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第一話

どこまでも広がり続ける、単一の暗闇。

頭の奥から響く「キーン」という耳鳴り。

一度、深呼吸をして血液を脳に巡らせる。


暫くして、目を開けてみる。

まず、辺り一面を覆いつくす炎、そして空へ向かって伸びるいくつもの黒煙が視界に広がった。

次に、一酸化炭素とタンパク質の焦げる匂いが鼻の奥を突く。

続いて、度々近くで起こる激しい爆発音が耳を鳴らす。

そして振り向くと、こちらに背を向けて正座をする男が居た。

視線を自分の手元に移してみると両手で見覚えのある銃を握っていた。


「俺は、落ち着いている。自分のすべきことを、理解わかってる。」


彼の声は微かに震えていた。

ゆっくりと銃を視線の先に向け、照準を目の前の男の後頭部に定める。

もう一度、深く、深呼吸をする。

しかし、深呼吸をする度に彼の手の震えは激しくなる。


「安心しろ。お前に俺は殺せない。お前は一生囚われの身だ。」


こちらに背を向けたまま、男が言った。

彼は何度も深呼吸を繰り返すうちに、呼吸が浅くなり、次第に過呼吸になっていった。

心臓が張り裂けそうになるほどに鼓動は踊り、がっしりとした体中の筋肉はまるで金縛りにでもあっているようかのように痙攣する。

震える人差し指をトリガーにかける。

ちぎれそうになるほど下唇を噛み締める。


「「タンッ!タンッ!」」


リボルバーの銃口から放たれた2発の乾いた音は、赤い炎の中を巡り、黒い噴煙を突き抜け、そして、眠っていた彼の全細胞を叩き起こした。

彼は勢いよく起き上がると即座に隣の机に置いてあったリボルバーに手を伸ばし、目の前の壁にまっすぐ照準を合わせた。

額からは大量の汗が滝のように流れ、左目の眼帯を湿らせていた。

暫くの間、彼は虚空に銃を突き付け続けた。


「はぁ...はぁ...くそっ、また...

、殺れなかった...。」


肩で息をしながら彼は言った。

リボルバーには6発中4発の弾が残っていた。

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