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第71話 帝国との戦い1

 最前線の部隊から、帝国軍が国境を越えて侵攻してきたと連絡が入った。


「とうとう始まってしまいましたな」

「そうだね。できるだけ犠牲を出さないように戦ってくれるかい」


 首都のお城で、ブクイットとその側近と共に戦況ボードを見ながら話し合う。ここにはリビティナの他にエリーシアやネイトスなど主要閣僚にも来てもらっている。

 お城の敷地内には弾道ミサイルを持ち込み、その発射のために技術者を呼んで、兵士達に指導してもらった。


 既に戦闘の準備はできているんだけど……やはり戦力差が気になる。敵は国境の三ヶ所から攻め込んで来たようだ。主力は中央のウィッチアがいる部隊、約三万の兵力。その東西にそれぞれ一万の兵も同時に国境を越えて来た。


「首都を守る兵も合わせると七万か。よくこんなにも、兵を集めたものだね。王国戦争で兵力は落ちていたはずだけど」

「どうも、ヘブンズ教国からの応援部隊が入っているようです」


 これはアルメイヤ王国の王都からの情報。遠く離れた国の様子を知らせてくれる。守備部隊には鬼人族の姿もあるから、キノノサト国からも部隊が派遣されているんだろうね。

 こちらも王国から援軍として一万五千人の兵士を借りているけど、魔国軍と合わせてやっと三万の兵力だ。


「とは言え最前線の中央に当てられるのは約一万。これで何とか持ちこたえてくれればいいのですが……」

「じゃあ、計画通り弾道ミサイルの攻撃を始めようか。エルフィには着弾観測するように指示してくれるかい」


 オリハルコンの鏡で最前線と通信を結ぶ。まずは中央の敵部隊の後方、味方に当たらない位置へ弾道ミサイルを発射する。


「前線より通信。一発目のミサイルが防がれました!」

「防がれただと! どういう事じゃ」


 基地司令官のブクイットが声高に報告者に聞き返す。ミサイルの防衛など全く頭になかったのか、狼狽を隠せないでいる。


「着弾前、上空で爆発したと言っております」

「その上空に、妖精族のように空を飛んでいる者がいないか確かめてくれるかい」


 前回の戦争でウィッチアがミサイルを撃ち落としている。同じ方法で迎撃しているんじゃないかな。


「エルフィ殿によりますと、妖精族らしき羽を持つ兵士が四、五人上空にいると報告してきております」


 ウィッチア一人じゃなくて、組織的に防御してきていると言う事か。東西の部隊に対しても弾道ミサイルを発射したけど、一発は防がれ、一発は迎撃に失敗して着弾したようだ。でも訓練されたミサイルの防衛隊は各部隊に居るようだね。


「リビティナ様。少し早いですが第一防衛線まで後退した方がいいのではないでしょうか」


 そう言ってきたのは、アルディアだった。この世界ではなく、前世の戦い方を知っている者。リビティナの補佐としてこの場に連れて来ている。

 それが正解だね。ブクイットに言って各部隊を後退させるように指示を出した。


「それと夜間にもう一発だけミサイルを撃ち込んでみよう」

「それで防御できるか、確かめるんですね」

「敵の疲弊も狙ってのことだよ。アルディア、そういう事も考えておいてくれるかな」


 この世界、機械や電子機器による武器や監視システムは無い。全て人力で行なっている。通常は戦闘も昼間しかしない。まあ、潜入工作や暗殺は夜間にするから、注意しないといけないけどね。

 そんな事情を加味した上で作戦を練らないといけない。アルディアは作戦参謀としての素質がある。ここで勉強してもらいたい。


 その日の夜にミサイル攻撃をしたけど、迎撃されたようだ。音を頼りにミサイルの位置を特定しているんだろう。翌日も戦況を見ながらお城で協議する。


「やはりキノノサト国から相当な支援を受けているようですわね」


 この場には外務大臣のエリーシアも状況を見てもらっている。最後は外交交渉で戦争を終わらせる事になる。戦況の推移についても知っておいてもらわないと。


「こちらの手の内を、キノノサト国には見せているからね。その対策を立ててこの戦いに臨んでいるんだろう」

「リビティナ様の言っていた、羽の魔道具も供与しているみたいですし……。不可侵条約を結んだとはいえ、魔国の占領を狙っているのでしょう」


 あの大将軍ならばやりかねない事だと、エリーシアはため息をつく。


 こうなれば、リビティナ自身が最前線で戦った方がいいだろうと皆に伝えた。宮廷魔導士のウィッチアが戦場にでてきている。あれに対抗できるのはリビティナかフィフィロぐらいだからね。

 ここで躊躇していたら、大事な命が失われる可能性がある。


「では、俺がリビティナ様に付いて行こう」

「すまないね、ネイトス。ここでの指揮はブクイットに任せるよ。エリーシアとアルディアは補佐してくれるかい」

「はい、承知いたしました」


 その日の内に、ネイトスを連れて最前線の国境へと向かった。


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