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探り手

「………………」

「……1,785円になりまーすご一緒に二アチキ如何ですかー」

首を振っていらないアピールをし、そっと電子マネーを差し出すと店員もそれ以上は突っ込んで来ずに品物だけぬっと差し出してくる。

「毎度のことだけどちゃんとご飯食べなよー」

余計なお世話ですと言うのすら面倒なのでそっと立ち去る。……あの人毎回居るけどいつ休んでるんだろう。

そんなことを考えつつガラス戸の前に足を踏み入れ……るけどドアが開かない。

じぃっとセンサーを見上げてみたり、手を振ってみたり。開かない。動いてみたり、かさかさこそこそ。開かない。

「あれ、開かない?」

ホットスナックの箱の影からにゅっと首だけ伸びてくる。大丈夫ですからと片手で制して一旦下がる。仕方ない、誰かが来店したらすれ違いで抜けようか、なんて思っていると唐突に自動ドアが開いて、

「磨穂呂、早く来るのです。今日発売の『ねこさんのきもち』特別増刊号が無くなっちゃうのです」

「いつき、そんなに急がなくても、大丈夫だって……」

妙な凸凹コンビが駆け込んでくる。いやいつもの事か。とりあえずこの隙に……と歩き出すと、

「わっ」

「っ!?」

何かにぶつかって視線が上を向く。流れていく二アマートの天井をぼーっと眺めていると、腕を掴まれて引き戻される。

「わわっ、大丈夫ですか」

慣性でもげそうな首をくいっと引き戻して声の主を探ると、

「………………? き、綺麗な人だ……」

男…………っ!?

ぞわわと総毛立つ肌が警戒のアラームを鳴らす。振り払おうと腕を振ってみても動かなくて、

「よっと、大丈夫ー? 2人とも」

背後から店員さんが助け起こしてくれた後も相手のことを見れずに居た。

「こらダメでしょ小鞠ちゃん、ちゃんと前見ないと」

「すいません……朝食べてなくて、でも時間ないから二アチキだけでも食べとこうと思って……」

二アチキ。ぐるりと視線を回して今度は睨みつける。???はフライドチキンよりも優先順位が低い、と?

「ねぇ」

今日は朝から言葉を発することが多いな、と思いつつ、件の闖入者と正対する。

「どういう、了見。何故ここに居る」

「え、あの、その……」

真正面から見ると途端に挙動がおかしくなる。しかし何故ここに……と視線がとある一点を捉える。

「スカート……」

くい、とつまみ上げて自分のそれと照らし合わせる。同じもののようだ。

「ひゃあ!? 何するんですかっ」

続けて頬に指を添えて双眸を覗き込むと、

「え、あの、その、はぅぅ……」

小麦色の肌が上気して熱を帯びる。

「なんだ、女の子か」

添えていた指を解いて手持ちのアルコールを吹き付けると、

「失礼、しました」

ぺこりと頭を下げると、そのまま自動ドアへと向かう。今度はちゃんと反応したのでそのまま歩き出すと同時に遠くからチャイムが聞こえてきて、

「あらら、これはみんな遅刻予備軍かな?」

その言葉に弾かれるようにして店内の子達が走り出す。その流れを横目に眺めて、???はまた傘を開いて少し早足で歩き出した。

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