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少しでも楽しんでいただければ幸いです。

 厚みのあるカーテンの隙間をすり抜けた、ひとすじの朝日が白い頬を刺す。それは、先ほどようやく手放したばかりの意識を無理に呼び戻した。

 目を開ける勇気はない。広すぎるベッドに横たわったまま、恐る恐る片手を横へと伸ばす。指先に触れるのはしわひとつないシーツの冷たさ。それは体を震わせ、ため息となってこぼれ落ちる。

 はじめての夜が明けた。





「奥様、お目覚めのお時間です。失礼いたします」

 控えめなノックのあと入ってきたのは、侍女のテレーゼ。

 そして、すでに目を覚ましていたベッドの上の女主人に近寄る。状況を察したのだろう、一瞬気遣わしげな目を向けるも、すぐに笑顔に戻り、てきぱきと支度を始めた。


「侯爵様は今どちらに?」

 マリアナは、昨日夫となったばかりのフランツの居場所をテレーゼに尋ねる。

「……旦那様は、先程王宮へ向かわれました」

 朝日を跳ね返すマリアナの豊かな黒髪に櫛を入れながら、言いにくそうに告げる。テレーゼに気を遣わせないように、そう、と平静を装って答えるマリアナ。どうやら新郎は、新婦と朝食を共にするどころか、挨拶すらさせる気もないようだ。

 マリアナは薄紫の瞳を伏せ、そっと今日二度目のため息をついた。





 マリアナの生家は、歴史ある伯爵家だ。その治める領地は、種類が豊富で質の良い農作物の生産地として知られている。特別裕福というわけではなかったが、優しい両親のもと、マリアナは何不自由なく育った。

 

 伯爵家の領地に雨が降ったのは、マリアナが16歳のときだった。すぐ止むだろうと思われたそれは、次第に激しさを増した。水は順調に育っていたはずの苗を押し流し、太陽の光が届かない実はしぼみ、次々と木から落ちていく。

 充分と思われた伯爵家の蓄えも、長引く雨の前には無力だった。

 領民を飢えから守るため、多額の負債を抱え込んだマリアナの父。彼がやむなく王都のタウンハウスを売却すると、マリアナの家の窮状は社交界に知れ渡り、友人と思っていた人たちは、どんどん離れていく。

 マリアナの家のことを知っても、それまでと変わらず彼女と付き合ってくれるのは、幼馴染のアーノルドとフリーデ、そしてのちに夫となるフランツだけ。


 そのタウンハウスは、マリアナがフランツと出会った場所だ。マリアナは、タウンハウスが近くにあったフランツやアーノルド、そしてフリーデの四人で、よく一緒に遊んだり、勉強したりした。

 そして、フランツは、マリアナの初恋の相手でもある。フランツもマリアナのことが好きだと言って、マリアナの瞳によく似た薄紫の石のついた指輪をくれた。いずれ二人は婚約すると本人たちも、そして周囲も思っていた。

 少なくとも雨が降る前は。


 だんだんと人が離れていくことも悲しかったが、さらに彼女を打ちのめしたのは、フランツの父が彼とマリアナを合わせないようにしたことだ。大事な後継の息子と、歴史があっても没落寸前である伯爵家の娘とが付き合ったところでメリットはないと踏んだのだろう。

 唯一の希望は、アーノルドを介した手紙のやり取りだけ。フランツからの手紙には、彼の近況や彼女を気遣う言葉のほかに、文末には必ず「マリアナに会いたい」「今は父を説得しているから、それまで信じて待っててほしい」と記されていた。

 マリアナは、手紙をいつも涙で濡らさぬように気をつけながら読む必要があった。そして、読むたびにフランツへの気持ちで胸がいっぱいになっていくのを感じた。いつも読み終えると、フランツからもらった指輪をはめ、手紙をぎゅっと抱きしめた。何もかもいつかきっと良くなって、フランツと一緒にいられる未来が来るように、そう願った。


 ある日を境にフランツからの手紙がぱったりと途絶えた。

 やっぱりこんな困窮している家の娘なんて、と思ったのかもしれない。彼を信じたいと思っても、彼女自身想像が悪い方へと進んでしまうのを止められない。

 アーノルドとフリーデは、悩む彼女のことを心配してフランツのことを調べてくれた。すると、フランツは父である侯爵の指示で海外に留学に行ったことがわかった。でも、それがどこなのかはいくら調べてもわからなかったらしい。

「侯爵の指示」ということは、きっと彼の意思ではない、きっと彼から連絡をしてくれる。そうマリアナは信じて待った。

 もう手紙は届かないと、頭のどこかで叫んでいる自分には気づかないふりをして。


 マリアナたちのことを知った彼女の両親は、フランツの父である侯爵に会いに行った。せめて、二人が友人として連絡を取り合うことだけでも認めてもらえないかと説得するためだ。

