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いざ海音君へ相談! まずはこの『俺』を通してもらおうか?



 ――向こうからすれば通せんぼう。

 ――こちらからみれば邪魔立てと。




 前に立たれてしまえば背が小さい俺の視点からは海音君の顔が隠れてしまう。

 そうなればつま先を立てるか、横にズレるなどしないと視界は防がれたままの状態だ。

 しかしながら話途中だったのなら俺が用があるのは海音君の方なのでここは自分から動くことにした。


 ただし素早く左に重心を傾けてその横をすり抜けようものなら、彼も同じ行動を取ってみせる...... ホワッツ。


(なぜに?!)


 不自然に感じたものの今度は逆足を出す、が。またしても同じ動きだ。

 まるで『ザザッ』サッカーのディフェンステクニックのような足さばきでこっちの動きに合わせてくる。右、左、右、左、右、左、ボクサーのフェイントの様だとも。

 なして足だけでなく顔の向きまでをも合わせ鏡のようにピッタリと俺の動きに合わせてくるもんだから。

 

 まさになんだコイツ~と手をぐるぐるに回したい気分、一方が違うか。


 無言の駆け引きだけに俺の動きを目で逃すまいようこちらを見てる彼。

 屈託ない表情であっても明らかに海音君に近寄らせまいとして......




「用があるんなら、まずはこの俺を通してもらわねぇとな?」



 真似るのを止めたのちニヒルに笑みをこぼす。

 警備員を連想させるかの発言に俺は思わず口を突いた。


「え、まさかの許可制......」


「な、わけないだろ! また適当なこと抜かしてんなよまさ


 瞬時、海音君が正論を吐きだす。

 理に適えば当たり前にそんなでたらめな権限はないらしい。


「それに黒君はおれに話があるっていうから――」


「あ~だったら代わりに聞いといてやるよ、俺が直々に」


「いや訳わからん! いいからそこ退けろって」


「それはどうにも聞き入れられない相談事だな」


「ちょっと横にズレるだけだろっ。ああもういい!」



 さしもの海音君も彼の前ではツッコミ役に転じてしまっておいでか。

 曖昧な言動に振り回されるなりせっかくのクールさが形無しと見えるや。

 言うがまま何度目かのやり取りでいい加減痺れを切らしたらしい。ウンザリした声調からも伝わってくる。

 だもので突っ立ってる彼を手で押し退けようかとして。


 再度、待ったの合図が掛けられた。



「ワケなら、ほれ。後ろを見てみなって」


 言いつつ彼はクイッとあらぬ方向を指し示す。

 そうして本屋から出てきたのは二人の女性陣、言うに女子だ。


 ”華やかなオーラがある中にもそれぞれで見た目や印象が違ってる。


 高身長と佇まいからして凍てつくように麗しい小鳥さん。

 低身長でありながらもどこか刺々しい小悪魔風な滝川さん。


 二人はキュアキュア! って想像してしまう痛々しさっプリは如何程に......



 とはいえ、なんだかんだで男女4人から成るグループ全員が揃い踏みときてる。

 今日は珍しく1人だけと思っていたこともあってか俺は自然と彼に話しかけていた。



「結構仲いいんだね」


「そうでもねぇさ。今日は海音あいつん家で映画の鑑賞会を開くんだよ、レンタルするそのついでに本屋にも行こうってなったんだけど」


「えらく仲良いっすね」


 もはや疑問ですらない確信。


 そもそも今時DVDと本はセットになってる所も多いだろうに、なぜ本しか売られていない場所にまで足を運んで来たのだろうか。そこはまぁ個人個人の勝手か、と。


 ”意外”にも率直な俺の返答に答えてくれたのは目前に立たれてる彼でなく......

 海音君自らが仲を否定することもしなければ「ああ、だからなるべく皆で集まる機会を作りたいんだ」小さめの声で呟いてみせた。のち......


