雪だるまの思い出
朝起きると、胸がソワソワした。
天井を見上げたまま、白い息を吐く。
いつも聞こえるはずの車の走行音がしない、独特の静寂。
この感覚には、覚えがあった。
今日は休日。
いつもなら時計をチラリと見て、二度寝するところ。
でもその日は、胸の内側から溢れる期待が、私の体を動かした。
シャー、と、勢いよくカーテンを開ける。
そこには、期待通りの銀世界が広がっていた。
天気予報は見てない。
誰かに教えられた訳でもない。
でも何故か、雪が積もっている日は、朝起きた時点で、雪が積もっていると分かるのだ。
私はソワソワをワクワクに変えて、暖かい服に着替えた。
この地域は雪があまり降らないというわけでもなければ、豪雪地帯というわけでもない。
積もるほど降るかどうかはさておき、毎年どこかで一日くらいは雪が降る。
そして私は、雪が積もる年は、決まって一回は雪だるまを作る。
ふぅ、と、外に出てから吐いた息は、部屋の中よりも白かった。
でも、それよりも白い庭の景色に胸が高鳴り、寒さはあまり気にならなかった。
私はいつも通り雪だるまを作り始める。
まずは小さな雪玉をギュッと握り、その雪玉の周りにペタペタと雪を貼り付けていく。
雪玉がある程度の大きさになったら、コロコロと転がし始める。
体は自分の膝丈くらい。
頭はそれよりも一回り小さいくらい。
もう作り慣れたもので、綺麗な丸を崩すことなく乗せることができた。
こうして雪だるまを作っていると、やっぱり頭に浮かんでくるのは、あの日の思い出。
初恋のあの人は、雪だるまを作っている私を見つけると、寒そうだと言って自分が被っていたニットの帽子を被せてくれた。
私じゃなくて、雪だるまに。
それを見た私は彼に、少し怒って、それから笑った。
それが、私の冬の思い出。
私は植木のそばで木の枝や石ころを探してきて、雪だるまの手や顔を作る。
雪玉を作って積み上げるのが得意な私だけど、まぁ、誰にだって得意不得意がある。
手をパンパンと叩いて、赤くなった手についた雪を払った私の前には、体は立派だけど少し顔がいびつな雪だるまが立っていた。
まぁこんなものだろうと、腰に手を当て、今年の出来に満足する私の横から、雪を踏む足音が聞こえてきた。
寒そうだな、そう言って彼は被っていたニットの帽子を脱ぐ。
そしてその帽子を、雪だるまに被せた。
私はあの日と同じように、少し怒って、それから笑った。
薬指にお揃いの指輪をつけている、その人と。
これがあの日から続く、私の冬の思い出。




