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1 トラックの運転手さんごめんなさい

完全に思いつきです。交通事故を推奨するわけではないのであしからず(>_<)



物語の主人公は異世界に行くときにどのような方法で転生あるいは、転移するだろうか。難しいところだが、例えばなんらかの方法で死んだり、寝てたら突然なんて場合もあるだろうけど、俺としては多分車にひかれるパターンが多いと思う。トラックなら尚更よしだ。


もちろん、交通事故を軽んじてるわけではないし、そういう物騒な話は決して良くないがやっぱり一番ポピュラーな方法はそれだろう。その時に美少女でも助けられれば格好いいものだ。


そんなくだらないことを思いながら信号待ちをしていると、何やら隣を通りすぎる少女が。赤信号なのを無視して歩く彼女に俺は反射的に手を伸ばすがタイミング悪く大型のトラックが目の前を通ろうとしていた。


「ちょっ・・・マジかよ!」


あまりのタイミングの悪さに思わず毒づいてから俺は彼女を強引に引っ張ってこちらに戻すとその反動で俺がトラックの目の前に突っ込む形になった。


ドン!


衝撃と共に俺の体は宙を舞い、ゆっくりと空中で時間が止まるような感覚になる。軽い走馬灯を見ていると徐々に体が落下していき、地面に叩きつけられる。わりと洒落にならないほどに血が出ていながらさっきの少女を見ると驚いたようにこちらを見ている姿が写った。


(ああ・・・これは死ぬかな)


少女の無事に安堵していると視界が霞んできた。多分死ぬのだろう。仕方ない。そういうこともある。むしろ最後にそんな主人公みたいな真似ができたんだ。きっとこれで異世界に行けるはず。そうして俺はゆっくりと目を閉じた。





ーーーはずだった。


「いやー、よく無事だったね。あと少しずれてたら間違いなく死んでたね」


ははは、と笑う病院の先生。

個室の病室で俺は全身包帯まみれになりながらなんとか生きていた。トラックにひかれて生きてる自分のゴキブリなみの生命力と悪運に自分でも驚いてはいるさ。


うん、やっぱり世の中そう簡単にラノベみたいな展開はないんだなと思っていると、先生は不思議そうに聞いてきた。


「そういえば、信号無視なんだってね。何かしてたの」

「ええ、少しだけ読書を」


女の子を助けようとしたなどとは言わずに俺はそう周りに説明していた。目撃者もそう多くなく、女の子のことはわからなかったけど生きていてくれているとは思う。あとはトラックの運転手さんには悪いことをしたと思ってはいる。いや、本当に飛び出したこちらが悪いからね。まあ、自業自得かな。


そうして、検査をしてから心配して来てくれた家族が着替えを取りに行ってる間に、一人でぼーっとしていると、こんこん、というノックがしてから誰かが入ってきた。


看護師さんかと思っていると、何やら見覚えのある少女が病室に入ってきた。長い黒髪の大人しそうなその子はこちらを見てから申し訳なかそうに頭を下げた。


「すみませんでした!私のせいで怪我をさせて」

「えっと、もしかして君はあの時の人かな?」

「は、はい。久遠愛(くおんあい)と申します」

「そっか、俺は佐藤溺(さとうでき)。よろしく」


そうして挨拶をしてから黙りこむその子に俺は少しだけ苦笑してから聞いた。


「あんまり気にしなくてもいいよ。貴重な体験になったからね。ただ、出来ればあの行動の理由を聞いてもいいかな?意図的に信号無視してたよね?」


そう聞くと女の子はしばらく黙ってからポツリと呟いた。


「自殺しようと思ったんです」

「そうか、何か嫌なことでもあったの?」

「いじめにあってるんです。誰も助けてくれなくて、先生や親も宛てにならなくて、最後の手段で外に助けを求めても誰も相手にしてくれなくて、死のうとしたんです」

「なるほど。ちなみにだけど君高校生?」

「はい、激甘高校の一年生です」

「そっか、後輩なんだね」


その言葉に驚く彼女に俺は言った。


「一応俺も激甘高校の二年生だからね。後輩の相談には乗るよー」

「で、でも・・・私のせいで先輩は怪我をしたし、これ以上迷惑をかけるわけには・・・」

「構わないよ。可愛い女の子を助けるのも先輩の特権だしね」

「か、可愛いですか?」


何やら不思議そうにする彼女に俺は頷いて言った。


「だって、君凄い可愛いじゃん。いじめなんてなければきっとモテるよ」

「そんなこと・・・現に男子にもブスって言われますし」

「そんなの嘘に決まってるでしょ。クラス内の空気を読んでの発言。だから自信もっていいよ」


そう笑いかけると彼女は恥ずかしそうに顔を伏せた。それを見ながら俺は少しだけ考えてから聞いた。


「久遠さん。君をいじめてるのは女子だけ?」

「一応そうです。ある人が凄く私のことを嫌ってて皆それに付き合ってる感じで・・・」

「ふむ、ならばその子さえなんとかなれば多少は良くなるのかな。だったら、その子の名前を二年生の学年主任の田中先生に言ってみな。そうすれば多少は大人しくなるから。あと念のため俺の友達の長谷川って人に俺の名前で相談すれば大丈夫かな。もし何かあったらいつでも来てよ。しばらくは入院だしね」

「あの・・・本当にいいんですか?頼っても」

「もちろん。ただ一つだけお願いを聞いてもらってもいいかな?」

「お願いですか?」


そう首を傾げる彼女に俺は笑ってから言った。


「笑顔を見せて欲しいな。可愛いんだからもっと笑わないと」


その言葉にしばらく戸惑ってからぎこちなく笑う彼女に俺は優しく微笑んで言った。


「うん、やっぱり可愛いね」

「~~~!?」


何やら真っ赤になってから顔を被う彼女を見て俺は思った。異世界には行けなかったけど、こうして新たな出会いがあったことはプラスだろうと。















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