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テストのまにまに


 一夜明けての火曜日。



 部活が再開されたからといって喜んでばかりいられない。

 なぜなら今日からテスト用紙が返却されると共に、採点結果が発表されるからだ。

 期間は昼までの授業内容となっていても今日からは通常の時間割に戻る。

 そうして、このテストの結果次第で夏休みの補習授業をうけさせられるかどうかが決まるという......


 果たしてどうなることやら、やら――






 * * *



「はぁ......」


 憂鬱とまではいかなくとも。

 今日の登校は溜息から始まった。


 そうして家を出た矢先のこと。



「あ、おはよ。黒真」


「...... ああ、うん。おはよう」


 ニッコリと微笑み掛けてくれての挨拶。

 毎朝のことながらにドキリと胸が脈打つ。

 曲がり角での待ち合わせなら幼馴染みとの登校はすっかりお約束となってしまっているが。


 黒を強調したデザイン柄。

 赤を強調したデザイン柄。


 それぞれが別の制服の袖を通していたり今はもう子供の頃とは少し、違うものな。



「あのさ......」


「ん?」


「なにも別に待っててくれなくたって――」


「そ こ は。私の勝手でしょ、家も隣り合わせだし、途中までは一緒に行けるんだし、幼馴染みなんだし。それとも何、家に上がれって? それかまた?」


「や、そういうわけじゃないけど、ほら宗――」



「・く・ど・い・」


 ニッコリ暗黒微笑を向けてくれての寒圧。


「う......」



『何度言わせんだてめー』と言い張るが如く。


 止めどとない押し問答は通じず、逆に気圧されてしまった。

 この押しの弱さったら...... とまぁ。


 色々あった中にまた昔の間柄に戻れたんだ。

 こっちからはもう突き放すようなことはしないし、出来そうにない。


 だから一緒に登校出来ることは嬉しいけども。

 世間体というのか、中野さんにも何だか誤解されたままだしで、そういうのを気にしないのだろうか愛美は...... いくら幼馴染みでも毎回こうなら彼氏の立場からしたら気が気でないんじゃ......

 




「はぁ......」


 でも――今はそれどころじゃあないか。



「何時もに増して暗いね」

「そりゃあ、だってな......」

「あー、気持ち分かるけどね」




 俺の今日二回目の溜息を見るや否や。

 共感シンパシーとも言うべきものなら自然と話の種は勉強寄りな方向へ移行シフト

 

 未だ異性との会話は慣れやしないけど。

 長年連れ添ってる幼馴染み効果なのか、愛美の人柄なのか。

 再開直後にあった得てしての緊張感も程よく虚いつつもあった。




「たぶん赤点ものだよ、こっちは。苦手科目は潰せてないままだし、夏休みは言わんとして補修だってんだぜ、補修......」


「それはそれはぁ大変でござりんす」


「そういう愛美の方は調子良いみたいだな、なんせイイ人が隣にいてるんだもんよ」


「ブー、勉強は基本集中する為に1人でやってますぅって、この前も話したじゃん」


「だっけ?」


 わざとらしくトボけてみせた一方。


 愛美は下手に持った両手で鞄を吊り下げ。

 元気印のポニテを揺らしてはプンスカと顔を背ける。

 生き爛々と拗ねた様には思わず笑みがこぼれてしまう。ってか。



 ほんと、こういうとこなんだよ。

 こういうところが......



「それに<宗助>はバカだよ、バカもバカ、もう部活ばっか。勉強なんて二の次だし」


「ああ、相変わらずみたいだね」



 なにぶん、今の愛美には勇ましい騎士ナイトがいてくれてる。

 それだけでこっちは......




「まぁね。だけど、そういうことなら奈月がいてくれたら心強いんだけどねー」


 途端、上向きにしみじみと告げいた愛美。


 今ここにいないもう一人の幼馴染みの存在。

 優しく聡明で、憎らしくも可愛らしく、三人での。涼夏との思い出は一晩で語りつくせない程に多くある。


 だからこそ、愛美には知られるわけにはいかない。



 ――あの日を境に亀裂......が入ってしまっていることを――

 




 俺も同じく空を見上げると今日一番深い溜め息混じりでつぶやき返した。





「............ そうだな」






 * * *




 他の学校でどうかは知らない。


 ただこの二条学園は一クラスそれぞれで期末テストの成績上位10名は廊下内の提示版に張り出されるというものらしい。親御さんからの指摘云々、個々の実力差から順位を出すのは何かと問題点があると聞くけど。

 それを言ったら体育祭なども着順を決める必要性がなくなってもくる、と個人的には思うのだけれども。方針としては競争心を煽ったり高めるという目的があるとかないとか......




 そこはともかく。


(鞄を置いたら確認しに行ってみるかな)



 愛美とは――テストの話題を挟み合いながら別れたのち。

 朝方教室へと入ったタイミングで先に登校していた浜慈君に声をかけられた。



「おっはようさん」


「あ、浜慈君、おはよう」


「沼像も張り出し見に行くんだろう?」


「まぁ、ちょっとばかり」



 目的があらば挨拶はせっせと済ませる。 



 渡り廊下に出ると人波が出来ていてからに。

 既に一クラス毎に張り出しが載せられていた。

 当然にも順位欄には自分の名前は載っていないとして。同じく浜慈君の名前も見当たらなかった様子。


 しかし成績上位者の中には見知った顔が何人かいてるようで、浜慈君は他の生徒を掻き分けつつ、見易いよう頭ごなし手を被せ「どれどれ~」と口に出して名を読み上げた。



「芹沢と...... お、緒方も入ってんのか、さすがだな」



 緒方君が勉に長けているのは宮村さんや浜慈君らの会話で分かってたけど。

 楓さんも、やっぱり頭良いんだ...... 何といっても芽森さんに教授してあげてる側なんだもんな。

 ついでに言えば仮に、もし仮に、テストの結果次第でこれでもし赤点を取ってしまった場合は俺も彼女にマンツーマンで教えて貰えそうな...... って。




(いっやイヤ! 一体何を考えてるんだか)



