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シニガミと呼ばれる男  作者: 希塔司
BATTLE10 鬼族の少女は涙する
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EP.14「戦闘狂」

 事件が起きた広場へと向うためにおれたちは立ち上がる。あかりちゃんがまた人を襲い、昼に起きたように肉や骨を喰らおうとするのを何としてでも止めようと。悠人くんは部下にジェット機を調達していたようで上空に控えていた。


 そしてそのジェット機はものすごい風圧をさせながら降りていく。音は静かだからステルス機にも使える代物、まさに世界最大国家らしい最新技術が盛り込まれている機体だ。



「相変わらず手が速いこと。」


「なんのことだかわからないけどとりあえず行くぞ。」


 

 そうしておれたちはジェット機に乗り込むと目標の地点までは5分かからずに向かえるようだ。従来のマナエネルギーに新開発されたハイプラズマチャージエンジンとかいうものが搭載されている。理屈はよくわからないがどうやら大気中の湿度や窒素を利用しているとのこと。窒素は大気中の7割を占めているため、それを利用できるということでクリーンかつハイパワーな運転ができるとのことだ。悠人くんは操縦している部下に伝える。



「できるだけ急いでくれ、移動してる間に国民や部下たちが相次いで犠牲になるかもしれない。」


「承知致しました。」



 悠人くんの指示で機体を一気に加速させていく。まるで全速力の優くらい速い速度で飛ばしていく。これならなんとか次の被害が出る前にはたどり着く。



       ーーーーーー


 あれから5分経たないうちに到着したようで広場の上に辿り着いた。おれと悠人くんは支度を終えて飛び降りる準備をした。真下はまるで巨大な怪獣が暴れ回ったかのような被害を出していた。建物の損壊や破壊された噴水、そしてそこに浮かんでいる人から流れる血が惨状を物語っている。



「ひどいな...。あそこにいるのが例の少女か。」


「あぁ...。」



 これが鬼族の本能だというのか。昼に戦った時とはまるで違う戦闘スタイルを見せている。この短時間で成長したというのか。



「すぐに降りるぞ。」


 そう言うと悠人くんは躊躇なく飛び降りる。そして持っている刀に力を入れているように見えた。まさかあかりちゃんに不意打ちをしようと言うのか!そんなことはさせないとおれも迷いなく飛び降りた。



「もっとだ、もっとお前らの皮を、血を、肉を、骨を私に食わせろ!そうすれば私はさらに強くなるのだから!!」


「耐えろ!あの方は間も無く到着される!」



 下であかりちゃんの猛攻に耐え、悠人くんを待っている勇敢な部下たちの尽力により一般市民への被害は思ったよりはひどくはない状態になっている。そして悠人くんは型を構えた。斬鉄刀を使う気だ。



「斬鉄刀 雪崩!」


 悠人くんの刀の斬撃をかわすものの冷気はあかりちゃんの足元を凍らせていく。そして悠人くんは自身の魔力で巨大な氷を形成していく。オリジナルの魔法のようだ。それらを刀で次々と切り刻み氷の矢を作り上げた。



「しめた!砕氷 白百合!」



 その矢を次々とあかりちゃんに向けて放っていく。あかりちゃんはかわそうとするが足が動かしずらくなかなか思うように動けないそうだ。



「チっ、ならこれだ。ワンミリオン・アイアンフィスト!」



 あかりちゃんが初めて技を使っていく。その名の通り100万発の拳を10秒間に分けて放っていく技。範囲を狭めれば威力を増すことができ、広げれば攻撃を弾いたりと守備にも活用できる技だ。あかりちゃんは戦闘IQが良い方だと把握した。


 悠人くんが放った矢を次々と弾き、矢を全て砕くとその拳が次々と悠人くんに襲い掛かる。咄嗟に回避をしようとするも空中での身動きは空気抵抗などが原因でしずらいため、逆に悠人くんは刀で弾いていく構えをする。最初こそ切り弾いていくものの、圧倒的な拳の数と拳圧により次第に押し返されていく。



 おれは咄嗟に糸で悠人くんの元へ向かい、彼を抱えて地上へ降りようと急いで落ちていく。回避には自信があるおれでも全てをかわしきれるかわからないほどの拳の数に改めてあかりちゃんの底知れない実力を感じる。