 どうしようもないことだと、本人たちもわかっていた。でも、自分たちのせいで落ち込み悲しむ娘を見ていられなかった。

 果たして、侯爵に会うことすら叶わなかった両親は、ただマリアナに申し訳ないと泣いた。

 彼女もひとしきり泣いたあとは、「領民を守ったお父さまは正しいことをしたし尊敬している」「誰も悪いことなんてないのだから、謝らないで」と気丈にも笑顔を見せた。

 フランツのことはもちろん悲しい。でも、今は家族を守らなくては。

 マリアナも自分にできることをしようと決め、懸命に働いた。もうメイドを雇うのも難しい状況のなか、掃除や水仕事などできることはなんでもした。

 マリアナの父母も昼夜を問わず働いたものの、無理を重ねたせいで体調を崩すようになってしまう。

 そこまでしても完済の目処は立たず、いよいよ先祖から代々引き継いできた領地も爵位も、返上しなくてはならないという状況に陥る。

 そんな伯爵家をフランツが訪ねてきた。


 雪も溶けはじめ、温かい日だった。

 フランツは、侯爵であった彼の父が亡くなり、爵位を継ぐために急遽、留学先から戻ってきたのだった。

 高価な調度品はすべて売り払ってしまった、がらんとした伯爵家の応接間にフランツを通す。

 5年ぶりに会う幼馴染は、背も伸びて逞しくなっていた。薄茶色の髪は艶やかに整えられ、碧の瞳には精悍さが宿っている。明かりも抑えられたつましい部屋なのに、フランツがいるだけでそこだけが明るく輝いてみえた。

 そんなフランツを前にしたマリアナは、顔が熱くなり、心が浮き立つのを感じる。やっぱり好きだ、と思う。マリアナの気持ちはずっと変わっていなかったようだ。

 すると、それまでなんとも思っていなかったのに、生活に追われて手入れが行き届いていない、かさかさの肌や髪、朝晩の水仕事のせいでざらざらに荒れた手が気になって仕方がない。

 フランツの視線を感じるが、恥ずかしくて真正面から彼を見ることができない。マリアナは、その視線から逃げるように下を向いて、ぎゅっと指先を隠すように握りしめる。

 それでもフランツを見たくて、こっそり盗み見ると、ちょうど二人の目が合う。

 すると、フランツはマリアナからすぐに目を逸らした。偶然ではない。あれは敢えてしたことだとマリアナにはわかった。その態度からは以前のような親しさは感じられない。

 何年も離れていたから、マリアナに対する気持ちは薄れてしまったのかもしれない。それも仕方のないこととはいえ、マリアナはそのことを寂しく思う。潤みそうになる目を隠そうと、また下を向く。

 フランツは、彼女の両親にも挨拶をすると、古びたソファに腰を下ろした。そして、おもむろに一片の紙を差し出す。


 それは小切手だった。マリアナはその金額に驚く。これだけあれば借金を返すには充分だ。

 もともと伯爵家の領地は農作物が豊富な地域。借金さえなければ、安定した運営ができる。

「いまさらとお思いでしょうが、伯爵家の皆様に対する過去の私の父の礼儀を欠いた振る舞いをお詫びします。そのお詫びのしるしとして、どうぞこちらを領地の立て直しのための資金としてお使いください」

 突然のことに戸惑うマリアナの両親。

 前侯爵はマリアナの家との関係を断ちたかったはず。それを知っているであろう後継の彼が、これだけの大金をなんの条件もなく払うとは考えにくい。

「恥ずかしながら、当家の家計はもう後がないほどひっ迫しているのは確かです。ですがこんな大金ともなると、おいそれと受け取ることはできません。さすがに何かしらの条件がおありなのでしょう」

 もう残っているのは、領地の所有権や農産物の販売権くらいしかない、それとも他に何か希望があるのかと問うマリアナの父に、フランツはどれでもないと首を振る。

 

「……私は、急なことで侯爵を継ぎました。領民を安心させ、周囲の貴族たちを納得させるだけの基盤を早急に築く必要があります」

 表情を硬くしたフランツは、決心したようにマリアナの両親を見つめて、口を開いた。

「それにはまず、身を固めることが先決と考えています。それでも誰でもいいというわけではない。ところが、年齢や爵位の合う令嬢はすでに結婚していたり婚約したりしている」

 淡々と紡がれるフランツの言葉は、マリアナをなぜか落ち着かない気持ちにさせる。この先を聞きたくない、そんな気持ちに。

「そこで、現時点で唯一条件が合うマリアナ嬢に」

(どうかその続きは言わないで……!)

