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迷宮の歩き方  作者: Dombom
迷宮とは・・・
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迷宮生活19日目その一

末席で一瞬でしたが日間ランキングに返り咲けたようで嬉しかったです。

 どうやらこの星では物事の捉え方が地球とは大きく異なるらしい。

「あなたには、何が見えますか?」

 交代で番をした夜は驚くほど穏やかで、今朝も朝もやの中でぼんやりと光る光の粒が、空気中を漂う雪の欠片の様に舞い踊っている。天井はまだ薄明るいぐらいで、朝霧に満ちた森の中を蛍の様に漂う光の粒は幻想的だった。

 昨日の夜、リフリスは翌朝俺に基礎的な法術を教えてくれると言っていた。さっきの質問は、その法術を学ぶための初歩であり、そして究極的な奥義というやつらしい。観察に始まり観察に終わるということなのだろうか?

「そうだな・・・森と、霧と、この光る粒々ぐらい。」

 リフリスはとりあえずありのままのことを答えてほしいと言っていた。

「後はリフリスか。」

 光る粒は吸い込まれるように漆黒のポシェットやマント、左中指の指輪や罅割れた剣に吸い込まれてゆく。麻の服にまで綿毛のような光るものが吸い込まれていくのは何とも気味が悪い。このよく分からない光が吸い込まれたところで何ともないのだが、包帯を巻いた部分にやたらと集まってくるのは何故だろうか?

 静電気に埃が寄って行くように俺の周りには光の粒が集まって来るが、リフリスの方はと言えばそれほどでもない。リフリスの方で光の粒が集まっているのは、杖とあの水筒ぐらいだ。この綿毛が寄っていくものには何か共通点でもあるのだろうか?

 そうこうしている内に、徐々に天井の光量が増してくる。木漏れ日が霧でできた複雑な光の柱を作り出していた。

「羊さんの見ているものは『世界』ですよ。」

 そう言ってリフリスは俺を見上げた。

「世界?いや、確かにそうだが・・・ちょっと大げさすぎないか?」

 露に濡れた木の葉も、枝に巻きつく蔦も、生えかけの下草も、一つ一つ指摘してゆけばきりがないほどここにはいろいろなものがある。確かに単に『森』と言い切ってしまうのは乱暴だったかも知らない。だが、『世界』と言うには少し大層すぎやしないだろうか?

「木や生き物がただ集まっただけではそれは森とは呼べません。木があって、そこに生き物が暮らしている。森を作っているものは関係性なんです。」

 霧が晴れ出し、徐々に光の粒が減ってゆく森をリフリスは静かに見つめている。そして脇の木に近づき、その幹に手を置いた。

「この世には一つとして同じものは無い。一言で木と言っても、この木はこれ以外に存在しない訳です。」

 確かに、そう言われればそうだ。俺が目にしているものは一つとして同じものはない。

「言葉に騙されないでください。言葉は関係性を切り取って世界を区切ってしまう。言葉は私たちに世界の姿をほんの少ししか伝えてくれないんです。私たちの目にしている世界はもっと豊かなはずです。言葉に切り捨てられたものを見つけてください。」

 木、森、石・・・確かに俺の右の木も、左の木もどちらも木だ。けれど、同じではない。木という分類でくくっているからこそ同じように見えているけれど、本当は両者が同じであるなんてことはありえない。

「この森は、ここにしかない。そして、今この瞬間のこの森は今この瞬間にしかないんです。」

 物事の一つ一つを大切にし、一瞬一瞬をしっかりと捉える。確かにそれが出来れば理想的だ。だが、そう言う捉え方には致命的な欠陥があるように思えた。

「確かに、そうだが・・・それだとキリがないんじゃないか?」

 そう、情報量が多すぎるのだ。砂粒一つ一つにまで気を配っていたらキリがない。木は木として割り切って、石は石として割り切る、関係性を単純化し、一瞬一瞬の微細な変化は無視する。そうしなければ、人はこの膨大な情報を処理しきれないのではないか?

