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1000字短編集

才能に恵まれた男の話

その男はとある寒村に産まれた。

その男は才能に恵まれなんでも出来た。

できないことなど何もなかった。それはもはや才能などでは異能と呼ぶべきものだった。

男は村人が望めばなんでも叶えてやった。食べ物を求められれば食べ物を与えた。金を求められれば金を与えた。誰かの死を求められればその死を与えた。

その結果、男の周りには誰もいなくなっていた。正確に言うならば村で生きている者は男以外いなくなっていた。

仕方がないので男は村を出ることにした。

そして行く先々の村で同じことを繰り返した。

両手で数えきれなくなるほどの村を潰した頃に男はそれと出会った。

これまで男が見てきた人間は皆欲望にまみれた笑みを浮かべていたがそれはただ笑っていた。願いを聞いても何も求めない。男が物を与えても喜ばず逆に怒ってみせた。それは男にとっては初めての出来事だった。

そして男が他者に興味を持った瞬間でもあった。

それから男は言われるがまま人の願い叶えることをやめた。叶えようとするとそれが不機嫌になるからだ。

男はそれを観察しつづけ、それが喜ぶことを行いそれが怒ることをやらないようにした。

すると不思議なことに男とそれの周りには人が集まるようになっていた。

転機が訪れたのは男がそれと出会ってから一年ほど経った頃だった。男とそれの評判を聞き付けた国王が巷を騒がせる魔王の討伐を命じたのだ。

男はそれの表情を確認して魔王討伐を引き受けた。男にとって魔王倒すことなど造作もないことであった。

王様の願いを叶えた男とそれを国中が勇者と讃えた。

しかし男たちを快く思わない人物がいた。

それは男に魔王退治を命じた張本人である国王だ。

男とそれのあまりの人気に危機感を覚えた国王は歓迎の宴を開くと言って男たちを王宮に招き兵士たちに襲わせた。

国王はそれを人質に取り、男に自分へ服従するよう命じた。男はただただそれの顔を見ていた。

それは泣きながら笑っていた。

男にとって初めて見る表情であった。

それは何度も謝りながら男に最初で最後の願い事をした。

男はそれの願いを叶えてあげた。

そして一つの国が滅びた。


いつしか魔王と呼ばれるようになっていた男は待ち続けた。

以前に自分とそれがそう呼ばれていた勇者という存在を。きっと彼らならば分かるのだろう。あの表情の意味を。

意図せずラジオ大賞の募集要項と被ったが締め切り過ぎてて残念

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