表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/190

嘘か真か

間が空いてしまうと投稿するのが億劫に。。。


【それから、せっかく誘ってくれたのに今日は行けそうにありません...... 本当に誠にごめんなさい】




 カタカタカタっと――――。


 手前に二文三文と色々訳を並べつつ前後で区切る。

 絵文字などの面白さは抜きに断りの文章としてはこんな感じでいいか。


 平然と打ってはいるも芽森さん宛ての返信だけに物凄く手汗を掻いてる。



 悪寒と似たような察知能力。

 男の勘とは言わず、いくら女の勘とは言っても探知センサーの様に万能じゃないんだ。

 さしもの海音君共々気付かれなかったのが証拠、声真似に騙されるなんていう余裕もなかっただろうし、そこに”いる”と感じ取るなり【来てください】発言はおそらくしないだろう、しないと思う。



 現在時計は晩刻の8時ちょっと。


 今宵も引き立て役なら山を下りた所で気づいたことは。

 風が吹きいくが薄着でも肌寒さを感じさせない適した緩い気温でいてる。

 特別行事と相まり街中には波というには半場に星を見ようとしてか人数があちらこちらで見受けられた。屋台も立ち並べばそんな星々にも勝る賑やかしき光景を特段と眩しく感じてしまうのは多分気のせいなんかじゃない。



 俺は文が出来次第、送信ボタンを押した――



 ***



 七夕だからといっても豪華な食卓ではなく普通の献立。

 事前に伝えてはおらず、ご馳走も出なければ、帰宅の連絡が入っていたわけでもなし。我が黒沼乃家に取り立てて変わったことはなかったが、あるとすれば母さんの反応一つ。


 家族三人で食卓を囲めど話題に出すのは耳に痛いこと。

『帰宅が遅くなった訳を聞かせて欲しいな』と。期待に胸を寄せながらに目を輝かせていたが、語ること毛頭無しだ。その横で珍しく帰宅の早い父さんも耳を立てていれば尚更に言える筈がない。


 当て馬《男》として引き立て役になってきた。或いは人の恋路の手助けをしていただなんて......


 揃って両親が聞こうものなら哀しいにも程があるんだよな。



「別に、ただちょっと山に登って星空を見て来た」


 それゆえに報告することは確かな事実だけ。

 しかし目敏い母さんは家を出る直前に俺が言っていた事を覚えていた模様。


「あれれ~? おかしいぞぉ、確か本屋に行くって聞いたんだけどな~」


「ぐっ...... その帰りにでも立ち寄ったんだよ」


「む、本屋の帰りにわざわざ滅多に行かないような掛け離れた場所に位置してる山の中へ歩いて行く。我が息子ながら妙だわ」



 ...... 普段息子が観てるアニメキャラクターの物真似か。

 二流三流、子が子なら親も親といやに下手っくそな棒演技だが、わざとらしく発する母さんを前に俺は聞こえない振りで応戦。ともすれば敗戦......


「山地や海辺と目的が違えば手段も変わってくるんだから、どこへ行こうが人の勝手だろ」


 もはや言い訳虚しく白米を口の中へと掻きこんだ。



 ***


 食卓終わり。


 防戦一方からの敵戦逃亡。

 要は逃げるように別の部屋へと移動したわけなんだけども

 そうして――風呂から上がってメールを確認してみるも、まだ返答文は返ってきてはおらず。


 一度ベッドに腰掛けようとしたが、その前に窓を開けての風通しが先だ。

 ただし戸を全開にすれば明かりに照らされて虫が入ってくる為にしっかり網戸で隙間風を作る。

 風呂上がりの身体に当たる夜風はなんともに心地いい......


 対照的に住宅と山頂から見る景色の違いは歴然。

 それでもビルが立ち並ぶ事もない住宅街であれば二階の窓からは若干曇り掛かるけど目で見て取れるぐらいには小さい光が輝きを放ってる。微弱ながらのイルミネーション気分と、視線を下ろせば向かいの家。

 幼馴染の部屋の明かりは消灯しているのも確認出来た。



 愛美は、楽しいひと時を過ごしてるんだろうな......


(返信はまだか)


 涼夏も、今頃はこの星空を見ているんだろうか......


