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迷宮の歩き方  作者: Dombom
無様でもいい。生き延びろ。
5/70

迷宮生活4日目その一

うう・・・腹痛い。


 昨日の夕飯であの大カブトの肉も喰ったのだが、正直言ってあれは不味かった。蜂が海老みたいに美味かったから、きっとカブトもうまいのだろうと油断していた。あれは何と言っていいのだろうか・・・無味無臭なんだけど風味がゲロだった。

 「生き物に感謝」なんて安っぽい標語を立てたのがいけなかったな。何とか一口目は飲みこんで、残りは全部燃やしたんだが、一口目も燃やせばよかった。

 そういう訳で今日は残り少ない赤小梨を食いつぶしつつ、木の上で大カブトの甲殻と大蜂の殻を使って静かに鎧作りに専念している。

 大カブトはやはり馬鹿でかいだけあって、たくさんの殻が取れた。仕留める時に腹側の殻を貫いたとはいえ、残りの部分でも鎧を作るには十分だった。

 腹側の殻は俺が猪牙槍で貫いたように大カブトの中では一番弱いとは言え、石を真っ二つに出来る龍鱗剣でも傷がつかないほどの強度がある。大カブトの前羽は堅すぎて龍爪ナイフでは加工が難しいし、何より重すぎる。丸ごと背負う訳にはいかない。

 そういうわけで今回作る鎧は大カブトの腹側の殻がメインだ。


 俺は前羽の比較的湾曲が弱い部分を大狼の牙で地道に削って切り出し、鎧の補強と焼け野原で襲われたときに狼の牙で傷ついた龍鱗盾の補強に使った。

 前羽の残った湾曲の強い部分は使いどころに悩んだが、結局肩当にすることにした。後の残りと大蜂の殻で手足のプロテクターを作ると、黒づくめのちょっとした特殊部隊の隊員みたいに見える。

「ウホッ!俺ってやっぱ物づくりの才能があるんじゃね?ってお腹いてぇ・・・」

 ただ、鎧同士を留めているのが枯れたツタってところが今一気に食わないが。

 あと、カブトムシの兜はでかくて重くて動きづらかったから外した。あの角の使い道は今一分からん。固すぎて加工には向かないし、かといって棍棒みたいに武器として使えるかと言えばそうでもない。ロープのフック代わりになる足の鉤爪の方がよっぽど有用だ。どっちかっていうとロマン装備だな。


 木を降り、適当なところまでいった俺は膝を抱えている。

「やっぱカブトの肉のせいだけじゃねーよな・・・よく見たらあちこち結構虫刺されとかあるし。変な熱病とかマラリアとか寄生虫とか大丈夫だよな?」

 RPGだと病気や毒にかかるのは戦闘での相手のスキルだったり、ダンジョンのトラップのせいだったりするわけだが、この森は正に森。俺に対して容赦はない。

「これが自然か・・・クッ!」

 ぐぎゅるるるる!と、今まで立てたことのない咆哮を上げてのた打ち回る俺の大腸に、俺は忘れていた、というより忘れようとしていたこの原生林での暮らしの辛さを改めて痛感していた。

「都会はコンクリートジャングルって言ってたけど、あんなとこ屁でも無いね。ここと違って屁なんかでないじゃんん!っ痛うー!!」

 ブボボ!(不適切表現により以下略)


「・・・辛い。日本に帰りたい。」


 普通異世界物のゲームや小説だったらその日か次の日ぐらいには、チュートリアル的なことをしてくれる美人さんが現れてくれるはずなのに、こっちは金の大猪に山みたいな燃える龍、乙事主様に、スズメバチLv.100、紅いモロの眷属に、カブトーンキングだしな・・・終いにはマンティコアでも出てきそうだ。

 最後のポケットティッシュを使ってしまった俺は、痛い腹を抱えながら龍鱗剣で掘った穴を埋めた。きっとあの巨大な龍も、よもや自分の鱗が排泄物処理の穴掘りに使われるとは思っていなかっただろう。

 だが、現実には生き物は排泄ぐらいするのだ。この世界にエルフのぼいんの美人のねーちゃんがいるかもしれないが、きっと彼女も・・・やめとこ。なんかこういう話の古典があった気がするし。

 とにかく俺は今、大絶賛腹痛中だ。さっさと体調と装備を整え、落とした鞄を回収して中のスコッピアを確保しなければ。


 帰り際に湧水を啜り、木に登って一息ついた俺は拾ってきた大猪の肋骨の端と真ん中を削り、蔦を張ってみた。ついでに削った木の枝の先に大狼の牙を据える。狼の牙は鎧作りで大分駄目にしてしまったので、作った矢は5本だ。

 適当に作った割にはなかなかいい感じじゃないかと、木の上で猪の肋骨で出来た弓を構える。

「・・・固くて引けねぇ。」

 ちょっと舐めてた。矢をつがえてそれっぽく引いてみたが、うんともすんとも言わない。そして弦に張った枯れたツタが地味に丈夫だ。そういえば猪牙槍に使った木も適当に拾ったものなのになかなか頑丈だ。不思議。

「はあ・・・いくぞ!」

 今度は思い切って全霊の力で引き絞る。とりあえず矢が飛べばそれでいい。筋力とかはこれから付けて行こう。

「うらあ!」

 びぃん!と鋭い音とともに弦が鳴り、背筋が寒くなるような風切り音を立てて矢があらぬ方向へ飛んでゆく。それはそうだ。あの矢には安定させるための羽がついていないし、そもそも使った木の枝は真っ直ぐじゃない。狼の牙もそのままだしな。

「痛って!」

 そういえば弓道部員は手袋みたいなのしてたなと今更思い出した俺は、飛んで行った矢が擦れて皮がむけた左手を抑えた。

 シクシク痛む擦り傷に、手袋も作らなければいけないなと思っていたその時だった。


「んメエエエエエエ!」と、森の中に唐突に悲鳴が響き渡る。


・・・もしかして。当たっちゃった?



適当に放ったあれが?

称号

「????」「理不尽の代償」「豪胆」「怪獣大進撃」「大蜂殺し」「食わせ物」「大狼殺し」「大番狂わせ」「一撃必殺」「大カブト殺し」「生存者」


「樹海の匠」:樹海にあるものでたくさん物を作った。

「ヘタレ」:文字通り。


遭遇生物

「?」


アイテム


大猪の毛皮 3枚


装備品


龍鱗盾+ 龍鱗剣 龍爪ナイフx2 猪牙槍 甲殻の鎧 猪肋弓 狼牙矢x5

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