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シニガミと呼ばれる男  作者: 希塔司
BATTLE10 鬼族の少女は涙する
13/14

EP.13 「望んだ再戦 VS安藤悠人②」

 気づいた時にはまだ氷の棺の中にいた。少々賭けにはなるがこの技を使うしかない。自分のマナを内側から放出して対象の物体を一気に分解していく技。


「オーバーコミッション!」


 氷の棺が徐々に軋む音をし始めてきた。マナの熱反応によって水滴に少しずつ変化もし始めていく。ただこの技もマナを大量に消費する上に血の流れを一時的に止める技でもある。


 もちろん普通の人間なら臓器不全になったりするがおれは色んな種族の血が混ざっていることでかろうじて使えるくらいだ。そして心臓への負荷も当然ある。だからこそいかに早くこの棺を壊すかが鍵になる。



「ふぬぐぐぅー!!」


 段々と力を入れるたびに軋む音が大きくなり、さすがに歩いていた悠人くんも気づいた。



「な、まさか内側からこいつを壊す気か!?いや、ただ仮に出れたとしても相当のマナを消費するはず。なるほどね、その実力はハッタリじゃないみたいだ。さぁ、早く出てこい。」



 悠人くんもおれの実力を少しずつ感じ取ったのかそのまま様子を伺っている。なら待たせないように早く壊さないとと思い一気にマナを放出した。そしてようやく棺を破壊することに成功した。



「ぷはぁー...はぁはぁはぁ...。」



 一気に放出したからか、心臓の痛みが先程の比じゃないくらいに痛む。それだけじゃない、肩や背中や腿やら至る筋肉が悲鳴をあげているように一気にズキズキと痛み出す。血の流れを再開させた際の副作用のようなものだ。


 多少目がかすみ、悠人くんの姿がボヤけて見える。匂いもまだ全て無臭に感じる。舌が少しピリピリとして話しづらいと感じる。だがこんなにも隙だらけなのに悠人くんは依然立ったまま待っている。



「はぁ、まさか本当に棺を内側から破壊するなんてな。これを破壊できたのは姉さんだけだったよ。」


 悠人くんはその言葉を話しながら近くに置いてある自動販売機で何かを買っている。どうやら缶コーヒーのようだ。そしてそれをおれに向かって投げる。感覚が鈍くなってるおれはそれをキャッチするにも精一杯な状態。



「休憩だ。」


「何言ってんだ悠人くん。おれたち今戦ってるんだぜ、そんなばちばちの状態で休憩なんてずいぶんと余裕があるんだね。大丈夫さ、おれはまだ戦える。」



 おれはそう強がりながら言うものの、正直体が言うことを聞かない。なんとか立ち上がるも足はフラフラ、腕もブルブルと震える。剣を構えようとするも体が凍えてまるで武者震いのようにガタガタと剣も震える。



「はぁ、あんた敵からの恩は受け取るべきだ。そんな状態でまともに僕と戦えるはずないだろ。それに僕だってそんなフラフラな敵を切っても面白くないからね。だからまずは一度休憩しよう。あんたの話も聞くだけ聞いておく。」


 悠人くんはやはり根は優しいし男前だ。だからこそみんなも着いていきたくなるしこの国は世界最大国家として君臨しているとわかる。


「そうかい、ならお言葉に甘えようかな。ぐっ!」


 体の力が抜けて近くの木に寄りかかった。コーヒーの蓋を開けて一口飲む。暖かい、微糖のほのかな甘みで頭も落ち着いてくる。やっぱりさすが悠人くんだ、最近でここまで追い込んだ人物は悠人くんくらいだ。あの時とは全然強くなっている。



 思えば悠人くんと戦ったのは8年前、第三次掃討戦の時だ。その前の第二次掃討戦で慕っていた姉の奈々を失い人間に、そしておれに復讐をするために悠人くんが起こした戦いだ。魔刀に取り憑かれながらも意識を保ち、おれに本気でぶつかってきた1人だった。


 その後は和解してしばらく世界情勢を悠人くんに任せていた時も彼は約束を守ってくれた。だからこそおれは悠人くんを尊敬しているし困った時は互いに助け合ったりしていた。



 ただ第三勢力となる『アークキングダム』が攻め込んできた時に日菜共々悠人くんも死ぬことになってしまった。幸い悠人くんが敵の大将にあらかじめ時限式斬鉄刀を仕込んでいたおかげでおれはその戦いに勝利した形だ。もはや彼には返しきれない借りを作ってしまっているわけだ。


 そんなことを思い出していると悠人くんはおれに尋問を始める。



「さてと、まずは一つ聞いておきたい。なぜその『マナの雫』を持ち去ろうとしている?それを一体何のために使用するのか説明をしてほしい。そんなものは質屋じゃ買い取ってはくれないからね。」