(返信はまだなのか)




 芽森さんからの返信は――――。


 星降る夜。

 七夕の言い伝えと聞けば懐かしくもあれば寂しくもあり。

 しみじみとラムネの風味且つノスタルジーな感情が湧いてくる中でも気が気でなく。

 いつも以上に落ち着かず妙にソワソワしていれば遂に、返信が来たっ。


 が、相手は待ち人ではなかったせいもあり複雑な心境となりで肩を落とす。

 ただまぁ、おかげかここ数日ですっかり番号も見慣れてしまっているなと。

 そんな風に思いながら通話ボタンを押し耳へと押し当てる。



 

〈...... もしもし、えーっと。どのようなご用件で〉


〈どうもこうも、お礼を言う前にあんたが退散した〉


〈あ、それでこんな時間にも関わらず掛けてきたと......〉



 こういう楓さんの律儀さには感心しちゃうのだけども。

 お礼を言う為の連絡だと聞けば「ありがとう」の一言で通話が終了する。

 彼女との間柄的に急用でもないならいっそう話すこともなし、気まずくもなるまいと電話に出たが早々。先程同様自分から切り上げに行こうかとして。



〈今日は言われた通りの事をこなしただけだから。ああっと、あ。そういうことでじゃあ......〉


〈――の〉


〈はい?〉


 しかしそこで話は途切れない。

 俺の声を割って向こうから話題を切り出してきた。



〈さっきのあれ、褒める相手先を間違ってるから〉


〈え、ああ......。 あれは普通に楓さんに言ったまでだけども?〉



 アレっていうと瞬時に思い付くのは浴衣についての感想だ。

 男として見とれてしまった故にぎこちなく発したあの台詞は確かに楓さんに向けてのもの。

 そこは相手の姿が見えない電話越しのせいなのか思いがけず素直な返答をしてしまう。



〈へー、意外とそういうタイプ


 なして口を滑らした元凶から意味深な呟き。

 1ミリたりともある筈もないのに女たらし又はすけこましだと思われたっぽい...... 果ては声を低めての威圧感も出してきて......



 『時に一つ聞きたいんだけど』、改まってそう話を振られた後。





 ・黒・真・乃・ってさぁ、あたしに『気』があったりする?





 ッチッチッチッチッチ...... 


 ――時限式の手榴弾しゅりゅうだんでなし。


 頭上へと投げ込まれたのは爆弾ばくだん、心境を表すなれば炸裂弾さくれつだんか。

 そんな一言を聞かされた俺は身体が硬直すると同時に言葉を失った。

 当然にも率直に告げられれば心中は穏やかじゃなく......



(いやいやいやいやいやいやいやいや、イヤっ!?〉



 浜慈君や緒方君らに一方的に思われてはいてる中でも本人から言われると口が窄んでしまうというかキッパリと否定し難いのは何故なのか? 図星を突かれたから? 断じて違うっ。


 ど真ん中であっても凡人が160キロの豪速球を打てるわけがなかろうて。

 向こうは山投げのスローカーブを投げたつもりだろうが当てるのも至難の技。


 であれば凄まじい程の衝撃を受けた俺の思考は真っ白状態に陥ってる。



〈なんてウソっぱち(......)もいいとこ、元々こっちから吹っかけたんだもんね〉



〈い、あ。お、俺が、楓 さ ん を好き、だって!!?〉



 到底信じられずもう一度口に出してしまった時。


〈いやってか、キャラ作るの下手すぎ...... それもう前の時と反応変わっちゃってるから〉



〈あ......〉



『――楓さんのことは好き、だって思ってるし』


 問うのと問われるのは別。

 ◯◯じゃないだろと断定されるより、◯◯なのかどうかを訊かれることの方が返事に困る。

 数週間ほどの出来事なら芽森さんへの好意を隠そうとして咄嗟に出した言葉だ。


 すぐに見抜かれてしまったけど、そのようなやり取りがあったことは頭から消えてたや。

 しかも今頃それについて触れられればボロを出す有り様。自分で作った設定だってのにほんと何やってんだか。そもそも見抜かれてるなら隠す意味が無いような気がするけど次からは知られてる前提で答えることにしよう。


 焦りながらも頭を巡らせた俺はそう結論付けると、早速。

 楓さんはそれを知った上で言葉を重ねてくる。



〈本命相手に本心を言えないのは、逆に言えばこっちを意識してないってことだしね〉


〈え、ああ...... 楓さんもそういう経験がお有りで...... ?〉



 思い返せど。

 早々に見透かされていれば自らの経験則を言問われた次第。

 返す刀でブーメラン的に放ってみせた質問は不毛だとして流されもうした。


矢先、引き留められて始まった話の種は楓さんが言わんとする本題へ持っていく為だったと気付かされる...... その証拠にゆったりとした声調が急に真剣味を帯びたように鋭くなった。




自分の中では幕間? 的な話なんですけど中盤に差掛かる感じなら、

今回部からあらすじを変更いたしました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