不思議な贈り物。
勢いって大事。
「アンタさぁ? ほんとに、アタシが彼女でよかったわねぇ。アンタのお母さまも公認だし、将来だけは保証してあげるわ。ただし――下僕として、ね!」
「………………」
俺の部屋で、我が物顔で椅子に腰かける少女がいる。
名前は斎藤マナミ。俺の彼女であり、ご主人様と言ってよかった。
見た目は確かに可愛らしいのだが、しかし性格は傍若無人。いまも課題をしている俺の背中を足蹴にしている。
そして、当然ながら彼女の分も俺がやっていた。
「聞いてんの? ――翔、返事しなさいよ」
「あ、あぁ……」
「アンタみたいに取柄のないがり勉くん、誰も相手にしてくれないっての。それの面倒を一生見てやろうなんて、アタシはなんて健気なのかしら!」
「………………」
だが、たしかに彼女の言うとおりだった。
俺――駒田翔には、勉強以外にこれといった取柄がない。
眼鏡をかけた地味な顔に、それほど高くはない背丈。おそらくは、他の女の子に目をかけてもらえる将来なんてないのだろう。
だから、俺は彼女の言いなりになるしかなかった。
一人寂しい高校生活を送らないように、するために……。
「あ、課題できたのね。サンキュー!」
そう思っていたところで、ちょうど課題が終了した。
マナミはプリントを奪うようにして取り、帰宅の準備を始める。
「それじゃ、明日もいつもの時間に迎えに来てね~!」
そして、手をひらひらと振りながら出て行ってしまった。
部屋にぽつんと取り残された俺は、深くため息をついてからノートパソコンを起動する。俺には趣味というほどの趣味はなく、精々ネットサーフィンをする程度。
部活なんかをすれば、何かが変わるかも――そうも思った。
『はぁ……!? アンタが部活!? ――陰キャのアンタに部活とか無理無理!』
だが、寸前のところでマナミに阻止されたのだ。
そんなわけだから、今日も俺は一人寂しくネットの海に……。
「翔~? アンタに荷物がきてるわよ!」
「え、荷物……?」
その時だった。
リビングの方から、母親が俺を呼ぶ声がしたのは。
「なんだ? これ……」
そして、受け取った荷物は記憶にない物だった。
コンタクトレンズのようだけど、こんなものを注文した覚えはない。
「まぁ、いいか。なにか料金がかかるようなものでもないし、クーリングオフすれば問題ないし……」
そこで、俺はおもむろに箱を開けて慣れないコンタクトをつけてみる。
すると違和感があった。決して、視界的なそれではなくて……。
「なんだろう、この感覚……」
その正体に気付くのは、翌朝のことだった。
◆
――翌朝。
俺は少し慌てて家を出た。
なぜなら、完全に寝坊をしてしまったからだ。
「ヤバい……! マナミに怒鳴られる!!」
必死に走る。
そして、曲がり角に出た時だった。
「うわっ!」
「きゃっ!」
不意に目の前に現れた女の子と、ぶつかったのは。
互いに尻餅をついて、顔をしかめる。こちらは眼鏡を落として、それを必死に探すことになった。だが、その時にまた違和感が――。
「あの、探しているのはこちらですか?」
「え…………?」
――可愛い、女の子だった。
ハーフなのだろうか、金の髪に蒼の瞳。
端正な顔立ちをした美少女。一目でそんな彼女に心奪われた。
「なんだ、これ……」
そんな俺の目に見えたのは、こんな文字。
【ラブコメ指数――120】
その瞬間から、俺の高校生活は大きく変化し始めるのだった。