 普通はまず『マナの雫』を使う一般人はいない。だから悠人くんはその使用用途によってはもしかしたら貸そうと考えてくれるのかもしれない。そんな一握りの希望に賭ける。



「確かに、普通はもっと高価なもん盗みにくるよな。ただこいつを盗りに来たのには理由があるんだ。


 鬼族の少女が起こした事件についてさ。最高司令官はもうすでに知ってるだろ?」


「ああ、部下が死にものぐるいでその子の行方を捜索しているところだ。」


「実はついさっきまでおれその子と一緒にいたのさ、ただ今は力が暴走してはぐれてしまったわけ。」


「どういうことだ、なぜあんたがその子と一緒にいたんだ?」


 普通はまぁそう思うよな。


「旅館に泊まりに来ようとしていたおれはたまたま出会っただけさ、初めて会ったときにはすでに片角は折れていて服装もボロボロだったのさ。そしてなんやかんや追手やらを交わしつつ逃げていたんだよ。」


「待て、その追手の中に『冥崇教』の奴らもいたはずだ。あいつらは今どうしてる?」


「あいつらとは一時的に協力関係にあるよ。まぁ見つかり次第また敵に戻るだろうけどさ。頼りたくはないけどあいつらの情報網は本物さ、特に子供関連はね。教祖を殺されてるんだ、血眼になって死ぬ物狂いでこの絡庵中を探してるはず。」



 悠人くんには嘘偽りなく話していく。いずれバレて面倒事を引き起こすくらいなら今は彼と協力してあかりちゃんを救い出す選択肢を増やしたいから。かつてと同じように一緒に。しばらく悠人くんはおれの顔を見ていた。赤く染まっている目を見てこう答える。



「嘘はないようだな。あんたはただの泥棒ではないようだがなぜその子を助けようとしてるんだ?あんたと行動を共にしていただけだろ。ましてや僕たちのいる拠点にまで乗り込むなんて普通なら考えられない。そして僕を目の前にしたのにも関わらず戦いを挑んできた。なぜそこまで一個人がする必要が?」



 悠人くんは的確におれから本音を聞き出そうと心に入り込もうとする。奈々と同じその瞳でおれを見つめてくる。実はこれは昔からあったことだ。


 初めて戦った時も、神を目指したシンラと戦いの時も、日菜を救出しに行く時も、おれに問いただしてきた。そう言う時は理屈じゃなく感情を求めている合図のようなもの。なんだか懐かしく感じる。



「そうだね、確かにおれがそこまでやる義理はそもそもないよね。けどおれはそれでも、もう嫌なんだ。知らない誰かだとしても失ったり傷ついたりされるのは。やっぱり世の中平和が1番だから、何よりそうじゃなきゃ一体何のためにおれがずっと1人で戦い続けなきゃなんないんだか。」


「それってどういう...。」



 悠人くんが何かを言いかけたとき、瞬時にこちらに移動してきた人物がいる。絡庵の諜報部隊だ。



「悠人様!緊急事態です!」


「どうした!」



 悠人くんにその人物が耳打ちをしてきた。そして驚いた顔になり、すぐにその対策を伝える。



「チっ、とりあえずすぐに絡庵の国境にバリアを貼れ!絶対に逃すな!あと『冥崇教』のやつらも恐らく嗅ぎつけてやってくるはずだ!こうなりゃあの人にも力を貸してもらうしかない!ハーレライ部隊13.14番隊に通達しろ、人民の避難を完了次第すぐに街の防衛体制に入れと!」


「はっ!」



 その人物はまた姿を消した。どうやら緊急事態となっているようだ。嫌な予感が的中しなければいいのだが。



「どうしたんだ?」


「...その鬼族の少女が先程広場で新たな犠牲者を出したと連絡を受けた。あんたの気持ちはわかる。あの子を救いたい気持ちも、だがもうこれ以上犠牲者を出すわけにはいかない。最高司令官としてぼくは絡庵の国民を失いたくない。」



 やっぱりこういった嫌な予感はことごとく当たるよないつも。もうダメなのか、そう思いながら答えていく。



「そうか...。ならせめておれもその現場に連れてってくれ。あの子に話があるから。」


「それは勝手にすればいい。だがもうその子にはあんたの声は聞こえないのかもな。まぁいい、来たいなら行こう。」



 そしておれたちは共にその現場へと向かう。まだあかりちゃんがいるのなら今度は止めないとならない。最悪は...。いや、どんな状況でも希望を諦めちゃならない。おれがあかりちゃんを救うとそう自分に言い聞かせて。



to be continued

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