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シニガミと呼ばれる男  作者: 希塔司
BATTLE10 鬼族の少女は涙する
10/14

EP.10「あるべき姿」

 おれたちはなんとかバイクが置いてある駐車場まで戻り急いで乗り込んだ。いつまたあいつらがやってくるかわからない状況下であまりモタモタとしてはいられない。いやおれ1人なら別に対象はできる。あかりちゃんが一緒にいるのがネックになる。


 エンジンをかけて飛ばしていく。スピード違反はお構いなしにどんどんと絡庵から離れていき、おれん家に向かって進んで。



「私たちこれからどうするの?」



 不安になっている声で、おれの腰に回してある腕を強く抱きしめる。不安になる気持ちは充分わかる。あんな奴らに追われているのだから。



「まずはおれん家に行ってこれからどうするか決めながらゆっくりと体を癒そう。逃げてばっかじゃ疲れちゃうでしょ。」



 そう言ってあかりちゃんの不安を少しでも和らいでいく。そうすることしか今のおれにはできない。真相を知るまでは一旦は匿うしかないんだから。


 国境付近まではそこまで時間はかからなかった。検疫を受ければもう冥崇教の奴らも来れない。だが次の瞬間。


「危ない!!」



 咄嗟にブレーキをかけてしまう。


 上空から羽の矢が降り注いできた。おれは腰に付けている剣で薙ぎ払って落としていく。見上げてみると、鳥人族の男数人が飛ばしてきたのがわかった。その胸には例のペンダントをかざして...。



「ついに見つけたぞ鬼め。我らが教祖『タチバナ』様のため、貴様を討つ!!」



 空から四方に別れておれたちに迫りくる。彼ら鳥人族は風の力を利用して飛行速度を速くできる。羽を利用してミサイルやマシンガンのように多くの弾丸を放っていく。



 おれは魔力を剣に込めて地面に突き刺した。すると魔力は剣を伝って地面に染み渡り、そして地面から壁が突き出てきた。魔法の一つだ。


 さすがに本職には劣るが最低限魔法はいくつか使用できるため、このように防御をしたりして体制を整えていく。


 バイクを降りて状況を確認していく。敵は4人、冥崇教のペンダントをかざしているためさっき会った狼族の仲間だろう。彼から連絡を受けて空からの捜索にあたったというわけだ。翼に生えている羽意外にも彼らはボウガンや銃を装備しているため多少おれから距離を離している。



「その鬼族のガキを今すぐ渡せ!奴から聞いたぞ、あの映像を見たんだってな。ならそいつがどんな本性を隠しているかわかってるはずだ!」


「あぁ知ってるさ。けどだからといってみすみす殺させるわけにはいかねぇだろ。現にこの子は助けを求めてきたんだからな。」


「愚かな、ならそのガキと一緒に死んでもらおうか!」



 鳥人族は再び攻撃を再開した。ビュビュッと羽を飛ばしてくる。剣に魔力をかけ直し、攻撃を弾いていく。糸を使って回避しつつ1人ずつ間合いを詰めていく。斬り上げたりして相手が飛んでも多少ダメージを与えられるように工夫しながら戦う。



 あかりちゃんはその光景を、逃げながら観察していた。鳥人族の血が周りに飛び散りながら。たかだか4人で攻めてくるなんてお前らの方がよっぽどバカだと思いながらも一人一人倒していく。戦闘はあっさりと終わり鳥人族は地面に伏している。



「クソ、バケモノか!?おれたちが地面に伏せるなど...」


「いつも空にいるんだもんな、どうだ地面の味は。美味いだろ?w」



 とりあえず追手は撃退したから早く国境を越えよう。追手には謝罪として応急薬を渡してバイクに乗り込もうとした。



「あかりちゃん終わったよ。出ておいで。」


 返事がない。一体どこへ。



「あかりちゃん?」



 呼んでも返事がない。その時。



「ぐわぁぁー!!」



 鳥人族の男が叫んだのを聞き後ろを振り返ると。


 グシャリ!グチョリと嫌な音。



 なんとあかりちゃんはその男の足から噛みついていた。肉を引きちぎり頬張る、その顔は正にあの映像そのものを再現したように。



「あかりちゃん!!」



 叫んだ時には咄嗟に体が動いた。すぐに引き剥がそうとするが力が強い、おれが全力で押さえつけてるのがやっとのくらいに。あかりちゃんの口元は鳥人族の血で赤塗りされている。なんで突然人が変わったようにガラリと豹変したのだろうか。



