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目に見えないもの


 あれから結局、芽森さんからの連絡はなく夜が明け。


 そうしてメールが入ったのは朝方、【昨日は返信できなくてごめんね】との内容でいたけど文面なんてどうだっていい。無視されていなかった事の方が大事だ。

 正直いうと頭からぽっかり抜けていたのであれば寝入る間際にも繰り返し楓さんの顔が浮かんできたりも...... 首を左右に振れどそれは気の迷いだと、自分に言い聞かせた。




 廻り回れば日付は金曜日――



 七夕という息抜きがてらテスト最終日は滞りなくと言いたいところだったけど。

 自負出来るほどの余裕がある筈もなく不安いっぱいで臨み行かん。他の人は、少なくても浜慈君は親指を立ててのサムズアップを見せてきたもので大丈夫そう、別の意味でも。


 そんなこんなで人のことより自分の心配をしないとか。


 悪足掻わるあがき、次の科目を頭に入れておこうとして教室後ろのロッカーから教材を取り出す。が、すぐに元の席へは戻れない。

 後ろから教室の様子が見渡せるようなら視線は気になる人の方へ向いてしまうからだ。恐れ多くもこの行動をストーカーと呼ぶ者もいるかろうが単に見てるだけなら罪には問われまいよ...... 多分。



 視界に捉えるはお馴染み【華やかな】グループ。

 芽森さん、立花さんと、うん――まぁ。

 昨日あれだけ話しておいてなんだけどもこうして直で顔を合わすのはまた違った緊張度合いがあるなっと...... っ。



 (ついつい、一点集中で見ていれば忽然こつぜんと目が合ってしまったよ)


 ヘビに睨まれたカエルと題するなら、もちろん俺が蛙の方。


 手が空いたが矢先にも澄まし顔で見入ってくればこちらも自然を装いポーカーフェイスを貫くばかり。

 その間十秒、十五秒と、昨晩の事を思えば小っ恥ずかしいことこの上ないのだけれども、ここはジッと見合う睨めっこ勝負だけに目を逸らした方が...... とした時、楓さんの口が艶やかに動いた。云わばジェスチャー。




『・わ・す・れ・て・な・い・』




 結果――先に目を逸らした俺の負け。


 口パクでそんな感じの言葉を伝えてきた、ように思えた。

 となれば無性に意識してしまうもので顔を合わせ辛くなること明瞭。



 そう、赤点を取ってしまった場合に限りは【借り】を返してくれるのだという。

つまり楓さんに勉強を教えて貰えるという約束が果たされると、彼氏持ちなら尚のこと他意はないんだけれども、やっぱり男としては、そういう目で見てしまう感じもあったりと...... 一つ分かるのは嫌にバカ丸出しってことだ。


 芽森さんはおろか楓さんとはどうだか、ただ愛美を”友”として見た時。

 果たして男女間での友情は成り立つものか、男にとって未来永劫、切り離せない問題なら正に自分(理性)との戦いは辛いものがあるなと。




「ふうっ......」



 諸々の思考は一呼吸により煩悩滅殺、ところで俺の属性は何色だろうか。

 出来れば熱く燃ゆる赤が良いんだけど、今となっては遠い昔の理想か......

 そこは別に赤点と掛けてもいない。ほんとに。


 等々、別のことを考えるなり気を静めて前方に視線を戻せば。

 よもやよもやで不覚にも今度はその様子を見ていたらしい浜慈はまじ君と瞳が交差。

 目配せで『見てたぜ、見てたからな、見てたってよ』みたいな表情を送ってきてるけど、見つめ合っている訳じゃなし。それイヤに勘違いだからっ! そして想い人違いだから。


 勉強の邪魔をしないとのことで口黙ってくれてるとはいえ、どうにも背中がこしょばゆい......







 程なくして――『コトッ』と筆を置くペン音が目立ち始めようものなら。

 テストが終わったがのち、開放されたと言わんばかり机に寝そべるは脱力気味に、否。




「終わっ、たぁぁああぁぁ......っ!」



 【煌びやかしき】もう一つのグループ。


 ようやくの安堵か。

 やるせない不安か。


 またまた別の事情との関連なのか。

 その中心的存在でいてる宮村さんの呻くような声が後ろから響いてきた。


 


 彼女を合図に、ひとたび人が集えばワイワイガヤガヤ、

 幾ばかりの増音に紛れつつ浜慈君も颯爽と俺の席へと駆け寄ってきて。



「さってさて...... さっきの話を聞こうじゃないか、もちろん心の友なら聞かせてくれるよな」


「いつの間にやら親友をも通り越しちゃってるんだけどっ」



「意味合い通りとするならな。次第によっちゃあ神友なんて言葉もあるらしいが使い分けとしては、知人、友人、親友で充分、っと話を逸らすなよ。さては策士だな」

「や、そこは浜慈君が勝手に...... まぁいいか」

「へへっ、手短に頼まぁ」

「あ、えっと、たまたま目が合えば睨みっこしてましたっていう理由じゃあ」

「ああキッパリとダメだな、というか...... どういう経緯でそうなるんだよ!」

「うん。まぁ」



 テストの出来を聞いてくるわけもなく。

 先程の俺と楓さんの睨みっこ対決のあれそれを問い質してきた。


 色んな意味で身体全体がこそばゆーくなったのはまた別の話。



なるべく文字数は短めを意識してみてはいるんですが。


展開の変わり目だけに、これは後日談と言えるのか怪しいところ......

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