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穴場スポット

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 俺の中での都会のイメージは高層ビルなどが所狭しと並び立っている町並みでいて地図的にこの辺りは田舎寄りの地域に位置している。

敵の侵攻を防ぐよう設計された城壁とも呼べば少々物騒だろうが、山に囲まれゆきは道行く先々に商店街が幾つも展開されており。催しと題してお祭り行事が開かれるとニキニキワクワクと人々が一堂に会す。直訳すれば『面白そう』という意味。


 だからという訳じゃないけど。

 地元の贔屓目で見ても懐かしくも温かみのある風景が広がってるように思う。



 こと山頂には人工物として神社が祭り建てられたりもするのは珍しいことじゃないが町の外れにあるこの山はそういう建物らしきものは何もなく、開けた地帯があれど木々に覆われてるだけ。

 子供のあそび場として使えない事もないだろうけど基本はあまり立ち入るべきじゃない所だろう。道沿いには『危険、足元に注意せよ!』との看板が立てかけられていることからも容易に入ってはいけないことが分かる。逆に言えば身の安全の考慮さえしていれば登ってもいいよとの注意事項なんだけども。


 かくは言うも”ちょうど”その山を駆けのぼっている最中だとして。


 正攻法と下手に山道から外れたりしなければそれほど危険はない。木や草が視界を邪魔するも細い道を辿っていけばちょっとした冒険気分で登っていけたりもする。道中、程よい長さの木の棒を見つければ『ひ◯きの棒』に早変わり。まさに同心が子供に帰るっていうのか。俺は一体何をやってるんだろうか...... という風に我に帰ったり。



 ――そんなこんなんで山頂に着けば息も切れ気味で流石に足にくるなと。


 それにしても山の景色を見渡すのは何年ぶりだろうか......

 幼少期、小学時代に来たっきりだからあんまり覚えてないけど、殺風景というか本当にまっ平らだなって。ただ星を眺める分には建物に遮られないこういう広々とした場所が適していて。雑草と木々以外は何もない空間だからこそ生み出される絶景となり得るんだろう。


 と、余韻に浸るのはここまで。

 どこか落ち着ける場所を探しては腰を下ろしたことで取りあえず今は誰も来ていないことを確認。暇を持て余すだろうからと色々持って来た訳だけども。

持ち運び用ポータブルゲーム、漫画に近しきライトな小説、携帯などのアイテムでどれに手を付けようかと考えれば連絡手段にしか使えない携帯は除外。


 何にしても暇潰しと、夜が更けていくまでに1人寂しくお外で遊戯にいそしみますか――――



 

 

 そうして、どれだけの時間が経過したのだろう。

 家での過ごし方と違って時計の進みがこんなにも遅いとはアウトドア派恐るべしだ。多人数でいればまた感覚が違うんだろうけど。

 早くに来たりはシート持参で待ちぼうけてるのは自分1人だけと。これが花見なら座る椅子を確保するのも難しいぐらいなのに......


 ゲームに飽きれば小説、小説に飽きればゲームと右ひじを見て左ひじを交互に見るかのようなルーチンワーク。同じ食を二度三度頬張れば味の触感から飽きがくるというもので、違う料理を口に運びたくなるあの感じと似てる。白米無しにおかずが二品、空腹は別にそれで間が持つ者がどれだけいるのか。


 ...... 早い話が暇潰しに飽きてきてしまったという意。

 場所が場所だけに静かな景色だものでもはや、まぶたが重くあくびも出てきて眠たくなってきてしまった。

 うつらうつらにも睡魔が襲ってきたと...... そういった微妙なタイミングで俺の耳は”人の声”をキャッチした。



「ほら付いたぞ。うん! この場所なら申し分ないだろう」

「何もよりによって昼間に来なくたっていいじゃんかぁ」

「文句を言うな、色々準備があるんだよ。重たい荷物は先にここに置いといた方が後で楽だからな」

「再度登ってくると言う意味では二度手間ですけどもね」

「...... それはそれだ」



 人数で言えば3人程、声から察するに男女数人。

 どうやら彼らも星を観測する為の下準備からこの場所を指定席とするらしい。

 景色を眺めようとする目的があるなら高い所に人がやってくるのは習性とも言えるけど、街外れと言っても精々数キロメートル、頭を超すよう遠く離れてもいない山ならこんな絶景ポイントが貸し切り状態な訳がないか...... 