「すまない、助かった。」


「ありゃヤバいな、さすがのおれもヒヤヒヤするくらいだ。」



「それよりもあの子の拳の圧力がすごい、おそらくあの子は拳に何らかの魔法を込めてるのかも知れない。気をつけろ。」



 悠人くんにあの技の仕組みを簡単にアドバイスしてもらったおれは瞬時に思考していく。確かに100万発という拳はおれでも冷や汗をかいてしまうほどの数だ、だが相手はまだ小さい子供。その技を使用し続ければ体への負担は相当なものになるだろう。だがあかりちゃんは今目の前で平然と肩を回している。


 鬼族の身体能力も関係しているだろうがそれ以上に何か別の要素を利用しているのはわかる。それが一体何なのかはまだわからない。戦っている間にわかるのかも知れない。



「悠人くん、逃げ遅れている人たちや自分の部下を頼むよ。おれはあかりちゃんをなんとか食い止める。」


「正気なのか?鬼族の力を暴走させている以上、1人でどうこうできるものじゃない。まだ本気を出してないのかもしれないんだ、迂闊に突っ込むのは危険すぎる。」



 確かに危険かもな、でもおれはともかく悠人くんをもう失いたくない。戦うのは周りに誰もいないおれだけで十分だと、そう思いおれは剣を出して魔力を込めていく。するとあかりちゃんはおれが戦闘体制に入ったのを見て高笑いする。



「あははははは!いいねー!やっと戦う気になったんだ!最初に会った時から勘付いていたけどお兄さん強そうだもんね!そんなあなたの血や肉や骨を食べたらどんなに美味いのか、楽しみー!」


「笑ってられるのも今のうちだぜ、戦う気にさせてしまったことを後悔させるほどおれは強いぜ?」



 あかりちゃんは自身の闘気を辺りにぶつけるように力を溜め込み始める。熱い、あかりちゃんの闘気は悠人くんと反対でまるで目の前に炎の海が広がるように、闘気が波のようにおれにも押し寄せてくる。



「何だこれ!」


「怖いよママー!」



 周りに避難しそびれている街の人たちがあかりちゃんを見て恐怖の顔をしたり体を震わせたり叫んだりとパニックに陥っている。



「落ち着いてくれみんな!僕たちが必ず守る!」



 悠人くんも人々にそう呼びかけながら闘気を肌で感じるたびに腕をビクッとさせている。悠人くんにとっても今目の前にいるあかりちゃんに多少なりとも恐怖を感じていることがわかる。それを最高司令官という立場のおかげでかろうじて冷静さを保っている状態だ。



 おれは静かに目を瞑り、少しずつ力を解放する。その闘気を、声や音を聴こえないように1人静かに心を落ち着かせる。そしておれは徐々に自分の中に潜む実力を発揮していく。




「フェーズ1...。」



 あかりちゃんが発する闘気がおれの前で弾かれる。



「フェーズ2。」



 グラグラと大地を震わせていく。地震かと思うように人々もおれが発する力を感じるように目線を向けられてるように感じる。



「なんだこれ、まさかお前が...。」



 悠人くんは驚くような声でおれに問いかけるが力を集中している状態では回答することができないため続けていく。あかりちゃんはウキウキするような声でおれに話しかける。



「まだまだこんなもんじゃないでしょ?もっと私に力を見せてみろー!」



 そしておれはさらに上げていく。



「フェーズ3!」



 樹木は激しく揺れて葉が舞い落ちる、水溜まりが激しく揺れる。怯えるような周りの人々の声、あかりちゃんが喜ぶような仕草、悠人くんの刀のガタガタと震える音、そして周りの空気がまるで刃物のように研ぎ澄まされるように。


 これがおれの隠している実力。心臓のこともあって本当は使いたくはなかったが、あかりちゃんの持っている実力を把握したおれは最後の手段に入った。もう一段階上のフェーズまではいけるがあれはもう使えない、使うわけにはいかない。それを使えば最後おれの心臓は耐えきれずに鼓動を止めてしまうから。


 

「待たせたな。さぁ、今度は逃さねぇよ。」


「ふふん、やれるものならやってみなよ。お兄さん。」



 おれたちはニヤリと笑いながら互いに牽制し合う。


 

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