 だからこそ人類は物事の意味だけを抜き出し、情報の圧縮を可能にした「言葉」を発明し、その言葉を足掛かりに「認識」することを学んだのではないだろうか?確かに「言葉」によって単純化され、漂白された世界は、言ってみれば骨組みしか残らない。だけどそれは俺たち人間がこの世界のありのままの姿を捉えるには貧弱すぎるからだ。

 だが、そう懸念する俺をリフリスは否定した。

「いいえ、違います。」

 リフリスは再び俺を見上げた。その姿はどこか堂々としていて、その目には世界の姿がそのまま映っているように思えた。

「世界を、ありのままの世界の姿を見てください。世界を要素に分割して複雑にしているのは羊さん、あなたですよ。」

「・・・」

 そう指摘されると、俺にも気付くところがある。

 確かに一つのものを理解しようと要素に分割すれば、考えやすくはなる。分割すればするほど物事は単純になって理解しやすくはなる。だけれど、その分理解しなければならない要素の数は、物事をかみ砕いた分だけどんどんと増えてゆく。そして要素が多いほど考慮しなければならない関係性は複雑になってしまうのだ。

 人が世界を理解しやすくしようと無意識に要素に分割してしまう行為自体が、世界への理解を阻んでいる?

「確かに物事を詳しく見ようとすれば、一つ一つの要素について突き詰めていくのは重要なことです。だけど、今はもっと世界を全体的に捉えてください。そうすれば、見えるはずです。『世界』が。」

 『世界』か・・・

 世界を捉えるために、見えている世界を分割する必要なんてそもそも無いとしたら?

 木は木ではなく、石は石でなく、森の生き物も、草花も、水も空気もすべてが森という一つのものだ。そして森の果てには草原が広がっている。だけど、どこからが森でどこからが草原なんだ?

 そう考えた時、俺の中で両者の区別がなくなった。どちらも大地の一部に過ぎない。そしてここにあるすべての要素はこの迷宮の一部であり、迷宮はこの星の構造物の一つに過ぎない。そしてこの星もこの宇宙の一部である。今この瞬間は絶え間なく流れる時間の流れの一面であり、宇宙も時も、世界の一部でしかない。

 モノを見るということ、つまりは『世界』を捉えたいならば、ありのままの『世界』をそのまま捉えればいいのだ。そうすれば、関係性だの、時間だの、要素だのといった細々とした雑念に惑わされずに済む。

 そう気付いた時、俺の中でふと、輝く大木の姿がよぎった。

 この世界はその大木の、枝分かれしたその枝の、さらには幾重にも重なった年輪の、その僅かな一つの層にある一個の細胞に過ぎない。次元も時間も全てはこの樹の中に・・・

 気付くと俺は世界樹の枝の上に立っていた。その時枝が揺れ、俺は落ちる。次の瞬間、俺の視界はホワイトアウトした・・・


「羊さん?羊さんってば!」

「うっ?!あ・・・ああ。」

 ふと気が付けば、不安そうな顔をしたリフリスが俺のマントを引っ張って揺すっていた。白く硬化した傷が焼けるような痛みを発していた。にも拘らず、俺の頭はボーっとしてしまってその痛みをうまく認識できていなかったらしい。

「大丈夫ですか?」

 我に返った瞬間から右半身を焼く痛みは嘘のように冷めてしまった。ほんの数秒の内に、痛みなどそもそも無かったかのように辛さが引いている。今の痛みは一体何だったんだろうか?俺はリフリスを心配させまいと、無意識に肘から下のない右腕を掴んでいた左手を引っ込めた。

「・・・ああ。いや、大したことは無い。」

 そう答えると、リフリスはよかったと、ほっと胸をなでおろした。

「急に呼んでも答えてくれなくなっちゃって、どうしたのかと思いましたよ。」

「ちょっと熱中しすぎていたみたいだ。心配させて済まなかったな。」

 そうリフリスに、俺は答えて笑う。リフリスは俺に笑い返して、すっかり朝霧が晴れた森の方を見つめた。

「あなたには、何が見えますか?」

 そう再び問いかけてきたリフリスに俺は答えた。

 目を閉じ、深呼吸をして、再び目の前に広がる森を見る。

 すると、さっきまでとは大違いだった。同じものを見ているはずなのに、全く別物の世界が俺の眼前に広がっていた。

 木々は青々とした葉をそよがせ、草はなびき、石は複雑な模様を描いてそこに佇んでいる。虫たちは草の間を飛び、蟻が木の幹の苔むした樹皮の間を歩いている。全てがバラバラで、それでいて相互に影響しあっている。それは紛れもなくどこまでも続く一つの存在の一面だった。

