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迷宮の歩き方  作者: Dombom
深淵はかくも無常/無情なりき
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迷宮生活7日目その二

だれだ?こいつは?


美しく立派だが、動きを邪魔しないような白い鎧に身を包んだ金髪碧眼の男が立っている。腹が立つほど美形だ。


その男は何者かと剣戟を交わしている。


その男の剣捌きは、紛うことなき達人の域に達している。、


だが、相手は複数人だろうか?10本近くの剣が男に向けられ、そのどれもが男と同じかそれ以上の太刀筋で男に襲いかかっていた。


敵の方は、恐ろしいほどに連携が取れている。交互に同時に5つの刃が男に襲いかかるのだ。いくら最高の装備に身を包んだ達人と言えども、勝ち目は全くなかった。


だが、男は諦めない。


しかし、無謀なものは無謀なのだ。数瞬もしない内に男は湾曲した刃に貫かれ、その白い肌を血に染める。


その刃は、俺の腕から生えていた。




「冷たっ」


俺の顔に天井から降った水滴が当たった。


「ん?ここは・・・そうだったな。」


あのまま寝てしまったらしい。あの巨大すぎる熊に追い立てられて、金猪が乱入しそうになって・・・。命からがらここに逃げ込んだんだっけか。


ふと見た俺の時計は4時を指していた。日付は同じだ。どうやら14時間ほど寝てしまっていたらしい。


「んっっく!」


と、伸びをすると、体の節々が凝り固まっていたのだろう。ゴキゴキと鈍い音を立てた。




さて、これからどうするか・・・


扉を開けて樹海に戻るか?


いや、とにかく今はこっちの安全を確認しよう。あまりにも疲れすぎて眠ってしまったが、こっちが安全だという保証はない。樹海側で待ち伏せされてるかもしれないしな。


未だにだるい体に鞭打って、俺は立ち上がった。全身に付いた新しい傷はまた白くなって治っていた。黄色い肌のあちこちに白いラインが走っている。このままいけばチェック模様になってしまいそうだ。




「こっちの壁は・・・唯の岩っぽいな。ところどころ光ってるけど。」


感じとしては、天空の城の空飛ぶ石を採っていた坑道跡が一番近いか?そうなると俺は坑道の中で何年も暮らしているおじいさんか・・・


「樹海からは出られたんだ。この洞窟からだって出られるさ。」


その為にはとにかくこの部屋の池というか、湖を抜けなければならないだろう。その向こうに道があるかどうかは別として。


俺としては道が湖の中にあるなんてことは遠慮したい。




岩は所々光っているが、別に光る苔とかが生えているわけではない。そして、それとは別に湖の水もやや淡く光っている。発光バクテリアでもいるのだろうか?そのせいで水の奥は窺い知ることが出来ないし、俺は光っている水なんて飲みたくはないな。


俺は湖の端っこのわずかな陸地を歩いて回る。天井の鍾乳石と同じぐらい年季の入った石筍が乱立しているだけで、陸地には何もない。水面も見る限り特に何の変化もないな。これならば泳いで渡れそうだが・・・


「樹海があの状態じゃ油断なんてできないよな。」


淡く光る湖に石でも投げ込んでみるか?と、考えた時、ぼちゃぼちゃと音を立てて天井から降ってきた何かが湖に落ちて行った。


「何だ?」


その何かは天井に空いた亀裂から次々に落ちて来ては淡く輝く水面に、複雑な波紋を描いてゆく。


波だった水面は急に光を増し、天井から落ちてきた数多くの物体を照らした。




「百足か・・・」


天井から次々と落ちてきたのはジャンボサイズのムカデだった。だが、大蜂に比べればまだ「良心的な」大きさだし、その足をうぞうぞと動かして水面を必死に泳ごうとする姿など哀れにすら見えた。


十数匹の巨大なムカデは必死に岸まで泳ごうとしている。まるで本能的に何かから逃れようとするように。




次の瞬間、水面が隆起し、割れた。


いや、水面が割れたというのは俺の目の錯覚だ。光量を増して、蛍光灯のようになった水面から現れたのは巨大な鮫だった。


その鮫はさながら海を泳ぐ魚を丸呑みしてゆく鯨のように、大口を開けて巨大なムカデを丸呑みしてゆく。


ごりごりパキパキと大ムカデの殻が砕かれ、肉を引きちぎる音がする。




大ムカデの落下で始まった水面の発光は、大ムカデを食らう巨大な鮫の登場でさらに刺激されていた。まるで湖の真ん中にスポットライトを当てたようだ。


断続的に続いていた大ムカデの落下が終わった時には、十匹以上の巨大な鮫が数えきれないほどの大ムカデをその胃袋に収めていた。


水面に飛び散った大ムカデの体液を(すする)ように、発光した水面が渦巻いてゆく。




ふと大ムカデを貪っていた鮫たちは、数分前の大ムカデがそうだったように、何かに怯えるように不意に散り始めた。


大森林同様、この洞窟の底の湖にも弱肉強食の掟は例外なく適応されるようだった。


突然一匹の巨鮫がもがき出したかと思うと、どぷんと一瞬の内に水中に引き摺りこまれた。湖の白い輝きは瞬く間に赤く染まり、再び巨鮫の顔が水面に浮かんだ時、そこに胴体は付いてはいなかった。




「・・・」


えらいもん見ちまったな。


「これは泳いだりしたら、いくら命があっても足らなさそうだ。」


前に泳いだのはいつだったか?高校の時の遠泳か?あの時は足が一瞬脱臼しかけて溺れかけたっけ・・・止めとこう。


あんなのがいるんじゃ筏とかも多分無理だな。


「どうすりゃいいんだ。」


水に触れずに向こうまで行く。こっちの壁は樹海の壁より普通の岩っぽいが、楔を打ち込んで進むなんてことは危険が多すぎる。いっそのこと鮫の数でも数えるふりをして渡るか?




「どうやって渡るかは後で考えよう。」


とにかく今は安全な水と食料を確保したい。


あんな目に会った癖に我ながら懲りないやつだとは思うが、こればかりは仕方がない。


泉の近くの塒を失った今、水はここの池の水を飲まなければならないだろう。出来れば蒸留したいところだ。食べ物は木の実か、もしかしたら昨日の大猪の何頭かはあの巨熊に殺されているかもしれない。


だがどっちにしても、扉の向こうには長居は無用だ。




俺はそっと扉に手を触れ、天井まで続く装飾を目で辿って行った。


早間龍彦


称号

「????」「怪獣大進撃」「大蜂殺し」「食わせ物」「大狼殺し」「大番狂わせ」「一撃必殺」「大カブト殺し」「樹海の匠」「おおとり殺し」「魔弓の射手」「必中」「冷静沈着」「影無き追跡者」「悪運」「鉄人」「敵の敵は味方」


「喉元過ぎれば」:大変な目に会っても受け流し、心に負担を掛けない能天気さ


遭遇生物

「洗礼の 大挙する 大毒ムカデ」

「水底潜む 大歯の 巨鮫」

「?」


アイテム

大猪の毛皮 大猪の牙 火起こし機 鉤爪ロープ 宝石? 鉱石?


装備品

龍爪ナイフ 甲殻の鎧+ 革の小手+ 猪肋弓 魔の矢(狼牙+虹の羽)x5 大羊の兜 毛皮の足袋

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