表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/212

第111話 魔国移住

 翌朝。マリアンヌの様子を見に行くと、背中の怪我もすっかり良くなって傷跡も残っていないようだ。


「今日から馬車の旅になるけど、これなら大丈夫そうだね」

「あ、あの。賢者様が魔王様だと聞いたのですが……」


 そう言えば、まだ話してなかったと仮面を外してマリアンヌに向き合う。


「そうだよ。ボクが魔王さ」

「助けていただき、本当にありがとうございました」

「おい、おい。そんな五体投地までしなくても……」

「いえ、知らない事とはいえ、これまでのご無礼どうかお許を。魔王様は神様と同様な力を持つお方です。アタシのためにその力を使っていただき、何と感謝すればよいか……」


 硬い、硬いよ~。この子は信心深い子だからね~。リビティナの事を神様扱いしてるんだろう。


「さあ、立って。ボクの事はリビティナって呼んでくれたらいいからね」

「そんな、滅相もない」


 ひたすら頭を下げるマリアンヌに何とか立ってもらい、朝食を摂ってもらった。


「さて、魔国に帰りますか、リビティナ様」

「ネイトス、帰りはエリーシアと馬車に乗ってくれるかい。ボクはマリアンヌ達と一緒に乗るよ」

「へい。いいですよ」


 マリアンヌと仲のいいエルフィとアルディアも一緒の馬車に乗ってもらって、もっと親しくなっておかないと。

 最初の二、三日は硬い態度だったけど、だんだん打ち解けてくれて、ちゃんとリビティナ様と呼ぶようになってくれたよ。



「この馬車すごく速いですね。他の馬車をどんどん追い抜いていますよ」


 窓の外を眺めながら、マリアンヌは無邪気にはしゃぐ。


「魔国製の特別な馬車だからね。首都を離れるのは初めてかい」

「いいえ、西の港町に行った事があります。でも東方は初めてです」

「へぇ~、海まで行ったんだ」

「すごいのね。私、あんな遠い港まで行った事ないわ。と言うより首都の外にほとんど出てないんだけどね~」


 エルフィとアルディアに、マリアンヌの話し相手になってもらってやっと打ち解けられたよ。窓から見える景色や、これから行く魔国の事で話も弾んでいるようだ。


「マリアンヌは外国に行くのは初めてかな」

「はい。ヘブンズ教国から出たことはないです」

「眷属になりたいと言ってたけど、まず魔国の事を知ってからでも遅くないと思うんだ。学校での勉強になるけどどうかな」

「はい、リビティナ様がそう言うなら、そうします。勉強は嫌いじゃないですから」


 素直なのはいいけど、やはり神様だとかに依存する傾向が高いようだ。今はそれが魔王のリビティナになっているだけだね。

 マリアンヌは今まで教会の中で、諜報員となる事を前提とした教育を受けていた。魔国では人を育てるための教育を受けてもらいたい。


「第二の都市であるエルメスに宿舎付きの学校があるんだ。まずはそこに入ってもらおうと思っている」

「宿舎?」

「学生寮で、同じ学校に通う子供達と一緒に生活するんだよ」

「教会と同じ感じでしょうか」

「そうだね。国が運営しているから宗教的な事はないけどね。マリアンヌならすぐ馴染めると思うよ」


 今では未成年でも眷属にしているから、すぐ眷属にする事も可能だけど後戻りできないからね。眷属の里には行かずに、獣人のままエルメスで暮らしてもらおう。

 その後は自分の意思で、獣人として暮らしてもいいし眷属になってもいい。その辺りは別の馬車に乗っているネイトスとエリーシアが段取りを決めてくれている。


 予定通り、首都を出て八日目。


「さて、もうすぐ国境だよ」


 教国側の国境では、首都で作成してもらった書類を出して、マリアンヌを移民として出国させる。魔国側では正式な国民として登録をした。


「さあ、これでマリアンヌは魔王様の庇護下に入ったことになる」

「ありがとうございます、ネイトスさん。これから魔国の国民として頑張ります」


 リビティナが直接マリアンヌの後見人となっている。魔王が親代わりなんだから、何も心配せずこの国で暮らしていけるよ。

 翌日、プライベートジェット機が迎えに来てくれた。


「うわ~、何ですかこれ」

「さあ、遠慮せずに乗ってくれるかい。これでエルメスのお城まで送るよ」

「これで空を飛ぶんですか! やっぱり魔国は神の国だったんですね」


 目を丸くするマリアンヌを乗せて一時間ほどで、エルメスの都に到着する。


「リビティナ様。この方がマリアンヌさんですね。わたくしが責任を持ってお預かりいたします」


 お城で、エルメスの責任者であるスレイブンにマリアンヌを預ける。これからマリアンヌは編入試験を受けて学校に通う事になる。


「よろしく頼むよ。マリアンヌ、分からない事はこの人に聞けばいいからね。それにこのお城からなら、里にいるボク達とも直接話もできるし、寂しくなったら話に来るといいよ」


 エルメスと眷属の里はオリハルコンの通信網でつながっている。会いたければジェット機を使えば半日も掛からず来れるしね。


「ありがとうございます、リビティナ様。アタシ、リビティナ様に恥じないように頑張りますので」


 学業以外にも友人を作るのも頑張ってほしいね。魔国で平等と自由について学んでくれたらいいよ。慣れない事も多いだろうけど、この街でなら安心して暮らせる。


 リビティナ達は手を振るマリアンヌと別れて、ジェット機で眷属の里へと向かった。


「うひゃー。こっちは寒いね~」

「今までの南国とは違いますな~」

「作物の取入れが終われば、もうすぐ冬ですからね」


 そうだね。そろそろ里での冬の支度を始める時期だね。


「来年の春には南部地方でサトウキビ畑を作って栽培を始めるよ。一年後には砂糖を自主生産できるようになるからお菓子も作り放題だ」

「あら、それはいいですわね。楽しみですわ」


 エリーシア待望の砂糖の生産。来年もこの魔国は豊かになっていくだろうね。ヘブンズ教国と友好条約も締結されたし、里のみんなと今晩はお祝いの宴会をしよう。笑顔ほころぶみんなと集会場に向かった。




 年末、エルメスにいるマリアンヌと直接話ができた。


「学校の方はどうだい」

「はい、みんな仲良くしてもらっています」


 マリアンヌは試験の成績が良くて高等部に編入している。一番年下でみんなに可愛がってもらっているようだ。


「魔王様に直接話ができるって言ったら、羨ましがられてしまいました」


 魔王であるリビティナと話ができる学生はいないからね。


「年始にはそちらでパーティーがあるだろう。ボクも参加するから、お友達も連れて来ればいいよ」

「えっ、いいんですか! ありがとうございます」


 久しぶりにマリアンヌの笑顔が見れそうだ。





 お読みいただき、ありがとうございます。

 今回で第10章は終了となります。

 次回からは 第11章 空の神編です。お楽しみに。


 ブックマークや評価、いいねなど頂けるとありがたいです。

 今後ともよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