 どれ一つとして分けることの出来ない、そして豊かな存在が俺の目の前にはあった。

「とても言葉じゃ表現できないな。」

 俺はそう答えて笑う。リフリスは一歩前に踏み出し、くるりと俺の方を振り返った。

「上出来です!これでやっと入り口に立てましたね!」

 入り口・・・か。どうやら法術って奴はさくっと覚えられるほど浅いものでもないらしい。まだまだ先が長そうだ。おめでとうと手を取るリフリスに、俺は苦笑いしながらやれやれとため息をついた。


「世界にあるすべてのモノは存在したり、生きているだけもお互いに関連して影響し合っているんです。」

「ということは、俺も多少なりとも世界に影響を与えているってことだな。」

 そう答える俺に、リフリスは頷いた。

「そうなんですよ。そこで、世界への影響を一種の力としてとらえたのが『理力』で、その影響が世界に伝わって、結果にまで至ることを『法術』って呼ぶんです。」

 生物は生きているだけで世界に影響を及ぼす。どうやらさっき見えていた光る粒は、この森に棲む生き物の息吹ともいうべきもので、余剰の『理力』が起こす自然現象のような物らしい。

「なるほどな。まあ話の筋は通っているが、俺が世界に与える程度の影響力でリフリスが使ってたような強力な術が出るのか?世界に比べたら俺の存在なんて微々たるものだろう?」

 法術なんて言うものとは無縁の世界で生きていた俺にとっては、いまいち自分の存在が世界に影響を与えるということが実感できない。エネルギー保存だとか言い出したら、法術は明らかに収支がおかしいように見えた。

「ですから、そのために『世界』を見る必要があるんですよ。」

 『世界』を見る?さっきやってたやつだな。だが、世界全体を捉えることが出来たとして、それがどう法術につながるんだろうか?

「影響は世界に伝わるって言いましたよね?」

「ああ。そうらしいな。」

「じゃあ、見ていてください。」

 そう言って立ち上がったリフリスは手近にあった小石を二つとった。そして数メートル先に転がっている折れた木の幹を指差した。

「例えばこの石を直接投げたところで、あの折れた木は動きません。」

 ひょいっと投げた小石がコン!と軽い音を立てて大きな枯枝に当たった。だが、それだけだ。岩に引っかかっている枯枝はピクリとも動かない。

「ですが、こうすると・・・」

 リフリスは同じぐらいの小石を枯枝の上に向かって投げた。小石はガサリと音を立てて近くの木の葉の間に消え、そしてその木を付き抜けて向こう側へ飛んで行ってしまった。

「おいおい、大暴投じゃないか。」

「ふふふ。まあ、見ていてください。」

 頭を傾げる俺に対して、リフリスは自信満々だ。数秒経ち、何も起こらないのではと思った頃、不意に樹冠が揺れた。ガサガサッ!と、何か黒い塊が木の葉を散らしながら、枝を揺らして落ちてくる。

「おいおい、まさか。信じられん!」

 枝から落ちてきたのは、一抱えもありそうなオレンジと黒のくすんだ縞模様の鼠のような生き物だった。どうやらリフリスが投げた石に驚いて枝から落ちてしまったらしい。そのネズミは体を丸め、ボールの様になって岩に寄りかかっていた枝の上に落ちてきた。

「キュッ!」

 と一声、大鼠が鳴いた。小石が当たってもピクリともしなかった大きな枝が宙を舞う。木の枝は落ちてきた鼠の衝撃で投石機の腕の様に、あるいは軸の壊れたシーソーの様に大きく回って宙に飛び出した。

「おお!すげぇ。狙ってたのか?」

 ものさし遊びとか小枝飛ばしみたいだな・・・そう感心しながら俺が下を見ると、自信満々に俺を見上げているリフリスと目が合った。

「ええ。当然です。羊さんも『見えていた』んじゃないですか?」

「ああ、まあな。不思議なものだが。」

 落ちてきた大鼠は、俺たちの姿を見るとさっと茂みの中へ逃げてしまった。だが、それも俺には見えている。奇妙なことだが、逃げ去った鼠の姿は見えなくなってしまったが、その歩いた跡が手に取るようにわかる。大鼠が辺りに与えた影響が、まるで水面を行く船の波紋のように辺りに広がってゆくのが分かるのだ。そしてその影響が行く先も。

