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影なる者を視ている者



 フラッシュバックというものか。


 耳元で囁かれた記憶が蘇ってくれば最高潮な瞬間であり。

 それと同時に思い出すのはゴキブリを見るような目付きで睨まれたこと。



 





 いったい何用なのか。と......



 時間は刻々と過ぎてゆくもそのまま考えにふけさせてはくれず。

 先ほど同様、やいのやいの茶化してくる浜慈君のついばみを払い受けながらも観察を続ける。


 まさか芽森さんでなく楓さんの動向を伺うことになるなんてと見ていれば。

 おもむろに椅子から立ち上がり、席を離れる理由のでっち上げというよりは。

 一言告げたようなら教室から移動するみたいだ。


 その際、<付いてこい>という目配せ。

 見間違いじゃなければ此方を確認する仕草を見せたものだからか。


 俺は「イタたた」と腹に手を添えるは。

 わざとらしい演技を入れながら自然の流れで彼女の後に付いていくことにしたのだった。






 * * *




 そうして現在――




 先行する楓さんの後ろ姿を確認しながら付いていってる。

 下手をするとストーカーと見られかねない尾行モード。だからあくまでも自然体を装い背中を追っていく。時々立ち止まってもくれたり、派手な(綺麗な)髪色だから見失う心配はないけども、いそいそと付いていく形だ。


 全体図としては正門と裏門。

 校舎の表が広々としたグラウンド場になっていれば。

 その裏手は木々があったりで付近が茂みになってる。


 校外実習や外でのフィールドワークに打ってつけの場所、だとも言い切れないか。場所にしても草木があるだけで見晴らしが良いとは思えない。




 果たして、楓さんは歩みをやめると手で地面を慣らしてから腰を下ろした。



「ん、あんたも座ったら」



「あ、じゃあ......」



 <別の場所>とは云うにこの場のこと。


 言われ彼女と同じように土を馴染ませたあと、ゆっくりと腰を下ろす。


 しかしながら隣同士に座るのはこれまた違った緊張度合い。

 だもんで座るにしても人、二人分程のスペースを空けてしまうなと...... 幸いと誰もいなくて二人っきりの状態ではあるが。


 多分、これが俺と楓さんの関係。


 現時点での友好度を表しているかの距離感といった感じだろう。

 友達でもない、クラスメイト未満かそれ以上、どちらにしても微妙な間柄なことには変わりない。




 やがて――沈黙が場を制し始めた中。

 楓さんが口火を切り......



「考えたらこうして学校内で話すこともなかったね」


「話す必要がなかっただけに過ぎないけど」



 と、口早々に返し言葉を放った後に気付いた。

 これはいつもの逆パターンだとして。


 俺は慌てて訂正を入れる。

 


「あ、えっと、用なら連絡を寄こしてくれる方が早いと思うんだけど」


「それは言えてる」



 すると楓さんは櫛で梳かすよう綺麗な金髪に指を通す。

 順次、同意してくるも続けてこう発した。



「ただ色々気になることもあるから。電話越しじゃなく面と向かって話したかったのが本音。互いに教室で口を交わそうものなら何かと面倒だと思うし」


「あー、うん、確かに。でも何回かは喋ってるから、わざわざ呼び出してまで話すってのもみょうな」


「それじゃあ、・休・日・にでも会う?」


「うっ? え......」


「学校中で話せないとなると、そうなるかな」




 俺は思わぬ提案に喉を詰まらせる。


 今までは偶然か頼み入れで外で顔を合わすことはあったわけだけれども、それが意図的に会うなんてことになれば、一体全体どうなってしまうのか、考えるな感じろって...... それはだめだろ。イヤに男として色々と考えてしまうもそこは遊ばれているって考えるのが妥当。


 

 距離感も距離感なら、ただでさえあんまり話すこともないのに二人っきりでなんて......  言って今もその状況化にあるんだろうけども! 





「そ、そもそもに、そこまでもする必要はないとは思うな、電話でなら要件もサラっと聞けるから。なんとなく電話越しでも良かったなぁって思ってたりなんかも......」








黒真乃くろまのってさ、あたしに苦手意識持ってるでしょ――――」



 マッハ全開! ゴー〇ンレッド

 ズバリ正解! と続けば、向こうに言わせてしまった。



 会える口実よりも会わない理由を探すと。

 実際苦手なのは事実であるにしても本人からそんな直球に言われると答え辛いものがある。

 図星なら目を合わせられず反らしてしまうものな。




『出会ってきた中であんたが...... 一番最低な男だよ』




 生まれてこの方、暴力沙汰を避けてきたがゆえの衝撃。

 ましてや女の子にビンタをぶちかまされたのは初めてのこと。

 そんな出来事があれば、ひりひりと腫れあがってくる痛みは忘れようもない。



「思いっきりブッてやったもんね」



 楓さんもぶり返す様、その時のことを触れてもきて......


「いま、謝った方がいい?」


「あ、えっと――ただまぁ、父親にもブタれたことないのに、つって」




「...... は?」



「あ、いやっ」


 訳わかめと、これも語彙が古めかしいけれども。


 渾身の冗談はもとい楓さんにアニメ(ガ〇ダム)ネタは通じず。

 口をあんぐりすると共に素でクエスチョンマーク。


 愛美や宮村さん恐らくは芽森さんも、感性的に女の人はあまりロボットアニメに馴染みがないのかもしれない。レ〇アース、サ〇ラ大戦は似た風でも別ジャンルだろうしでこういう所は気を付けなきゃだ......



 ともすれば、瞬時に別の物言いへと変換。



「でもそれはあの後、飲み物を奢ってくれたのでチャラになったんじゃないかな。楓さんの気持ちも分からなくもないし、芽森さんが泣いてたことは事実だから。それに。今だって謝ろうとしてくれてるしで、もうなんとも思ってない」




 彼女にとって俺は邪魔者イレギュラーであり異分子ノーバディ的な存在。


 本人談により目の敵と見なされてることも等に知らされてる。

 加減なしの平手打ち、本気で引っぱ叩かれたのが何よりの証拠だろうから。

 もろにスベッてしまったせいで口数は多くなってしまうものの、謝罪してくれようというものなら、こちらも正直な面持ちを伝えるまで。




「とはいえ苦手っちゃあ...... 苦手なんだけど」


 付け足しに言ってしまった。

 でも遠慮なしに言ってくれる楓さんだから、こっちも素直に言葉を返すことができるのかもしれない。緊張しようものなら最初が取っつきにくいだけで不思議とこの空気感は嫌じゃない......







「話し変わるけど、昨日ぼーっと一人でに突っ立ってたね」



 風撫でに再び静けさに包まれようとした途端、それを切り出してきた。





「部活している傍らにも<黒真乃>のことは度々視界に入ってきてたよ」




中二感というのか。

鞄でも男子はドラゴン『竜』と相場が決まっているように

そういう男女の掻き分け、差別化は図りたいなと......

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