表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シニガミと呼ばれる男  作者: 希塔司
BATTLE10 鬼族の少女は涙する
5/14

EP.5「ある日の休日」

 あの駄女神に睡眠を邪魔されてしまったから昼近くまで2度寝してしまった。


 全く、おれに関わることじゃないのに相談事と言ってベラベラと解決案を出させようとしやがって。まぁ、まともにおれのこと知ってるやつは今はあいつしかいないから少しばかり話し相手ぐらいにはなってるんだけどさ。


 そう思いようやくベッドから起きて出かける支度を済ませる。


 簡単にシャワーを浴びて着替えて、そして出かけていく。今日は買い物をして帰りにバーで一杯済ませようかと思う。だから残念だが今日は電車に乗って都心部に向かうことにする。


 朝食は実は食ったり食わなかったりと完全に気分で決めている。今日はバナナ一本と簡単に作れるプロテインで済ませた。


 正直昨日の戦いの疲れや、夜のルーシェからの強制的な呼び出しのせいでげんなりしている。そういう時って食欲なんて湧かないでしょ。




      ーーーーーーー



 さぁて、今日も華山に着いたぞ。昨日の騒ぎで連合政府の調査員がうろちょろしているなと思い、人目に紛れてショッピングモールへと向かった。


 ここでは最近よく食器や日用品を買っている店があるから今日はトースターでも買ってみるか。食パンを最近食べ始めたから少しハマっている。




「いらっしゃいませ。」



 ...昔はよく世間話とかしてた店員だったんだけどな、もうおれのことを忘れてしまってるから特に何もなくトースターだけを買って出ていった。何気ない会話が好きだったから少し寂しい。



 それから新しい電気製品を見に電気屋に向かうと、電子ピアノが置いてあった。昔、戦闘以外に続けてたのってピアノだけだったんだよな。飽きっぽいおれがハマった趣味の一つ、音楽だ。



 ご自由に弾けるようなので一曲弾いてみることにした。



『約束の場所で』




 切ないバラード調の曲、日菜がバラードの短調曲が好きでおれはこの曲をよく弾いていたなと。懐かしいな...。過去を振り返りながら弾く。忘れてた感情を呼び起こして。



 遠山日菜、龍族の女で現在は多種族間におけるDNA配列の相互作用とかおれにはちんぷんかんぷんな理論を発表した科学者だ。


 よくおれの使ってる剣や服やHEARTを調整してくれたり、おれの心臓の病を知る数少ない1人でもあったから延命のための薬も作ってくれた。今でもそれを服用している。



 その兄の遠山蓮と安藤奈々とは幼馴染だったおれたちはよく遊んだり親父に稽古をつけてもらっていた。蓮の家に遊びに行った時に出会った。


 最初はショートカットにメガネをかけていて愛想はそんなに良くなかった。自分の興味のあることに熱中するくせに家事はもろもろ出来なかったり、素直じゃないやつだからよくケンカとかもしたっけ。


 けど日菜は、おれのことを、存在しない人間のおれをただ1人愛してくれた人。付き合ってた期間自体は2年ぐらいだったけど、おれの人生の中で1番幸せだった時。そしておれが1人でずっと戦う理由の一つでもある。


 日菜が一度死んだあの日に誓った。もしやり直せるのなら、もう2度と日菜や他の大切な人たちを戦いに巻き込まないと。そして時間的矛盾(タイムパラドックス)を引き起こした。その結果が今に至る。神々から痛いしっぺ返しをくらったわけだ。



 周りには人はいない。たった1人の空間でおれは、その曲を終わりまで演奏していく。人の感性はやはりそれぞれで、おれはある意味ズレてるんだなとは思う。


 こういう時弾くのって、やっぱり流行りの曲だったりみんなが知っているクラシックや盛り上がる曲を弾いたりして動画にしたりするストリートピアノがメインだから。


 自分が悲しいからって人に押し付けたり、強要したりはまた違う。ましてやたった1人で生きてるおれには、人に自分の感性を伝える音楽なんてナンセンスだと弾きながら感じていた。



       ーーーーーー



 そんなこんなで夕方になり、バーへ向かうことにする。『カクテルバー NEXT』ここはテレビに映っている著名人や政治家なども使ういわば会員制のバー。前にお偉いさんとかと仕事とかの話によく使っていた。記憶がなくなっても会員証はあるから普通に入れる。



