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第三話「例外の魔法少女」

 魔法少女とは、魔法を使って人命救助やドール討伐をする人のことを指す。じゃあ、魔法は使えるのに戦えない私はなんなのか。人を救えないのに価値があると言われた私は何者なのだろうか。

 例外とは、その分類に入っているにも関わらず、分類内に共通する性質を持たないことを指す。私は例外なのかもしれない。魔法少女という分類の中の、例外。

「やっほー! ちょっと頼みたいことがあるんだけど〜」

 突然、研究室の扉がバンと開いた。何事かと音がしたほうへと視線を向けると、天才なのか馬鹿なのか分からない先輩魔法少女のアリアさんがいた。

「なんですか? 遊びに来たのなら帰って……」

「ドール倒したらさ〜、内臓みたいなのが出てきたんだよね〜! 調べてくれない?」

 私が言い終わる前に、被せて発言する。そして何とも形容しがたい臓器のようなものを眼前に差し出してきた。

「なんですかコレ……ドールを倒した後、ということはドールマスターに関係ありそうですね。分かりました、こちらで調べてみます」

 アリアさんの顔が光に満ちる。けど、私はまだ大事なことを言っていない。

「……司令への報告も、忘れずに」

 一応釘をさしておく。アリアさんが報告を忘れたら、私が怒られる可能性があるからだ。

「うぇ~、報告かぁ……分かったよ。その代わり、結果をいちばん早く教えてね!」

 そう言って慌ただしく去っていった。相変わらず嵐のような人だ。あの人が成績一位を独占しているなんて、誰が信じるだろうか。

「……私も、仕事しますか」

 生温い臓器のようなものに触れる。微かに動いていて、まだ呼吸していることが分かる。

 性質、そして記憶の解析を開始する。


 魔法は、人間に寄生している。授かるものではなく、魔法に選ばれるもの。そして魔法は、宿主の特性によって姿を変える。例えば、アリアさんの【自身に向けられた全ての音を魔法に変換する】魔法。例えば、アリアさんのバディであるフェルマータさんの【対象の動きを一定時間止める】魔法。……例えば、私の【触れたものの性質・記憶を解析する】魔法。

 魔法が内面を映すのなら、どんな魔法かが分かればその人の特徴や弱点が分かる。私たちの役目はドールマスターを倒すこと。もしこの臓器がドールマスターのものなら、倒すための手がかりになる。

「反応なし……少なくともドールマスターのものってことは確定かな」

 しばらく触っていたが、特に大きな情報は得られなかった。分かったことは、持ち主がドールマスターであること、この臓器自体が魔法の塊であることだけだった。

 

 諦めて報告書を作成していると、小さなノイズのような音が聞こえた。ノイズはやがて声となり、叫びとなる。

「さみシィ……独リはいやダ……」

 幼さが残る、子供の声。臓器から聞こえた痛々しい叫び。でもその叫びはすぐに聞こえなくなってしまった。

「さっきの声は……ドールマスター?」

 いや、違うだろう。すぐに頭の中で否定する。だって、ドールマスターがこの世に現れて二十年経っている。子供なわけがない。もし子供だとして、こんな大災害を起こせる可能性はゼロに近い。

 ……魔法は内面を映すもの。あの臓器はドールマスターのものだった。もしかしたら……と、非現実的な想像をしてしまう。いや、こんなことはありえない。絶対に。

 そう結論付けて、報告書の作成に戻る。ピタリと、ペンを走らせていた手が止まる。

 『備考』

 子供の声のことを書くか迷う。けど、そんな迷いは無駄だったことを思い出す。この部屋にはいくつかカメラがついている。もし声のことを隠せば、私の評価が落ちてしまう。

 ここは一切の反抗を許さない。少しでも反抗すればすぐに処分されてしまう。

 郷に行っては郷に従え。ここに来てしまったからには、私はここのルールに従う。

 『不審な声が聞こえたが、危険性は低い』

 そう記入して、ペンを置く。小さく伸びをして提出しに行く。


 例外に選択肢など、最初からないのだ。

 

         ――ナンバー03 魔法少女エチュード

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