「信、くれぐれも変なことを吹き込んでやるなよ。あと話し終えたら家に来るんだぞ」


 忠告を放ったもすぐ、海音君は彼女達の元へ駆け寄って行った。





「私は夜すがらでも時代劇チャンバラものが見たいな、で候」

「私は明け暮るまで恋愛劇メロドラマものが見たいわ」


 最中、本屋から出てきた筈の二人は何やら言い争いをしている様子で。



「ふ...... こう流れる剣捌きからバッタバッタと敵をなぎ倒していく様は痛快でな、で候」

「は...... 百遍も聞いたわよ、それよりどう転ぶか分からない甘いドキドキを愉しめる愛憎劇の方がいいと思わない?」

「早速言ってることが矛盾してるではないか、しかし憎劇なら時代劇シリーズにも豊富にあるものでな、で候」

「そういう生き死にじゃなくてドロドロした男女関係を見たいのよ」

「滝川の悪趣味な部分は未だに不可解だな、理解に苦しむ」

「小鳥は分かってないわね、女は多少毒味がある方が魅力的なのよ」

「いやいや某には分かりかねるでござる」

「候縛りはどうしたのよ? でもまぁそんなに言うなら『忍者ハッ◯リ君』でも見てればいいんじゃない? 要は刀があれば問題ないわけで理屈は同じでしょ」

「無論、前話視聴済みだとも、ニンニン」

「いま...... 冗談で言ったんだけど」




「――ったく。小鳥に真央、お前らまた揉めてるのかってェ......」


 そこに、海音君が割って入っていったが二人に気圧されたのか口を噤んだ。

 

 キッ! と同時に鋭い目線を向けられたせいで。



「『『海音』』 『『三羽」』』はどっちが見たい?!!」



 音楽性の方向違い然り、軽い趣向の違いと。


 選択次第であれデッドオアアライブ《生と死》が掛かってるわけじゃない。

 それでもいきなり答えを委ねられた海音君は果たして......

 片方の味方に付くということはもう片方にモヤモヤ感を抱かせてしまうことになってしまうわけだから。後ろ姿だけに表情は見えないけどどっち付かずなら「ヴッ」みたいに目も泳いで迷い兼ねてるんだろうかな。


 鑑賞会とは互い互いに作品についての感想を言い合ったりする大会、催しのようなもの。 

 ジャンル問わずそれぞれ見たい作品を借りれば万事解決だろうけども。見たいものが違うならそれはそれで意見が食い違ってしまうよなって、男女間の違いがあれば俺の好きな特撮ものも愛美には理解されなかったっけか。


 だけどもし、これがどちらかに告白されている場面だったら――


 今のところそんなに重く深く考えなくても俺ならば、恐る恐るでも第三者の選択として特撮作品が観たいですと答えること間違いなしだ。と、そこは海音君も同じように考えてるよう。




「お、お。おれは...... スポ根ものがいいかなぁああ!」



 ヤケクソ気味に答えを絞りあげた。

 サッカー部所属でいてるならスポーツ男子なんだ。

 仮にはぐらかしたにしても二人方の主旨と食い違ってるのも普通のことのように思う。


 しかしは第三の選択肢は彼女達からしたら面白くなかったらしい。

 途端バカらしくなったのか、白けたのか、二人は会話を再開なされた。



「......でさぁ、その忍者のやつって面白いの?」

「......うむ、幼い子供向けながらに中々どうして」


 小鳥さんと滝川さんも小学以来の友人でいてると聞いてる。

 さすれば先程の言い争いが嘘だったかのように横並びに歩き出す。

 一方の海音君は先が思いやられるなといった心境さながら、彼女達を追うように付いて行く形だ。


 トントンと歩き始めたのなら本屋から遠ざかっていくのは当然。

 レンタル屋へと向かうとのことならあれよあれよという間に三人の足元も見えなくなっていく。




 そうして気付けば友達という訳でもないその友人と知人のような存在。

 気まずいに気まずいを掛け合わせてももっと気不味くなるだけの関係。


 やも、『ビュー』と波状に寂しき微風が吹く様な絵面だとして男二人だけがこの場に取り残されてしまったのである......



 後半へ続く、という具合に。


ラブコメ風なら自然な会話劇を書けてるのか自分でも分からない

ラブコメとはなんぞや......

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