 マリアナの願いもむなしく、フランツは続ける。

「資金の提供の対価として結婚を申し込みたい」

 その瞬間、マリアナの父はソファから立ち上がり、母は小さく叫び声をあげる。

 マリアナの体は、まるで冷水をかけられたように一気に冷えていく。手が、足が震えて止まらない。


 マリアナの父は、馬鹿にするなとひどく怒った。落ちぶれてはいても、大事な娘を金で売ったりするようなまねはしない、今すぐ小切手を持って帰れと彼に告げる。明らかに冷静さを欠いていて、今にもフランツに掴みかかりそうな勢いだ。

 これでは良くないと思ったマリアナは、父を止める。

「お父さま、どうぞ冷静になってお考えください。現状ではこれ以外にこの家や領地を守る方法はないのです。お体に障りますから、お母さまもどうか心を落ち着けて……」

 私は大丈夫ですからと、両親をなだめる。

「ここはどうか、私に任せてください」

 マリアナの父は真っ青な顔で娘を心配そうに見つめ、母は泣きながら力無く頷く。

 マリアナは、父母の手を強く握ると、二人の目をしっかりと見て安心させるように頷いた。

 今の私たちにはもうこれしかないと、強く自分に言い聞かせる。

 家、そして家族を守れるなら。

 それに、どんな形であれ彼のそばにいられる。

「……侯爵様、このお話、ありがたくお受けします」

 マリアナは、フランツをまっすぐ見て告げる。

ただ、前のようにフランツとは呼べなかった。

 フランツは、なぜか苦さを耐えるように眉を寄せ、黙って頷いた。





 フランツが結婚の条件に挙げたものは多くはなかった。

 女主人として侯爵家内の家事を取り仕切ること、夫婦同伴が必要な場には必ず出席すること、この二つだ。

 それさえ守れば、ここでは好きに過ごしていいし、伯爵家には好きなときに戻って父母の手助けをしていい。そして茶会など、社交には出たいと思えば出ていいし、それに伴うドレスなど、必要なものがあればフランツの許可なく買っていい。

 それは、表面上の妻だけの役割しか求めていないと改めて突きつけられたようにマリアナには感じられた。

 自分で決めたことではあったが、フランツはもう自分のことなんて何とも思っていないのだと思うと、ただ悲しかった。


 できるだけ早く来てほしいというフランツの希望で、マリアナは次の月には侯爵家に入った。

 結婚式はせず、結婚の宣誓書に署名だけした。それは、マリアナが結婚の条件として提示した唯一のことだった。フランツは、そのことについて何も言わなかった。

 フランツの両親はすでに亡くなっているし、式に呼べるような友人はアーノルドやフリーデくらいしかいない。それに、大切な両親に決して幸せとはいえない花嫁姿を見せたくない。彼らがさらに落ち込み自分たちを責めるのは目に見えている。だから今はそのほうがマリアナにとっても良いことだと思えた。


 それでも、はじめての夜は緊張して寝室に入った。髪や肌を手入れしてもらい、肌触りの良い夜着に袖を通す。

 大きなベッドの上でフランツを待ちながら、マリアナは、伯爵家でのフランツの違和感について考える。

 離れているあいだにマリアナへの気持ちが薄れていったのなら、それな仕方のないことだ。

 でも、昔のフランツは、決して他人を貶めるようなことを言う人ではなかったとマリアナは思う。

 もしかしたら、今夜、彼と二人きりでゆっくり話し合えるかもしれない。そうしたらきっと、彼があんな態度をとった理由もわかるはず。

 それが叶わなくても、せめて家を助けてくれたお礼だけも。

 そんな期待を抱いて待つマリアナだったが、その夜は一人で過ごすことになる。





 主人に相手にされていない女主人が、使用人たちからどんな扱いを受けるかなんて、長く社交界から離れていたマリアナでさえ知っている。

 マリアナは、王都のタウンハウス以外の侯爵家の使用人には会ったことがない。嫁ぐ前は緊張しかなかったが、この邸では使用人たちがマリアナに好意的で、皆が彼女に敬意を持って接してくれる。そのフレンドリーさに拍子抜けしたくらいだ。

