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事情聴取

     ☆★☆★☆


 というわけで始まりました事情聴取。

 まず初めに行うのは出席番号三〇番でお馴染み、七瀬香織さん。その他二名にはとりあえず扉の向こうで「これでもして暇を潰して置いてくださいな」と先ほどまでみなさんが遊んでいたトランプを渡して放置状態。トランプは四人くらいで遊ぶのが丁度良く適した人数なのですが(さっきは三人だったですけど)、二人だけでもブラックジャックやらスピードやら、知ってのとおり五分程度ならば大概可能な便利アイテムだったりします。大富豪とか最高ですよね、暇つぶしには。

 わたしはブラインド仕様のカーテンを閉め、電気スタンドの電源を入れて場に雰囲気を作ります。カツ丼を用意できなかった点は若干のマイナスポイントですけど、まあ今回は即興のため良しとしましょう。

 閑話休題。

 早速、某作品のワンシーンを真似てブラインドカーテンを人差し指と中指で思い切り開いて外の日差しを覗きます。そして問いました。

「……あなたが犯人だったんですね……」

「どうしてあたしが既に犯人として仕立て上げられているのかしら……?」

「いえいえ。これは肯定しているのではなく、ただの家庭にすぎませんよ。こういう雰囲気を作り上げてこそ、真の犯人さんに『言い出しやすい雰囲気』というものを提供してあげているだけですから」

 七瀬さんは誇らしげに行っているわたしを見るなり、「正真正銘の馬鹿ね」と言わんばかりの苦笑いで場を濁します。

「し、仕切り直して七瀬さん」

 恥ずかしくって急いだ足取りで、七瀬さんと対面することができるパイプ椅子に腰を下ろしました。

「これは一応でも事情聴取なので、今日一日の行動を誰かが証明できるように言ってくださいな。わたしはその証言をまとめていますから」

 そう言うと「分かったわ」と七瀬さんが顎を引いて話し始めます。

「えっと……確か今日の朝から昼休みまでは自分の教室から出てないわ。友達と話してたからね。それに移動授業もなかったし。昼休みは屋上に行って友達とお弁当を食べてたの、そしたら別館の丁度あたしたちの使ってる『この部室』がいつの間にか電気が付いてて……ここって結構屋上からだと目立つから、だからその時に一度部室に来たわね。ま、友達待たせてたから電気消したらすぐに戻ったけど。ホントよ? それからは放課後まで教室で喋ってたわ。……それくらいね、ちなみに友達に当たってくれれば証明できるわ」

「なるほど。ちなみにその時、冷蔵庫には手を触れましたか?」

「触ってないわ。というか、入口から一歩しか入ってなかったわよ」

 断言します。

 わたしはその言葉を信じ「では」と話を再度切り出しました。

「最後に質問なんですが、この事件について七瀬さんなりの推理を教えてもらえますか?」

「推理……ね。推理ってほどでもないけど、あたしはやっぱり数字に何かヒントがあるんじゃないかと思うわ。だってハートの3だったり4が漢字だったり、違和感だらけだもの」

「ふむふむ」

 なかなかいいところを突いた疑問ですね。みなさんにはまず伏せている『7』の存在を含めると、確かに数字はヒントなのでしょう。

「ありがとうございました七瀬さん。ひとまずそちらに椅子を用意しといたんで、座って待っててもらえると助かりますが……」

 お礼の言葉を言って七瀬さんに待ってもらうよう要求をしたところ、

「りょーかい」

 快く承諾してくれました。


     ★☆★☆★


「続いて一番ショートケーキに関係を持っている可能性が高い植木小枝さんですね」

「あれれ、うちの扱いが酷いような気が……」

「あーそうだ忘れちゃいけませんでしたね、この台詞」

 台詞? と首を傾げいてる植木さんを放っておいて勝手に話を切り出します。

「あなたが犯人だったんですね!」

「どうして突然嬉しそうな顔でうちが犯人扱いされちゃってるのかな!?」

 ただ言いたかっただけなんですけどね。二度目ともあって椅子に座っている七瀬さんも

「やれやれ」と、ため息をこぼしながらこちらを眺めていました。

「それはそれとして、今日の放課後まで何をしていたのかを、正確に言ってください。もちろん嘘はいけませんよ?」

「解ってるけどさー。でも誰かが嘘吐いたとしてもそれが『嘘』だってことは、嘘発見器みたいなのでもない限り解らなくない? そこはどうやって確かめる気なの?」

「……この際なので正直に言いますけど、わたし、実は嘘を見破る才能が子供の頃からあるんですよ」

「なんと!」

 冗談ですが。

「近代科学よりも自分の才能のほうがそりゃ自信と信頼がありますからね、従ってわたしは嘘発見器なんて使わずとも嘘を見破れるんです!」

「かっけー!」

 もちろんジョークですが。

「つまりこれから言う言葉が『嘘』か『真』か、を見破れるってことだね!」

「その通りです」

 躊躇いの無いからきしの言葉でした。冷や汗が絞られるように滲み出てきます。

 では問題! と、口元をニヤつかせながら出題しました。

「今日の八時ジャストに目が覚めて、タイミングよくやっていた朝の占いで水瓶座が最下位で落ち込んでたら、いつの間にか時間が経ってて一生懸命支度して学校まで走ってきたら何とかギリギリに間に合えた。ちなみに朝食は少し遅めのパンっぽいのだった。――さて、この中にひとつだけ紛れている嘘を見破れ!」

