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第0.8話 プロローグ6

 両生類型に続き、哺乳類型の地上投下にも成功した。


「これだけ科学の粋を集めて研究してきても、最後は精神の強さに左右されるなんて皮肉なものね」


 強い意志を持てば、キメラの体に記憶を移植しても耐える事ができる。


「それでも、人間に戻りたいと言う人は出てくるわね」

「そのためにこの装置を開発したんだもの。問題はないわ」


 この十センチ四方のサイコロ型装置のナノマシーンを体内に打ち込めば、外殻遺伝子が破壊されて人間の体に戻れる。でも同時に魔素への耐性も無くなるから地上で暮らすことはできない。今まで数人がこれによって、この研究所に戻ってきている。


 地上に降りた、五十嵐さんや上野さんのキメラ体はその人生を全うして亡くなった。でもその意志は他のキメラ体に受け継がれ、地上で文明を築きつつある。私達は冷凍睡眠を繰り返しながら、実験体の様子を観察し研究を進めている。


 神経回路を移植した本人達は、記憶障害などがあり既に研究の第一線から退いている。やはり脳のスキャンは危険だわ。でもその成果はあの地上に表れている。


「じゃあ私達も地上に降りましょうか」


 キメラをより人型に近づけるための研究は最終段階、二種類のキメラ体を地上投入するのみ。魔素を取り込む回路をからだ全体じゃなくて羽や角に集中させている。

 肌の色や体つきは違っているけど、より人間に近い形にすることができた。まさかその羽で宙に浮かぶことが可能になるなんて思ってもみなかったけど。


「後の事はフェルカノープス、あなたに任せるわ」

「はい、お任せを」


 結局、人間専用の外殻遺伝子を完成させることはできなかった。でも希望はある。

 そのために自己回復が可能な人工有機生命体を作って、数百人分の統合思念を精神移植した。フェルカノープスなら何万年でも生き続け、ここの設備と地上を管理する事ができるわ。


「町田さん、なんだか嬉しそうね」

「寺西さんこそ。キメラとはいえこんな若い身体が手に入るんですもの」


 もう年老いた人の身体から、私の研究成果であるこの羽の生えた妖精のような体に移る事ができる。地上では苦労する事も多いでしょうけどワクワクが止まらないわ。


 千体以上の汎用キメラと共に地上に降り立つ。ここが惑星ノウアルズの大地。研究室では味わえなかった自然の空気と風が心地いいわ。


「さあみんな、ここに町を作りましょう」

「はい、マチダ様」


 ここから私の新しい人生が始まる。


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