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シニガミと呼ばれる男  作者: 希塔司
BATTLE9 間違った正義をかざす科学者
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EP.3 「全てを一つに」

「液体人間だと、そんなのが許されると思ってんのか。」


「許されようとは思ってないし誰の許可もいらないさ。全ておれの計画通りになればそれでいいのさ。」



 全く、こんなイかれた野郎。さっさと終わらせなきゃマジでやりかねないぞ。全てを一つの存在にする。それは「個」というものを捨てて皆が同じ思想、考えのもとに一つの生命体として生まれ変わろうというもの。


 言い換えれば自分の意思や感情が無くなる完全な虚無の存在になること。そこに自由も希望もない。だがなぜそんなことを考えるようになったのか疑問も浮かんだ。



「なぜそんな考えになったんだ。お前のような科学者ならもっと違った選択もできたはずだ。」



 お節介のようだけど、おれはこいつのことを知りたいと思ったから聞いた。霧谷は顔を少し俯いた後に口を開く。



「いいだろう。少し昔話をしよう。おれは元々身寄りがなく、常に1人だった。盗みをしたら周りの大人にいじめられる毎日を送っていた。少しでも見返そうと思い、おれはある金持ちに取り入った。まずは勉学に励み、知識をつけたかった。偉くなるための一歩として学校へ入学した。そこでおれはある1人の女に出会った。おれが今でも愛する人だ。」



 その暗い表情から壮絶な過去を送ってきたとヒシヒシと伝わる。



「彼女は昔から絵が好きで、よく色を混ぜてキャンバスにいろんな絵を描いていた。動物、自然、人、街、いろんなものを組み合わせた絵をな。色をうまく混ぜ合わせていた。彼女と話すたびに少しずつおれは前を向いて生きることができていた。やがて次第に惹かれていくのを互いに感じ取れていた。」



 その話を聞いたおれは日菜の存在を頭に浮かべていた。霧谷も人間としての心を持っていたのを知る。



「そんなある日だった、彼女は突然倒れたのさ。当時流行っていた伝染病だった。治療法も薬もなかったからおれはひたすらに医学書を読み始めた。難解な理論やありとあらゆる知識をもって彼女を助けようとしてな。だが病状は悪化する一方だった。無力な自分を呪いながら入院させるべく、ワールドツリータワー病院へと向かった。」



 今は倒壊して無くなった病院だ。その理由は霧谷の口から語られる。



「その日おれは彼女と一緒にいた。入院の手続きをするために。そこで何があったと思う?窓の後ろから砲撃されたんだよ、あの『ZEANの反乱』の日だったんだよ!」

 

「マジかよ...。」



 そこでおれはハッとしてしまう。あの日にいたのかとやっと理解した。


 

 『ZEANの反乱』。元々は連合の特殊部隊であったが破滅の使者に誑かされ、世界中に宣戦布告をした事件だ。それは弟たちが鎮めたがその戦禍はあまりにも残酷だ。


 今、おれたちが戦っている華山から見える。まだ復興の兆しがない。ワールドツリータワー跡地もあるしその戦いで弟たちも消息不明になっている。



「その砲撃からおれが目を覚ました時には、変わり果てた姿の彼女がいた。辺りは血の海のようになっていた。そして建物そのものも崩落し、おれも死んだと思っていた。だがおれは奇跡的に生き残ってしまった。運が良いのか悪いのか。そして悟ったのさ、助けてくれる神などいないと。そして人間どうしの醜い争いの歴史は繰り返していくと。」



 霧谷の憎しみの根は想像以上に深い、そして人間に対しての絶望も。



「そこからおれは再び研究したのさ。どうやったら争いが終わらせられるのか、そして彼女が描こうとした混ざり合った世界を作り上げるにはどうすればいいかをな。おれは連合政府の研究機関に入り、ひたすら研究した。全てはあのキャンバスの絵を完成させるために。」



 彼女の意図を汲めなかった霧谷に多少同情するも目線を外してしまった。



「だが最初にも言ったが奴らはおれを否定したのさ、全てを一つにできる方法をやっと見つけたこのおれを!」



 おそらく霧谷にはキャンバスの絵を見れないんだ。なぜなら色は全てを混ざり合うと黒になるように、あいつの心の絵にはもう何も見えていないのだから。ただ真っ黒な世界が広がっている。



 そう、霧谷もおれと同じだ。この世界の絶えない争いに巻き込まれた被害者なんだとはっきりわかった。わかったからこそおれが止めなくちゃならない。



「確かにそれで戦いがなくなったらそりゃ理想的さ。

けどな、違った価値観、違った意見があるから人類はここまで進化してきたって言っていいんじゃねぇのか?

それにお前は致命的な勘違いをしてるぜ。彼女の絵の本質はそんなもんじゃないさ。」



 おれの率直な意見を相手にぶつける。いろんな人間がいて、互いにぶつかり合い相互理解を繰り返していくことで歩み寄りを覚えていく。だがそれは霧谷には届かない。



「黙れ!お前におれの何がわかる!言ったはずだ、おれはお前を知らないと。他人がおれを理解するなどありえない、あの絵のようにみんな混ざり合わなきゃ分かり合えないのさ!!」



 全部を溶かして一つに混ぜ合わせるなんて...。例え彼女の願いを叶えたとしてもその彼女は笑ってはくれない。



「話は終わりだ。お前のそのご都合主義を、跡形もなく溶かしてやる!」



 霧谷は再び試験管を取り出したのを見て、おれは再び臨戦体制に入る。ここでついに相手も本腰をいれて戦うそうだ。



「受けろ、逃れられない自然の摂理だ。アシッドレイン。」



 そう言うとさっき振り撒いたガスでできた雨雲から雨が降ってきた。酸性雨だ。それもさっきの巨大スライムもどきとは桁外れの濃度。これはまずいな、雨に含んだ強力な酸で辺り一面を全て溶かす気だ。



 これに対抗するにはアイテムが必要だ。実は幸いいま手元にデバイスがある。あいつに任せれば大丈夫だろう!