「えーっと、整理するために少しだけ時間を……」

 ――とは言いつつも正直検討が全くつきません。

 ここはもう適当に言って一か八かの神頼みで乗り切るしか他ないでしょう。むしろこの状況で考えるべきは、『心理を読み取る』よりも『外れた場合の言い訳』が先決ですね。

「さあ答えを言ってみるんだ!」

「そ、それはアレですね、『この中にひとつだけ紛れている嘘』の部分ですよ」

 あちゃー……。

 動揺と緊張をしている状態で急かされたことにより、わたしの口は本当に適当なことを言ってしまいました。それでも「これじゃないかな」と思っていたことを言えました。自信なんてものはありません。あるのは「これじゃない」というところです。こちらはもう自信満々で誇るようにしたり顔で言ってあげてもいいくらいですよ。

 ……はい、今の全文を言い換えれば「負けました、全面降伏です」でしょうね。

「………………」

「………………」

 互いが互いを見つめ合い、沈黙が訪れて場に緊張が走ります……主にわたし自身が。

 そして――植木さんはおもむろに口を開きました。


「おお、本当に嘘が見破られちゃった! すげー」


 どうやらピンチは免れたみたいで(神様と直感に感謝!)ホッと胸元をなでおろしましたが、思えば、わたしは晴れて『嘘が見破れる』という高すぎるハードルを今後背負い続けていかなければならないことに気づき、今更ながらに後悔します。

「……さてと、それで本題に戻りますが、先ほどの問いについて返事をお願いしますね」

「仕方ないか、証明されちゃったし。うちが登校してきた後は普通に授業受けて、昼休みが始まってすぐに部室に一回だけ行ったくらいかな」

「何のためにですか?」

「ほらここって色々揃ってるじゃん? だけど今日に限って朝は焦ってたから箸忘れてきちゃって、ここの割り箸取りに来たんだよ。それ以降は放課後まで来てないかな」

「……なるほど」

 ここで七瀬さんの証言との辻褄が合いましたね。本人には言いませんけど、多分植木さんは電気を消し忘れ、それに気づいた七瀬さんがここに来た、と。

「ありがとうございました植木さん」

 さて、最後の容疑者候補を呼びに行きましょうか。


     ☆★☆★☆


「最後はここの部長の佐藤唯さんですね」

「ったく、トランプを一人の状態でどう遊べってんだよ。ケータイ弄ってたからいいけどさ」

 愚痴を言いながら足と腕を組んでパイプ椅子に座っている佐藤さん。態度がデカイ。

 そして三度目ともなり、七瀬さんと植木さんの視線が痛い。果たしてこれは「例のボケはやらないの?」なのか「あれつまらないから絶対に言うな」なのか、曖昧な視線でした。少なくとも、わたしはこの台詞を言うことにあこがれを持っていたりするので、

「佐藤さん」

「なんだ?」

「あなたが犯人だったんで――」

「ちげえよ」

「――すね……あ、違いましたか。それは失礼しました、はい」

 セリフの途中で遮られてしまうというハプニングに見舞われ、わたしは渋々謝罪を入れておきました。さすがの突っ込み担当、反応が早い!

「それでですね、今日一日の行動を教えて頂きたい――と言いたいところですが、わたしたちってクラスが同じでほとんど一緒に行動していたから、あまり訊くことってないんですね……。なので、一点だけ。昼休みが始まって少し経った頃に一〇分くらい席を外していたじゃないですか、それはどうしてたんですか?」

「ああ、あんときか。教科書だよ、まあ問題集なんだけどさ。午後の授業で使う問題集を昨日の部活で忘れてきちまって、仕方がなく出向いたってわけ」

 昨日の部活中、佐藤さんは暇つぶしにと数学の宿題をやっていたので、この証言には嘘はないでしょう。それに五限目は数学。わたしは「なるほど」と相槌を打ちます。

 これらの証言をまとめてみると、昼休み最初に訪れたのは植木さん。次に現れたのは一〇分後に佐藤さん。その佐藤さんか植木さんの後に七瀬さん。最後にわたし。曖昧なまとめではありますが、時間帯がはっきりしない以上これよりも正確な答えは出せません。

 しかし少なくとも割り箸を忘れた植木さんが一番だということは確かでしょう。

「ふうむ」

 七瀬さんの意見を参照させてもらうと、ヒントは数字。つまりこれにヒントが?

 わたしは顎に手を当てて考える像になりきってみました。当然答えなんて思いつかない。

 しかし誰かが嘘を吐いているとしたら、そこから矛盾が生じているはずなのです!

 ……ミステリー小説的に!

 みなさんの表情は実に平然とした振る舞いで、表情からの判断は難しい。だとするとやはり醍醐味である推理で何とかしなければこの『事件』の謎は解決しません。

 それにミステリー小説曰く、答えは言葉だけじゃない、らしいのです。

『言葉だけを見て信じるな、仕草も含めて真実にたどり着け』

 これ、わたしのオリジナル名言だったりします。偉人のような大層な名言なんて凡人には作れるわけもなく、ただただ意味の分からない言葉の出来上がり。スローガンみたいなものですよ。

 佐藤さんの仕草。植木さんの仕草。七瀬さんの仕草。

 すべてをもう一度改めて思い返し、辺りを見回してみます。トランプが。続々と見つかってきた封筒の中身が。五十音が。数字が。

 色々なものが視界に映り込み、そして『あること』に気づかせてくれました。

「ちなみに部室に入ったとき、何か変わった点はありませんでしたか? 小さなことでも何でもよいでの」

 わたしはすぐに行動を実行に移し、鎌を掛けてみます。

 返答次第では犯人特定に大きな一歩を踏み出せるかもしれないのです。

「いや普通だったぞ、別になんともなかったよ(・・・・・・・・・)

 ああ、はいはい。

「謎が解けました」

次が最後になります。5個とか言ってたけど、結局4個で足りてしまった……。

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