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背負うものは。

つんつん……つんつんつん……

「おーい、こまりー……」

「ふにゃあ…………」

小鞠が床とお友達になってからもう10分位。土曜日の日暮れともなればコンビニは人が入れ代わり立ち代わりで、当然気の抜けた小鞠とそれを見下ろすあたしの図なんて何十回も見られてて。

「小鞠、そろそろ立って……あたしも小鞠も、恥ずかしいから」

通路のど真ん中だし、入ってすぐのとこだから入店した人にはみんな見られてる。当然、立地柄星花の制服やユニフォーム姿も多くて、

(ねぇ、あれ根岸さんじゃない……?)

(しかもあれは黒後家蜘蛛さん……一体ナニをしてるの……?)

(ねぇやっぱアレいじめなんじゃ……)

うぅ……ヒソヒソ声が痛い……何故か人よりも耳が良いので、小声でも全部聞こえてきてしまう。

「小鞠、ほら立って」

ぐいっと引っ張ってみるけど全く動かない。このまま行くとあたしの腕が千切れちゃう。

「こーまーりー」

ぐいぐいと押したり引いたり。ダメだこりゃ動かない……かくなる上は、

「…………もう、困ったさんだね。小鞠は」

しゃがみこんで耳元でそう囁くと、ビクッと肩を震わせたかと思いきや小鞠がいきなり立ち上が……ってまたコケる。

「いやなにしてんの……」

こてーんと大の字に転がってる小鞠を覗き込む。ん、なんだかこれだと小鞠を組み伏せてるみたい……?

「せ、せんぱい…………」

とろんとした目で俯く小鞠。

「や、やさしくしてください……」

うん決めた、小鞠はこのまま捨ててこう。

膝を払うと小鞠を無視して買い物を続ける。えっと、今夜のおやつは…………

これでいいかな、と目当てのものを全部カゴに入れたあたりで袖口を引っ張られる。けど無視。やっぱり向こうのモカにしようかな。

再度袖口を引っ張られる。そして無視。かと思いきや今度は背中越しにぽふっと身体を押し付けてきて、

「…………ずるいっす、先輩」

「…………ん、何が?」

「……そういうとこが」

「……何がなのか言葉に出さないと、分かんない、なぁ」

「…………その言い方、やっぱり分かってますよね」

「さぁね?」

背中に小鞠を貼り付けたまま、レジまで歩いていってカゴを載せる。一瞬ぎょっとしたような顔を浮かべるバイトくんに、「早くして」と無言で急かして会計を急がせる。

「あ、二アチキも、ひとつ」

「はっ、はい」

いそいそとホットケースからチキンを取り出して包むのを横目に眺めつつ、背中でうーうー唸る小鞠をあやす。暑いからそろそろ離れて欲しいんだけどな。

「お、お待たせしました」

恐る恐る差し出された包みと引換に電子マネーを差し出して決済する。

「ほら、行くよ」

背中の小鞠を引きずりながら二アマートを後にした。

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