「ok.『HEART』、辺り一面に石灰水の霧吹きを振り撒くんだ。」




「かしこまりました。石灰を含めた霧吹きでしたらこの雨の酸性濃度を極度に弱められます。それでは衛星にリンクし、霧吹きを撒いていきます。」




 そう伝えるとさっそく衛星にリンクされ、霧吹きが振りまかれる。すると酸性の雨はたちまち科学反応を起こし、中和されていく。激辛のものを食べたときに牛乳やクリーム系のもので口の中を落ち着かせるように。



「チッ、この攻撃も防がれたか。しぶといやつめ」



 煽りながら回避するから相手がだんだんとイライラしているのが伝わってくる。



「お前がここまでの存在だったとはおれにとっては計算違いだった。だが本気にさせてまさか逃げるというわけじゃないよな?」



 そうして霧谷が放ったもの。それは爆弾だ。ただの爆弾ではなく酸で発生したガスに反応して爆発するものみたいだ。それもガスによってさらに火力は倍増して。




「さすがに今度こそ終わりだ。この爆弾の範囲は、この街全体に広めた!いくら避けるのが上手いお前でもたった数秒で逃げ切れるものか!!」




「そんなことしたらお前もただじゃすまねぇぞ!」




「構わないさ!みんなまとめて吹き飛ばしてやる!」



 当たり一面に再びガスが充満し始める。さすがに今度は避けるだけじゃまずい、なんとかしてあいつの懐にまでたどり着く必要がある。だがあいつは今バリアを張っている。あのバリアをなんとかしなきゃいけねぇ。



「そーら、これで終わりだ!sad crisis、起爆!!」


そう言いながら霧谷は指を鳴らして起爆の合図を打った。



       ーーーーーーーーー



 .........起爆しない。もう一度指を鳴らすものの全く反応がない。




「おかしい、なぜ起爆しない。」



 あたりには依然としてガスが充満している。爆弾は確かにまだそこに置いている。それに関わらず起爆しない。そう、全部HEARTが提案する最適解に沿って動いている。




「残念だな、まもなくガスは晴れるし爆弾はただの不発弾になったよ。」



「なんだと、どういうことだ?」



 動揺をしている霧谷におれは一つずつ説明していくことにする。



「この街のあの施設には風力発電のタービンがある。そいつをおれのAIデバイスで操作したのさ。ガスを吸い込み、それを電力に変えている。



あと爆弾に関してはこれ、ただの小型のインパクト。

これくらい小さな爆弾ならそれも可能だ。


そこの工事現場に置いてあるインパクトをビットを変えて信管を抜けば酸を混ぜた爆弾は不発弾になる。



もちろんこんな危ないものはとっととこの戦いを終わらせて処理するまでさ。こんなこともわかんないのか。

案外科学者ってバカなんだな笑」


 そう、全て戦いながら先ほどまで置かれていなかった不思議な箱が設置されているのを知ったおれは密かに少しずつ爆弾の解除作業もしていた。


 なぜそんな同時にできるのか、昔親父から教わった信道家の奥義が関係していた。やがてガスは徐々にタービンに吸い込まれていき電気に変わっていく。そしてガスは吸い込まれて消えていった。



「なるほどな、してやられたよ...。と思っているのか?吹き飛べー!!」



 ズドーン!ドゴゴーン!!



 その瞬間、一斉に爆発をした。そう、この爆弾はあくまでハッタリを利用した心理テクニックだったガスを充満させ、街全体を囮に取る作戦だったのだ。


 だがそれは初めからおれを確実に爆発に巻き込ませるためにあえてわかりやすい仕掛けにすることでその隙をついて一斉に爆発させていくのが筋書きだったようだ。





「バカはお前の方だ!こんなにあっさりと引っかかりやがって!ガスがなきゃ起爆できないとは一言も言ってないんだぜ。あくまで爆弾は時限式に決まってるだろ?そしてその時限式爆弾は自動的にBモードに移行させるようにプログラムされている。そうなれば仮にAモードでの起爆ができなくても爆破はできるからな。


さぁて、あいつは溶けたかな?」




        ーーーーーーーーー


「はっはっはっは!ついに溶けやがった!おれをイライラさせるからだ!いくらお前が戦いを何度も経験していようと酸の前では無力だ。酸は全てを一つにしてくれるありがたいものなんだよ。


そんなことしなくても一つになれるって戯言言ってたもんな、どうだ?お前も溶けて1人の液体人間になれる感想は!」



 霧谷はボロボロのコートに向かって叫んでいた。完全に調子に乗っている霧谷にお灸の一撃を。





「オーバーソードレイ!!」



 宙に舞い、上空から魔力を込めた剣撃を衝撃波のように飛ばす技。それを持ってようやく霧谷にダメージが入る。ズバッと背中に一撃を食らった。




「ぐっ!なんだと、おれが、おれが傷を負うだと!」



「残念だったな。言ったはずだぜ。お前は今まで戦ってきた敵の足元にも及ばないってな!さぁて、こっから反撃開始だ!」



 そうして再度魔力を剣に込めておれは構える。こいつとの戦いもそろそろ終わりだ!



 



to be cotinued

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