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第121話 人族化1

「アルディアさんは、服を脱いでこの医療用ガウンに着替えて下さい。エルフィは水を用意しておいてね」


 エマルク医師の代わりに来てもらったジェーンが、テキパキと準備を進める。エマルク医師の元、三年間の実地指導を受けていたからね。今では充分代わりが務まっているよ。


「薬草も沢山持ってきているから、安心してくださいね」

「ええ、ありがとう、ジェーン」


 ベッドに座り落ち着いたアルディアの横では、イコルティが不安げにウロウロと歩き回っている。


「姉様、本当に僕が噛みついてもいいんでしょうか」

「君も初めてだろうけど、自分の能力をちゃんと確かめておかないといけないからね」

「でも失敗しちゃったら、どうしよう姉様」


 素体があったとはいえ、空の女神にお願いして六日で造られたヴァンパイアだ。調整が上手くいっているか少し不安はあるんだよね。でもイコルティを不安にさせないよう表情には出さず、大丈夫だよと言って実験を進めさせる。


「牙を立てるのは、この首筋辺りだよ」

「その前に、人族になる事の了承を得ないといけないそうです。アルディアさん、本当に僕があなたを人族に変えてもいいですか」

「ええ、結構よ」


 それを聞いたイコルティの金色の瞳の奥が赤く光った。晒された白い首筋に牙を立てて血を啜り、自らの血を分け与える。

 アルディアは小さく呻き、イコルティを抱きしめた。イコルティの牙にも麻酔効果があるんだろう、朦朧とするアルディアをベッドに横たえる。


 三十分ほどすると、アルディアは苦しそうな息を吐きだした。眷属化の時のように暴れる事はないけど、高熱でうなされている。


「体温が上昇してますね」

「解熱の薬草を飲ませた方がいいかな」

「これは免疫反応による熱じゃないですね。体を直接冷やした方がいいでしょう」


 皮膚や体それ自体が発熱しているみたいだね。ジェーンは冷たく冷やしたタオルを首筋やわきの下などに当てて、体全体を冷やすようにする。みんなも手伝い、冷たいタオルを顔に当ててやると苦しい表情も和らいできた。


 体の様子などを診つつ二時間ほどすると、熱も収まり昼前にはアルディアが目を覚ます。


「リビティナ様……私……」

「気が付いたかい。実験は成功だよ」


 掌で磁場を発生させて体の中を調べたけど、胸に小さな魔結晶があるのを確認した。体表面付近に魔力回路もあるようだし、里にいる人族の子供と同じ体になっている。


「アルディアさん! 実験が成功して良かったです~。本当に良かったです~」


 イコルティが泣きながらアルディアに抱きついた。苦しんでいるアルディアを、ずっとベッドの横で心配していたからね。実験が成功して一番嬉しそうだ。


 眷属化の時のような、見た目の大きな変化はないようだけど、全身の汗を拭きつつ体に異常がないか確かめる。目覚めたアルディアは起き上がるとすぐに歩き、痛い所もないと言っている。


「まだ、だるさは残っていますが、なんだか体の中から力が湧いてくるような気分です」

「魔法は使えそうかな」


 元から魔法が得意ではなかったようだけど、指先に小さな魔法の火を灯す。


「胸の魔結晶もまだ小さいしね。その内、体に馴染んで大きくなるよ」


 はい、と応えるアルディアの笑顔が眩しい。

 ジェーンも一連の容態の変化を記録していて、エマルク医師と検討して明日報告してくれるそうだ。一応の成功に胸をなでおろす。


 一週間様子を見たけど、アルディアは健康そのものだ。それに魔力量も増えて生活魔法が使えるまでになっている。

 その結果を踏まえて、他の眷属に対しても実験を重ねる。年老いた人でも体力があり体調が悪くなければ、どんどん人族に変えていくことができた。

 その結果にネイトスも喜ぶ。


「リビティナ様。これで里の者全員が人族になれますな」

「そうだね。病気になるリスクも大幅に減って、みんな長生きできるようになるよ」


 それが一番嬉しい。

 そう思ってニヘラ~としていたら、アルディアが横から意見してきた。


「リビティナ様。気を抜かないで下さいね。この里が終われば、南部地方の移民者の眷属化と人族化があるんですからね」


 そういや、教国からの移民対策のために人族にしようと言い出したんだったね。移民者は何千人もいるから、確かにこれからが大変そうだよ。



 気を引き締めて、イコルティと共にエルメスの都へと飛ぶ。まずはマリアンヌを人族化しておかないと。


「人族になれば、魔法が使える丈夫な体が手に入るという事ですか?」

「泥水をすすったりしなければ、普通の街で生活できるようになるからね」


 マリアンヌも眷属化後は、清潔なこのお城での生活が続いていたけど、それも解消できるよ。


「それじゃあ、マリアンヌさん。あなたを人族に変えてもいいですか」

「はい。よろしくお願いいたします、イコルティ様」


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