 店の中は正にドラマとかでよく見るような高級でオシャレなバーだ。それなのに値段は意外にも安いから隠れた名店のようになっている。



「今晩は、さっそくだけどジントニックを」



「かしこまりました。」




 いつも最初の一杯はジントニックから始める。あまり強い酒は得意じゃないからいつも爽やかな酒を中心に飲む。前はいつものって言えばこれが出てきたんだけどね。



 カウンターで静かにお酒を飲む。1人でお酒を飲むのは昔からだから、別にそんなに苦ではない。むしろあまり誰かと飲むのは慣れてないからこうした時間は大切にしたい。連れてきたのも多分、日菜や優ぐらいなのかもしれない。



 実は密かに計画を立てている。いつかのんびりとしたスローライフな人生を送るのが今のおれの夢だ。したい時に仕事をして、それ以外はダラダラと寝て、楽しく過ごしたいなと。まぁ、いつになるのかわからないしそもそもそれまでおれの体が持つのかが分からない。



 けど、やっぱりそれでも自分の信じる夢を叶えていきたい。信念だけなら誰にも負けない自信がある。そんなことを考えながらジントニックを楽しんでいる。ちなみにジントニックのカクテル言葉は『強い意志』まさにおれにピッタリなカクテル。



 すると周りが拍手をし始めた。どうやらピアノ演奏者がピアノを演奏するようだ。バーだとジャズか落ち着いたバラードか。おれも周りに合わせて拍手をする。



『その瞳は何を見る』



 この曲もバラードの曲だ。感傷的になるような曲調で一部のコアなファンはこの曲を聴くと必ず涙を流すほどの曲。実は電気屋でおれが弾いた曲の歌手と同じで、『Miisa』という歌手の曲だ。



 おれがシニガミになる前から歌手としてデビューをしており、何度もリピートしてしまったほど昔ハマっていた。この曲を聴いていると、昔のことを本当に思い出してしまう。



 家族のこと、絵里や奈々、蓮や優たちと過ごした学生時代のこと、ワイワイ楽しんだあの旅のこと、日菜と過ごした2年間。何もかも、もう2度と戻らない。あの日々のこと。


 気づいた時には涙を流していた。もう2度と泣かないって思ってたのに、後悔しないって駄女神と約束したのに...。ダメだな、年を取ると涙腺が脆くなるのは本当なんだなって。


 今はみんなそれぞれが自分の幸せを掴んで生活しているんだ。もうおれがいなくても最高の笑顔で...。



 なによりおれにはもうあまり。


 ...たまには追加で2杯目を飲もう。1杯だけで済ますと悲しい思い出になっちまうからな。ここは少し強めで、ラムベースでいこうか。




「すみません、カサブランカを。」



「かしこまりました。」



 カサブランカのカクテル言葉は『甘く切ない思い出』


 あの人は今、幸せでいるのかな。といった元々は片思いのカクテルで有名なもの。ただ片思いでもいろいろな種類があるからこれはこれであり。


 アルコールは若干強めだけど、それをかき消すような酸味がまた爽やかで美味しい。涙が引っ込むくらいに果実の味が口の中でしっかりと味わえるからこれを頼んでよかったと思えた。



 なんだかんだで落ち着きながらも楽しめた。バーの余韻を残すように、早めに会計をして店を出た。




      ーーーーーーー



 家に帰り、またシャワーを浴びる。ハゲるとかっていうけど実際にハゲた人を見たことないから多分ガセネタだろうとは思う。シャワーを浴びて麦茶を注ぐ。それから今日あったことをデバイスに聞いてみることに。



「HEART、今日はどんなことがあったんだ?」



「はい、現在調査したところ。絡庵西部の小さな町が壊滅したとの情報が入りました。」



「壊滅?破滅の使者がまた送られてきたのか?」



「詳しいことは現在衛生ネットワークと光学迷彩カメラなどで詳しく調べております。発見までもう少しお時間が必要です。」



「わかった、見つけ次第すぐに連絡してくれ。」



「かしこまりました。」



 そうしてデバイスの電源をスリープにして部屋の電気を消す。寝る前に一服をして、寝よう。ベランダに出てタバコを吸う。


 この夜景も、あとどれくらい見れるんだろうか。なぁ駄女神さんよ、あと何回、世界を救えば許してくれるんだ。



 あとどれくらい自分を傷つければ、おれは死ねるんだ。もうこれ以上誰かを傷つけたくない、戦いたくなんてないんだ。おれの呟きは誰にも聞こえないままだ。



to be continued

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