早食いという不名誉を持つ男
――そうして昼休み。
テスト期間が過ぎれば通常授業に戻りけり。
体育の授業を終えたのち体操着から制服へと着替えも済ませた現在は昼食を取る時間帯。
これまたいつも通り鞄から弁当箱を取り出し、机に置く。が。
その前に食べる前の所作を忘れるべからず。全ての食材いや、時々は手間暇かけて作ってくれてる母さんに感謝の気持ちを込めて...... いざ。
「いただきます」
手を合わせたのち、弁当の蓋をご開帳。
卵焼きから、ウインナー、エビフライ、ミニトマト等々。
手際よく詰め入れられている彩りの料理なのだけれどもお馴染みのレパートリーともなれば目を輝かせ『ウマホーっ』などと感動するやなし。料理の知識はからっきし。
あー......、 myお箸で料理を摘み口に運ぼうかと、した時だった。
「――で、話ってのは」
「!?☆□◯△」
(ちょいちょいちょいちょい、お待ちよっと!)
...... 言う間もなくは横からヒョコっと顔が出てきたら誰でも驚くであろうもの。すれば言葉に出来ない声を出してしまうのも普通のこと。
あわや口に含む寸前だったもので吹きこぼさずに済んだのは幸いか。
基本がボッチ飯ゆえ話し掛けられることは皆無、それだけに余計驚かされてしまう。
そんな無性に心臓にも悪ければ気配もなくいきなりと机の下から顔を出してきた人物は。
「え? えっ。何故に」
既に見知っている顔とはいえ咄嗟の出来事に二度声を上げてしまう。
「さっき昼間に話してくれるって言ってただろ」
「うん! けど今は昼食を取ってる最中だから」
「ああ見りゃあ分かる」
「そうじゃなくて、あれ? 浜慈君、昼食べない感じ?」
「もう食べ終わっちまった」
「いや早ぇ! 一体なに曽根袋だよって突っ込みたいんだけれども」
「言ってる傍からツッコんでるじゃねぇか」
確かに! けど今そこは気にも留めない。ってか。
「恐るべしは異次元な胃袋の持ち主だと......」
袋だけに浜えもんとはこれ如何に。
驚愕の真実は言い過ぎでもこれは危うし事態だ。
只でさえ独り黙々食してるだけなら、誰よりも早くに食べ終わることには自信があった。出所は不明だが食べる速さには定評があるとの情報だ、自分で言うのは程よく寒いな......
ただし芽森さん曰く《食べるのが早い人》だと印象づけられてるのも確か。
それがどうだ、早食いすらも得意気で無くなるなら単に《箒を隅々まで掃いてるお人だ》
早い話が、あれ。それもはや他人じゃね案件...... どちらにしても対して変わらないか。
取るに足らない印象ながらに取り越し苦労とはこのことよ。
「普通に考えて早弁したに決まってんだろ。変に面白いやつだな」
「あ、なるほど。早弁......」
ほぼ無いに等しい僅かばかりの優位点。
早食い黒沼乃君という異名(珍名)が浸透しているかは置いておくとして。
教室での立ち位置、云うに芽森さんからの印象が薄れるという心配があったせいか、我ながらに天然が発動してしまったや。
「まっ、嬉しいことがあったもんだからよ」
なるほど、
浜慈君は幸福を感じると早弁しちゃうタイプと。
気持ち分からなくもないけれどもさ。
「食べ終わったらそれとなく話すから、それまで待っててもらえないかな」
「おうっ」
* * *
と、彼の返事から10分もしない内に間食。
餌を目の前に我慢を強いられる犬と、そう例えるのも失礼な気はするけど。
言った通りならまさに弁当箱を鞄に閉まったタイミングで声が掛かった。
今度は横からじゃなく普通に机の前に立っての物言いだ。
「待ちくたびれたぜ、って言いたいところだが、さすがに早いのな」
「まぁね」
彼の一言には思わずドヤ顔っ。
早いといっても大食らいでなく教室中で昼食を食べ終わる速さのことで。
身体は小さいも早食いという俺にとって貴重な特技の1つとある。
ひっそりと食べ終わるだけなら特技とは言えないけど......
「えっと、それであの、なんて言えばいいんだろ......」
して、いざ本題に入ろうとするも上手く言葉が出てこず。
自分から切り出したのにこれだよ...... 第一斉が出ないわ、頭の中で考えてることが口に出せないわで口をもごもご。と、そんな様子でいれば急かされるのも当然なのであって。
「ここで勿体ぶんなよ、スパッと口に出せばいいんだよズバッと」
「ああ、うん。スパッ、ズバッと...... ?」
「や、そこは勢いに任せた物の例えだろ」
「だね」
こうこう頭でごちゃごちゃ考えてても仕方ない。
自信なさげなら口惜しくズバっととまではいかなくても、さり気なく彼に物申してみた。
「部活を作ってみようと考えてるんだけど」
早食と早弁......
回想直後の会話の間や、台詞回しが難し