「お前ら早く逃げろ!!」



 鳥人族たちに逃げるように伝えた。応急薬を飲めばハイハイしてならなんとか体を動かせるからだ。あかりちゃんの腕は常に魔力を帯びている。


 鬼族は武力の一族だが一応は多少の魔力も持っている。だがここまで魔力を溢れさせて戦えるのは鬼族どころかおれの知っているやつでもそうはいない。その拳がおれの腹を殴っていく。



「ぐっ!がはっげほっ!」



 さすがにここまでの実力を隠しているとは思わなかった。けどまともにやってしまえば、あかりちゃんを殺してしまうかもしれない。どうすりゃいいんだ。あかりちゃんはおれが流した返り血を手につけて舐めた。



「くくく、あひゃひゃひゃ!!美味い!美味すぎる...お前の血を、皮を、肉を、骨を!私に食わせろぉー!!!」



 あかりちゃんはものすごいスピードで襲いかかる。そして何発も拳で殴りかかってくるのを咄嗟に避けつつ、剣に魔力を最大まで込めて対応していくがあかりちゃんの力は想像以上でおれの方が押されている。



「やめろあかりちゃん!!君を殺したくない!!」



 制止を促しても全く反応がない、まさに本能のまま動く本物の化け物だ。鳥人族のやつらはなんとか少し離れて行ったのを確認したおれはやむを得ないがあの技を使う。


 一気に力を込めて拳を弾き返し、あかりちゃんの上空まで飛ぶ。



「オーバーソードレイ!!」



 前にも話したがあまりこの技を多用してしまうと心臓に負荷がかかってしまうため、一気に戦況を変えるためにもここで決めたいところだ。


 だがあかりちゃんは不敵に笑いなんと技を直接腕で受け止めてしまった。そして逆に弾き返されてしまう。回避していく。


 

 ドクン!として胸を抑える。一度地上へ降りた。



「はぁはぁはぁ」



 心臓が痛む、抑えながらもどうにか戦況を打破する方法を考えている。うずくまっているとあかりちゃんはニヤリと笑う。



「強いものを食うのが鬼族の掟、ここで食うのは勿体無い。少し時間をやる、それまでにもっと美味くなってろ。」



 そう言い残し猛スピードで走って行った。追いかけようとしたが心臓が痛くてまともに動けない。あっという間にあかりちゃんは逃げてしまった。それも絡庵の方向へと向かって...。



「だから言っただろ、あのガキは化け物だと。」



 鳥人族のリーダーはおれを背負いそう言った、おれがここまで何もできないとは思わなかった。今までの戦闘経験から止められると思っていたがおれの考えが甘すぎた結果がこれだ。



       ーーーーーー


「さっきはよくもあんな臭いものをぶつけてきたな。」



 あれから狼族の男も合流してこれからあかりちゃんについての対策会議を開いていた。狼族はあの臭い玉をぶつけられておれにブチギレている。それを鳥人族のリーダーが抑えている始末。



「まぁ待て、まずはあのガキをなんとかして処分する必要がある。おそらくあの化け物は絡庵に向かった。街の人々をみんな食うつもりだ。」


「待ってくれ、処分って言ったか?本気で殺すつもりかよ!?」


「あぁそうだ。お前も実感しただろ。あのガキは救うべきではない、止めるべき存在だと。これ以上死人を出すわけにはいかない。我らが教祖も同じことをいうはずだ。」



 止めるべき存在...。その言葉はあまりにも悲しすぎる、まだ10歳くらいなのに鬼族ってだけで殺されなきゃいけないなんて。


 でもあの狂気を実際に体感したおれはさすがにこいつらが言っていることが正しいと理解している。覚悟を、決めなきゃいけないのかもしれない。



「なんとか対策を考えてみる。3日時間を作ってくれたんだ、その間になんとか全員が救える方法を見つける。もし万が一あかりちゃんが人々を襲ったり、何も解決策を見つけられなかった場合は...。」



 そう、これしかない。少なくてもこれがおれにできる、そしておれに対する世界からの罰だ。



「この手でおれが、あかりちゃんを殺す。」



 おれの赤黒い瞳はその場にいた奴らを圧倒させた。もうおれは誰も殺したくはないんだけど、こうするしか道はないんだと悟った。おれの瞳は若干潤んでいたという。




to be continued


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