 夫との関係に悩む彼女には、とてもありがたいことだった。

 あとはフランツのことをなんとかしなければ、とマリアナは考える。


 フランツと話し合いたいと思っても、彼は朝、マリアナが起きる前には出かけているし、夜はなかなか帰ってこない。

 たまに邸にいるときでも、書斎に篭りきりで、部屋を訪ねても忙しいからと断られる。

 いくら都合が良いだけの結婚相手だったとしても、なぜこんなに避ける必要があるのだろうとマリアナは思う。

 それにこんな生活を送っているのに、フランツは、毎日必ず邸に帰ってきているらしい。彼はちゃんと食事をとり、そして休めているのだろうか。

 マリアナは、そのことについて執事のヘルマンに聞いてみたことがある。

 彼はただ困ったように眉を下げて「旦那様のことは、

どうぞご心配なきよう」と言うだけだった。


 マリアナが実家である伯爵家の様子を見に行ったある日のこと。

 伯爵家は、借金がなくなったことで、領地の運営も順調だ。両親の体調も少しずつ良くなってきた。マリアナは、自分の選択は間違っていなかったと思う。

 しかし、両親は娘の結婚生活を心配していて、マリアナが自分たちの犠牲になったのではないかと思っているのは明らかだ。

 マリアナは、両親を安心させるため、あえてフランツとのことは話さず、侯爵家で皆がよくしてくれていることを話す。

 両親はそれを聞いて喜んだが、きっと夫婦の関係がうまくいってないことは気づいてはいるのだろう。マリアナは、両親にまで気を使わせてしまっていることを申し訳なく思う。


 両親とは久しぶりに一緒に食事をしたりして、侯爵家への帰りがいつもより遅くなった。

 屋敷に着き、自室に戻ろうとしたマリアナは、フランツの書斎のドアが開いて、明かりが漏れているのに気づいた。

 はしたないこととは思いつつ、中が気になった。彼がいるなら、もしかしたら話ができるかもと微かな期待を抱いて。

 マリアナは、後ろをついてきていたテレーゼを振り返る。彼女は、小さく頷くと少し離れたところに下がった。

 細かな彫刻の施された重いドア。軽く押してみると、手入れがいいのかそれは音もなく開く。覗いてみると広い部屋だった。窓際に置かれた机は、かなり大きいはずなのに、入口からだと手のひらに収まりそうなくらいにしか見えない。壁はぎっしりと本の詰まった本棚で埋められ、机の上には書類や書籍が積まれている。きっと仕事に関係するものだろう。

 部屋の隅には、ソファがひとつぽつんと置いてあって、その上ではフランツが横になっているようだ。

 寝ているだけならいいが、もし体調が悪くて伏せっていたら大変だと、これまでフランツの生活を思うと心配になった。マリアナは一瞬迷ったものの、そっと書斎の中へと入る。決して良いことではないとわかってはいたが。

 そっと歩いたつもりなのに、靴の音がかつりと広い部屋に響く。

 さらに緊張しながら近づいてみると、規則正しい寝息が聞こえる。ただ寝ているだけだと、マリアナはほっとする。

 彼にはずっと避けられていたから、こうして近くで顔を見るのは久しぶりだ。マリアナは彼を起こさないよう、ゆっくりとソファの横に座る。フランツが使っているのだろう、シプレの香りがふわりと漂った。マリアナはフランツの端正な顔を見つめる。

 

 よく見れば、フランツの目の下にうっすらとクマができている。

 手元には書類があるから、きっとそれを見ながら寝てしまったのだろう。机の上の書類もかなりの量だ。家を継いだばかりで大変なのかもしれない。

 マリアナは、彼の仕事を少しでも手伝えればいいのにと思う。

 実家では父母を助けるために領地の経営に携わってきたから、ある程度の知識はある。今度執事を通して申し出てみようかとも思ったが、経営の手伝いは、領主とのコミュニケーションが必須。マリアナと話をしようとしない今のフランツとでは、そもそも不可能だろう。


(無理をしてないといいけど……)

 その目元にそっと指で触れてみる。指先に冷たさを感じた。体が冷えてはと、マリアナは目だけで何か掛けるものを探す。

 そのとき、フランツの瞼がぴくりと動く。

 起こしてしまったと、マリアナはすぐに手を離すが、その瞼はゆっくりと開いていく。

「マリアナ……?」

 寝起きのせいかぼんやりとした様子ではあったが、フランツは優しく彼女の名を呼び、その手を彼女に向かって伸ばしてきた。

 その瞳は優しく、そして甘さを含んでマリアナを見つめている。

 どうしてそんなふうに見るのだろう。

 まるで昔のフランツに見つめられているような感覚に、マリアナの胸は切なくふるえた。

 まだ、彼に対して希望を捨てきれない自分がいることに、今さら気がつく。

 そして、その指が彼女の頬に届こうというとき。

 何かに引き止められたように、その手は止まった。


「……どうしてここにいる?」

 冷えた瞳に、突き放したような声。

「ドアが開いていたので……侯爵様がいらっしゃるなら少しでもお時間いただけないかと思ったのですが……」

 フランツは、マリアナの言葉に目を伏せ眉を寄せると、忙しいのでまたにしてほしいと言う。

 そして、ソファから立ちあがったフランツは、ここにはもう入らないでほしいと言って背を向ける。その瞳にはもう、マリアナを映すことはなかった。


 ━━優しい瞳と冷たい瞳。どちらが本当のあなたなの。

 それを聞けないマリアナは、静かに部屋を出ていくしかなかった。

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