第一話「素晴らしき魔法少女」
この物語はフィクションです。実際の市とは関係ありません。
『三ツ橋市倉川町でドール出現。手の空いている魔法少女は直ぐに現場へ。ドールの数が断定できないため、不必要な戦闘はせずに住民の避難を優先しろ』
耳元の通信機から司令官の声が聞こえる。三ツ橋市……ここから五分くらい。飛ばせば三分も経たずに着く。よし、行こう!
「ナンバー01、向かいまーす!」
そう言った時にはもう、足が動いていた。
上空から三ツ橋市を見下ろす。ドールの数は……二百はゆうに超えているだろう。先に避難を開始している魔法少女が五人ほどいるのが見えた。
五人もいるなら十分だろうし……避難はまあ、大丈夫でしょ! ドールを片付けたほうが良いよね! うん、そうに決まってる!
「ちょっ、先輩?!」
下から可愛い後輩の声が聞こえてくる。あたしに向けられたその声を魔法に変換して、ドールに銃口を向ける。魔法タンクは満タン! これなら一気に蹴散らせる!
「ばいばーい、次は人間として会おうね!」
直後、ドオンと爆音が響く。その音をまた魔法に変換して、もう一発放つ。ドールが次々に吹き飛ばされていく。それがなんだか面白くて、笑顔で銃を構える。
ああ、魔法少女になって良かった!
「何回言ったら規律が守れるようになるんだ? 何年魔法少女をやってる?」
いつも怖い顔の司令が、さらにこわーい顔をしている。大したことやってないんだけどなぁ。この後反省室行きかな? あそこ暗くて嫌なんだよねぇ。
「……規律ガイドブックの第五条を読んでみろ」
そう言って、可愛さの欠片もない規律ガイドブックを差し出してきた。ご丁寧に第五条のページが開かれてある。
「えーっと、どれどれ? コホン。あー、『第五条、ドールの数が断定できない場合の対応について……断定できないとき、不測の事態に備え、魔法力の消耗を抑えることが最優先。よって、不必要な戦闘は避けること』……ですか?」
他にも細かいことが書かれていたが、まあ特に重要そうでもないから良いか。
「……続けて、第二条のところを読んでみろ」
まるで三分クッキングのように、どこからかページが開かれてある規律ガイドブックを一冊取り出してきた。
「えー、『第二条、ドール出現地が住宅地だった場合の対応について……魔法少女は住民の避難を最優先とし、戦闘よりも避難を先に行うこと』」
そこまで読むと、あからさまに司令の機嫌が悪くなった。
「なぜ、これらが守れない?」
バンと机を叩いて、泣く子も黙る眼光で睨んでくる。
お説教嫌だなぁ。司令の話、いっつも長いんだもん。この間は三時間も説教されたし。聞く気になんてとてもじゃないけどなれないよ。
お気に入りの魔法銃をいじっていると、司令が大きなため息をついた。
「はぁ……原稿用紙五枚に反省文を書いて提出しろ」
「はぁーい」
もらった原稿用紙を雑にまとめて抱える。両手が塞がっているので、足でドアを蹴って開ける。もちろん閉めない。後からまたため息が聞こえた気がするけど、まあ空耳だろう。
気分転換に外に出ると、倉川町の人々が押し寄せてきた。
「ありがとうございます!」
「あなたは命の恩人だ!」
「助かった!」
口々に感謝を述べる人々を見て、曇っていた表情がぱっと明るくなる。ついでに原稿用紙を破り、ファンサと称して紙をばらまく。アイドルよろしく必死に紙を拾おうとする人々を見て、さらに笑顔になる。
「本当に?あたしすごい?」
「もちろんです!」
即答されて、嬉しさが限界を迎える。これ以上ないくらいの満面の笑みを浮かべる。
「あなた様は素晴らしき魔法少女です!」
周囲の人々もそれに賛同し、何故か胴上げが始まった。きゃははと子供のような笑い声をあげる魔法少女と、その声にあわせさらに高くあげる人々。
「あたしは、素晴らしき魔法少女なんだ!」
――ナンバー01 魔法少女アリア