 (こうして人が来たということは一応、連絡を入れた方がいいんだろうな)



 ***




〈――三人か、時間帯を考えればこれから増えてはくるだろうね〉


〈穴場と言っても誰しもが見知ってるような場所だから...... あ、じゃあ場所を移動しようかって思うに当たってここでちょっと問題があったりするんですが〉


〈今いてる場所以外に移動出来そうな所はない?〉


〈うん、俄然当てられたら何とも言えないけど、まさにそう! 見るがままインドア派なものでどうすればいいのか分からない状態と言いますか。男ながらに山に詳しくないというのもあったりして〉


 物陰に身を潜ませながら。

 またも楓さんに電話を掛けたはいいとして二言目には泣き言しか出て来ず。


 複数人マルチは元より一人(ソロ)キャンプはおろか、知らない場所なら手詰まりといった手前、やや意外にも彼女は打開案を出してくれた。似つかわしくもない道なりの説明だとも。

 


〈...... 山頂から来た道を下って行った所に特段草が密集してる箇所があるんだけど、それを目印に曲がって進むとぐるっと回って一周、上がり坂を登って行けばあら不思議と開けた場所に出るからそこに移動できちゃう?〉


〈あら不思議って...... いやまぁ。くもの巣くぐって上がり道とも言うけども。そんなまるで知ってたみたいな言い方は――〉


事前......にリサーチ済みだっただけ、相手に頼むだけ頼んで自分は何もしないっていうのはあたし的に無しだからね〉

 

〈あ、そういうこと、けど道沿いを聞いても肝心の芽森さんがどうするか〉


〈心配しなくても大丈夫、文音はあたしと違って・そ・う・い・う・部分には長けたりしてるから〉


〈へ、へー、そうなんだ......〉


〈むしろ心配なのは海音あおとって、まぁそこも気にしなくて良さげかな〉


〈...... わ、分かった、とにかくその場所に移動してみるよ〉



 常々思ってはいたけど、芽森さんの性格や楓さんの海音君に対する人物像は俺とはかけ離れた所にある。

 また彼をカッコいいと感じる一方で楓さん達にしか知らない一面があるんだなと、それだけに認めてるのが幼馴染とする彼に向け得る信頼の証で。二人の動向を見守る立場として――今日は彼らを落ち合わせる手筈となっている。憧れこそあれば多少胸がざわついたりもするけど。


 そういった目的のもと彼女の協力者として俺はこの山にて場所取りを任されてるんだ。



〈あと。もう一つ気がかりがあるとすれば芽森さんが着飾った浴衣姿で来るとして、山の中を歩くなら衣服が切れたり汚れたりするんじゃないかって思うんだけど〉



〈そこも抜かりなく、実は【抜け道】があったりするから、ね〉




 なんですとっ...... !?


 

 楓さんもお人が悪いというか、なんというか少しばかり騙された気分だ。

 いや、男ならば文句は言えないな。それに席を外すなり助け船を出してもくれたのなら、とやかくいってても仕方ない。

 俺は電話が切れるや否や生い茂る草を退け言われた通りの道沿いを進めば確かに開けた場所には出るには出た。

 山頂ほどの広さはないものの、人が横並びに座る場所が確保できれば問題ないと。



 ただ、しばらくして睡魔に襲われたことで遂にはその場で寝入ってしまった......


 


言うに冒険感を出したかっただけに【 】は後付けだったりするんですけどもね

女の人に山道を登らせる以前に来る時々にも衣服の事を考えると、もうね考え足らずでそこは男と女の違いもあるかなと......

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