 確かに俺にはリフリスが言うように、大鼠が驚いて樹を揺らした時には、あの枝が飛ぶという結果が見えていた。『世界』が見えていれば、どこに力が宿っているかが分かり、その結果もある程度予想がつくらしい。

「どうです?元の力は弱くっても、『世界』が見えていれば大きな力を引き出せるんです。」

 なるほど・・・足りないエネルギーは外部から補えばいいという発想なんだなと俺は納得した。

「法術も、今のと似た原理ってことか。」

「ええ。ただ、複雑さは今のとは比べ物にはなりませんけどね。一般的にはこの杖のような『法具』が必要ですね。あっ!それに、高位生物はその体自体が『術式』になっていることが多いんです。羊さんの衣装が貴重だっていうのはそういう意味が大きいですね。」

 なるほど、あのキラキラ光る森の息吹が可視化した『理力』の塊なのだとしたら、リフリスの杖や水筒、俺のでは包帯とか衣服、毛皮のマントに吸い寄せられてゆくのも納得がいく。

 ということは俺の剣や指輪もある種の『法具』ということだろうか?

 『理力』に『術式』か・・・教育番組で転がしたボールが次々と機械を動かすピタゴラスの名を持ったルーブ・ゴールドバーグ・マシンの姿が俺の脳裏に浮かぶ。うまく力を増幅していくことで、高威力の術が発動するという訳か。『法術』は俺が思っていた以上に高等で複雑そうだ。


「それじゃあ俺にはリフリスが使ってたような術はまだまだ無理そうだな。」

「まあ、こればかりは鍛錬と繰り返しの練習しかないですからね。それに、おいそれと使われてしまっては何年も修行した私の立つ瀬がありませんし。」

「まあ、それもそうだな。俺は俺で身の丈に合った術で十分だ。」

 とにかく当面は、俺がペトリャスカから受け継いだあのポシェットを『開錠』できればそれでいいか。リフリスが使ってたような光弾の術に憧れがなかったと言えば嘘になるが、こればかりはどうしようもないらしい。とにかく俺は法術に関してはド素人どころか超初心者なのだ。幼いとは言え何年も鍛錬しているリフリスの域はまだまだ遠いな。

 そうがっかりしている俺に、リフリスは笑いながら話す。

「ふふっ!何をおっしゃいますやら。」

「なんだ?」

 リフリスはほら!ほら!と意気消沈している俺の脇腹を小突く。

「羊さんのあの格闘術、あれはもはや『法術』の域に達していますよ。」

 俺の・・・って言えばああ。あの緑色の気持ちの悪い小人を投げ飛ばしたあれか?あれはベクトルとか螺旋運動とか重心系の産物なんだが、そう言われればそうかもしれない。

「あー。確かに、力とか影響の連鎖が『法術』だっていうならそれもありなのか?っていうかそんなこと言い出したら法術ってものすごく広いものにならないか?」

 一つの物事を分解して真理を求める科学と、一つの物事をありのまま捉えようとする『法術』。一見相反しているようだが、アプローチの仕方が違うだけで究極的なゴールは同じところにあるようだ。

「おわかりいただけた様で何よりです。」

 どうだとばかりに胸を張るリフリスに、参ったなと俺は頭を掻いた。どうやら『法術』っていうのは「技術」の域を超えたある種の「科学」であるらしかった。

「それに、本当に『世界』が見えている人は『真理』まで見ることが出来るらしいです。」

「ん?そういえば確かに『真理が見える人』がどうのこうのとか言ってたな?確かそいつらなら俺の着ているものの価値が分かるとかどうとか。」

 そう聞く俺に、リフリスは「ええ。」と答えて肯定した。

「その、『真理』とやらが見えていたらどうなるんだ?何かすごい術が使えたりするのか?」

「そうなんですよ。話でしか聞いたことはありませんが、『真理』が見えている人はほとんど無意識的に『法術』が使えるらしいんです。それこそ体を動かしたり、息をするような程度の感覚で。」

