくても嫌に考えてる通りだとしたら。二人の喧嘩が可愛いと思えてしまう問題が教室中で起こっているということ。





(ここから想像出来る得る範疇なら多分......)





「極端に”忘れ物”が増えた、ね」



 ...... 嫌な予感というものは当たるというけれど。

 信也君も似た考え、それ以上の洞察力を持っていれば見透かされてるのも同然。


 そうこうと今一つ要領を得ない俺の言葉。

 口下手ながらも意図は伝わったようで信也君の方は大方の予測じゃない、何かしらの根拠があるような神妙な声で受け答え。



「聞いてる限りは合点......が行くなっと、まぁ――まざまざ口でベチャクチャ言うより見てもらった方が早ぇか......」


「え」


「いや。こっちとしてもグッドタイミング、つか。その事《要件》については俺も相談出来ればと思ってたんだよ。手が空いてれば放課後、ちょっと付き合ってくれるか」




 どういうわけにせよ......


 相談内容は同じものなら何も譲り合う必要はなかったという。



 一方的に利用するのでなく利用し合えるという風に。

 持ちつ持たれつつな、こういう関係も良いなと思ってしまうだけに。やっぱり信也君に話して正解だったように思う。


 今までみたいに<自分1人>じゃあ心持たなかったろうから。



「分かった」




 改めて頼もしさをも実感したのち返答。


 場所が場所ならじっくり長々と隣合わせに立ちション話しをしているというこの状況。

 端からみればさぞや異様な光景だと思えるものの。俺はここぞとばかり質問を重ねて答えを求めた。





「ちなみに信也君だったら――どうする」



 自身が標的にされた場合は単に脅しか、弱みか、相手の弱点を付くというのが彼のやり方でいる。ただ自身の身の周りにいる人が標的にされた場合はまた勝手が違ってくる。


 別クラスのいざこざなら他人事。

 けれど信也君は俺の問に自分が似た立場ならどういう行動を取ろうとするのか。

 前回同様、腹の探り合いは抜きに、口元を吊り上げたならニヒルにもそこはちゃんと、はぐらかさずに答えてくれた。





「当然、私情もあれば置かれてる状況なんかにも寄るんだろうが、そんときゃまぁ、そんときで...... 泥を被ってでもみせるさ」





 カッコがましく、余計な一言を添えて。



「今は『チ〇チロリン』っと、尿をまぶしてんだけどな!」





思慮深い者同士による会話劇。

書き難しさも手伝っては回りくどいことこの上ない。


ただ真剣な会話内容であるからして、それの話をしている場所との見合わなさ加減。


こういうギャップもまたいいんすよね......

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