 でも、そういう邪な考えが脳裏に過ってしまうわけなら淡い何かを期待してしまったりなんかも。



「悔しいけど、俺は男なんだな......」





「――知ってるけど」





「☆〇♢♡っ!?」





 独りごちたにせよ。


 突然返ってきたその声にギョッとしてはビックリ仰天。

 今のを聞かれてしまったと、謎な不安もあれば。


 スタイルに見合う腰付近までにある長い金髪。

 クールビューティさながらな涼ましい表情を崩さない。


 大層驚いた俺のほん隣には楓さんが来ていらした......



「あ、え、お、おはよう、楓さんっ」


「おはよ」

「...... あ、テストの順位に緒方君と、楓さんの名前も載ってたよ」

「それも知ってる」



 うん。


 一応の挨拶は投げ掛けてみるものの。

 愛美とも芽森さんとも違うこの難痒い感じ。

 相も変わらずの空気感に気まずさ具合......

 目が惹かれてしまうことは、しばしばあるけど。


 はっきり言わなくても苦手だ......


 別の意味での緊張、萎縮してしまって何を話せばいいのか分からない。

 関わることが少ないなら基本的に芽森さんこと以外で喋ることもないものな。



「えっと......」



 話題が尽きたことで俺は声を詰まらせてしまうもの。

 唐突にも楓さんは口を聞いてきた。



「朝方どう”声掛けようか迷ってたんだけどさ」


「へ、誰に?」


「ちょうど”移動してくれたから手間が省けたかな」


「え、誰が?」



 ちょっと何をいってるのか分からない。

 なにせ今は生徒達が欄列してて声が聞こえ辛いのと頭が回らない感じもあったり。

 それに構内でわざわざ声を掛けてくれるなんてことはなかったもんだから。なおさらにだ。

 



「言わなくても――」





「うおぉい!? いつの間にか芹沢もいたのかよ!」



 と、そこで浜慈君が反応。


 楓さんがいたことに驚きの声を荒げた。

 さらには俺と横並びになっていたこともあってか眉を微弱吊り下げる。果てには妙な勘繰りも入れてくるなりで顎に手を添える。



「って待てよ、という事はだ。ははーん、なるほど」


「な、なるほどとは......」 


「つまりそういうことなんだろ、ええ」 


 笑みというよりはニタニタといった感じの表情を作る浜慈君。

 主語が抜けてるんだけども言いたいことは分かる。だけどそういうことじゃない、

 そういうことじゃないんだけども、それをどう伝えようか。



「今ばったり会っただでそんな」


 俺は基本に忠実な定形文で否定しようとしたおり。


「別に、あたしも浜慈らと同じで順位が気になって見にきただけ。何か問題でもある?」



 楓さんは合理的に言いくるめようとここにいる理由を放つ。

 しかし浜慈君は納得するどころか、鼻を鳴らし声を弾ませてはカマを掛けたりと怪しむ姿勢は崩さない。



「いやぁ、別にねぇけど。わざわざ隣を陣取る辺りが怪しいよなって思っただけよ」


「......」


「んで、ほんとうのところはどうなんだよ。仮にそうだとしても黙っといてやっからよ」


「...... あ、ゴメちゃん」


「なぁにー! っていねぇじゃねぇか」







 忽然と、二人が言い争ってる中で置いてけぼりとなった。


「んー...... しょっ」


 俺はというと細い腕でどうにか波となってる生徒達を掻き分けていく。

 そうしてもののついでだということで他のクラスの張り紙にも目を通してみたところ。

 やはりというか、さも当然のように<海音君>も上位10名の中に入っていた。




 サッカーも上手くて、勉強も出来て、先輩にも融通が利いたり、交友関係も広くて。

 まさに完璧超人。稀にいる欠点が見つからない人間とは彼のことだ。とてもじゃないけど太刀打ちなんて出来ない。


 先のことは分からないとはいえ。

 もう結果は見えていると証明されたも同義。

 いくら背伸びしたところで俺なんかじゃ......



 無理、だと落胆しそうになったところ。

 後ろから肩を掴まれたよう――突然でビクッとしたが誰なのかは知れたこと。


 それはもう声で分かった。



「――乃に決まってる」


 浜慈君への言い分を終えたのだろうか。

 ただ、順位欄を見ようと前の方に来てしまったが為にか周りの騒々しい会話や声があちらこちらから聞こえてきてしまう状況でいてる。




 見ろよ、あったぞ


 くっそ、届いてなかったか


 ま、今回は頑張った方かな


 ほら見てみなよ、あんた凄いじゃん


 いや、自分のことで喜びなよ


 




「...... して」


 ザワザワとそれらの声にかき消されてか。

 完全に楓さんの声が掠れてしまっているものな。

 一先ずは人波から脱さないと。



「で...... か...... して......」


「え? なんて、聞こえない――」




 そう思わば次の瞬間......

 耳元......にこそばゆい感触が伝ってきた。









(別の場所で話したいから、後でかお貸して)









もうね、テストの描写はアレですよ...... あれ


もっとも大事なのは(展開の描写)シチュエーションであると、※執筆速度

それにしても普段関わらない者同士の会話って難しいな......

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