「うわ・・・それは反則臭いな。」

 できればそういうような奴とは敵対したくはないな。こっちが必死になって練習したものをさらっと使われたら自信を無くしかねん。

「ええ。ですが、『真理を見るモノ』達はそう珍しいものでもないんですよ。」

「というと?」

 と、俺が問うと

「所謂高位生物とかがそれに当たりますね。その中でも有名なのが龍族ですよ。」

 と、リフリスが返した。

 龍か・・・俺がこれまで見てきたのはあの馬鹿でかい火山のような赤い龍、あの地下湖の底に潜んで、馬鹿でかい鮫を丸呑みにした蒼い水竜、そして洞窟で俺をぼこぼこにしてくれたあのやたらと硬くて剛力の黒い鎧竜か。

「龍っていうとあれだよな。こう硬い鱗があって全身とげとげしてて力強くて。」

 そう答えると、リフリスは少し頭を傾げる。どうやら俺とリフリスの間で、龍に対して認識の相違があるらしい。

「うーん。それはちょっと一般的ではないかもしれません。龍と言えば世間では竜鳥族ですから。」

 竜鳥?うーん。言葉だけで言われてもいまいちピンとこないな。

「よくは分からんが、とにかく龍か・・・龍の使う『法術』っていうのは実際どうなんだ?」

 もう会いたくはないが、あの龍たちの強さの秘密がその強靭な肉体だけでなく、『法術』にもあるのだとしたら?どんな術を使っているのか分かれば、倒すには至らなくとも、前みたいに毎回ボロボロにならずに逃げおおせるかもしれない。

「龍に限らず高位生物の法術はそれはそれは強力ですよ?竜鳥族以上の『法術』を使える人はほとんどいませんし、かく言うこの迷宮も、伝説とまで言われた真龍族の『法術』で出来ていると言われていますから。」

 っとそう来たか。

「それは・・・壮大な話だな。」

 はぁ・・・とため息をついた俺は辺りを見回した。この迷宮自体が『法術』による産物なのだとしたら、これを作った龍には一体何が見えていたのだろうか?逆に見えすぎてしまって日常生活がつまらないのかもしれないな。

「ええ。この迷宮の主はそれはそれは巨大な龍で、山をも踏みつぶせるほどらしいんですよ。でもまあ、それもあくまでも噂、おとぎ話に過ぎないですけどね。ここ数百年で見たという人も記録もありませんし。」

 それはそれは巨大な龍・・・そういえばあの耳長美人さんのところにあった祭壇、あそこの彫刻は巨大な龍の頭だった。なるほど、これで合点がいった。

 つまりはこの迷宮の主があの祭壇に祭られていた彫刻のモチーフの巨大龍だったわけだ。で、あそこにいた彼女はその真龍の、ひいてはこの迷宮全体の巫女さんだったと。

 そりゃあこれだけの超巨大構造物を作り出せる龍は神として崇めて当然か。

「・・・俺、その龍に会ったことがあるかも。」

 そして俺にはその巨大龍について心当たりがあった。

「へー。それは・・・って!!本当ですか!!」

「ああ。多分。」

 驚いて腰を抜かしそうになっているリフリスをよそに、俺はついぞ忘れていたこの迷宮に来た初めの数日のことを思い出していた。

 この迷宮はあの白い火炎を吐く赤い巨大龍が作ったとして・・・なぜあの龍や金の大猪の親玉たちが「俺」に襲いかかってきたのだろう。こんな取るに足らないちっぽけな俺に、一体なぜ・・・?

日 日立ヒ

十月J   ノ三


称号

「????」「怪獣大進撃」「大蜂・大狼・大カブト・鳳・大軍百足殺し」「悪運」「食わせ物」「大番狂わせ」「樹海の匠」「魔弓の射手」「敵の敵は味方」「受け継ぐ者」「死神」「冒険者」「陽炎の忍」「不死鳥」「泰山不動」「覚り」「武芸者」「剣士」「磁石いらず」「博愛主義」「導師」


「法術入門者」:ありのままの世界を捉え、活用するすべを知った


新規遭遇生物

 「大縞鼠」


アイテム

大猪の牙 火起こし機 水筒 海淵の指輪+ 意思読みの首飾り 返話の指輪 刻雷竜のアイテムボックス(謎の試験管 識別票 その他不明) ねたつく古びたポシェット(識別票x8 託宣紙x9)


装備品

麻の衣服 包帯 錆び罅割れた装飾剣 龍爪ナイフ 金猪のマント 革の小手 猪肋弓 魔の矢(狼牙+虹の羽)x2 ひび割れた羊の兜 金猪の足袋

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