第12話 新たな分裂
シズオカ416。それがこの町の名前、というか地点。壁に囲まれた、今までの町より敷地が広大で、トーキョーよりもちゃんと機能しているかもしれない。
ゲートをくぐってすぐ右折、曲がれば紺色の四角い建物が見えた。SとCの大きな看板が入り口の上に取り付けられている。
バイクを駐車スペースに寄せて、電源を切ってから降りた。ハンドルブレースに取り付けたホルダーに固定していた中古スマホをポケットへ。ジェットヘルメットはハンドルにかけ、グローブはリュックに入れる。
『大きなサービスセンターですね』
「ほんと、無駄にデカい」
出入り口に近づけば自動ドアがスライド。マットを踏んで進めばまた自動ドアをくぐる。
「いらっしゃいませ。真守様ですね」
丁重に頭を下げるスーツを着た男が現れ、今までにない扱いに緊張してしまう。
「ど、ども」
受付カウンターには店員が複数横に並んで座っている。カウンターを挟んで向かい合うように座っているのは、この町の住民だろう。
他のサービスセンターとは違うのは、デスクトップパソコンのスペースが全て個室だということ。あれだ、ネットカフェみたいな感じ、併用しているのか?
個室から一人、作業着の男が出てきた。金に染めた短髪で、細身の体格。どこか物憂げな表情のままリュックを肩に提げて足早に外へ。
「ドクターFはお元気ですか? なかなかにお忙しい身でしょう?」
「そう、みたいです。今はラボにいて元気そうでしたよ」
正直ドクターFのことはよく分かってない。なんか変な人だなってことぐらいか。
「それはそれは。真守様、本日はどういったサービスをご利用でしょうか?」
「あぁ、ちょっとパソコンを借りてもいいですか? 探し物をしているんです」
「是非是非お使いください」
なんかやりづらい。さっさと行ってほしいもんだ。
早速俺は受付なんてすっ飛ばして、先程空いた個室に入ると、
『なにか、忘れ物ですか?』
聞き慣れた女性の声が。
俺は思わずポケットを叩いた。
『私じゃありませんよ』
少し不満そうに返ってくる。じゃあ誰の声だ? デスクトップパソコンに顔を向けた。
「何か言った?」
そう声をかけてみるが、パソコンから何も返ってこない。
「やっぱりお前だろ」
ポケットからスマホを取り、軽く睨んだ。
『ちゃんと黙ってましたよ』
「ウソつくなよ」
『疑うなんて酷いです! あと、お前じゃありません。ちゃんと名前で呼んでください!』
「はぁ、それ今関係ないって」
『関係大ありです!』
「……善処するって言っただろ。で、さっきの声は」
『あっ、話を逸らさないでください!』
『あの! こんなところで痴話げんかはやめてください。SCのブラックリストに入れますよ』
俺達は思わず黙った。スマホじゃない、パソコンから確かに声が聞こえた。人のように流暢に喋っている……――。




