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最後の誕生日プレゼント

作者: 黒川 想流

今回は短編で感動出来るような話を書いてみました! これで感動出来なかったら俺に感動系は書けないって事ですね!!



俺の名前は浜谷(はまや) 奏平(そうへい)。22歳。

仕事場で知り合った女性と結婚して同棲する事になり今新居に来ている。

二人はお互いが持ってきた荷物を出そうとしていた。

その時、彼女は聞いてきた。


「それなに?」


彼女が指を差していたのは俺が持ってきた荷物の中にあった小さな箱に入っているぬいぐるみだった。


「それ…か… 怒らずに聞いてくれるか?」


「え?…うん」




今から話すのは高校三年生の夏の出来事だ。


6月15日、俺はいつものように学校に行った。

だが、ふと頭の中を横切ったのはちょうど来月、7月15日が俺の誕生日だという事だった。

俺は一人、確実にプレゼントをくれるであろう人物を想像していた。


「おはよー」


ちょうど良いタイミングで想像していた彼女が声を掛けてきた。

彼女は如月(きさらぎ) 真弓(まゆみ)

俺と交際関係にある女の子だ。


「おはよう、今日も真弓は可愛いな」


「そうちゃんもカッコ良いよ」


ここで皆様は恐らくこう思ったでしょう。

『バカップルかよ』と。

その通りです、俺達は世間一般で言うバカップルという物です。

2年生の終わり頃から彼女と交際し始めた。

喧嘩なんてした事も無く、仲良くなる一方だった。


「そういえば、そうちゃんさ」


彼女がそう口を開いて、俺は首を傾げて彼女の方を見る。


「何か欲しい物とかある?」


そう言われて俺はすぐに分かってしまった。

彼女は俺の誕生日プレゼントを考えているんだと。

1ヶ月前に確認するなんて真弓はやっぱり良い子だな。


「俺の欲しい物か…そうだなぁ」


少し考えた挙句、俺は一つの答えを思いついた。


「真弓が居れくれれば、それで十分かな」


俺は自信満々のドヤ顔でそう言っていた。

彼女は苦笑いで誤魔化していた。

あれ、もっと惚れ直してくれるかと思ったんだけどな。

流石に狙いすぎたか。


「そっか、私が居ればいいのか…」


彼女は深く考え込み出した。

変な事言わないで素直に欲しい物を言った方が良かったかな?

でも、物より彼女が居てくれるだけで十分だというのは本心だ。

彼女が居ないという状態は考えるだけで怖くなる。


そんな時学校のチャイムは鳴り響いた。

彼女とは同じクラスのため、二人で教室に向かった。


放課後になって彼女と他愛のない話をしながら下校した。

いつもは当たり前だと思っていて考えもしなかったが、その日はふと彼女と居られる時間がずっと続きはしないんだろうな、と思ったりした。


家に帰ってもずっと彼女とSNSアプリで話していた。

夕食を食べてる時と入浴時以外はずっと話していた。

その日の最後のチャットは「おやすみ」「おやすみーまた明日ね」というやり取りだった。

明日も会える。そう思っていた。


だが翌日、いつもは俺より先に来ている彼女は学校に来て居なかった。

気になってチャットを送ると熱が出て寝込んでいると返信が着た。

すぐに俺はお見舞いに行こうとしたが、それを読まれて彼女から早退するなと言われた。

心配で仕方ないが学校が終わってから行く事にした。


いつもより授業に集中出来なかったがやっと放課後だ。

友人に誘われたりしたが今はそれどころじゃない。


俺は走って彼女の家に向かう。



彼女の家に着いて、すぐインターホンを鳴らす。

ドアが開いて、出てきたのは彼女の母親だった。


「あら、そうくんもしかしてお見舞い?」


「はい、そうです」


以前、会ってもう交際関係である事を話したため、彼女は俺の事を知っている。

俺は慣れた様子で家にお邪魔させてもらう。


真弓の部屋に行くと彼女はベッドで横になっていた。

寝ているのかと思ったが、俺が部屋に入っていくとすぐにこちらを見た。


「大丈夫か?」


「ふふ、まだ学校終わって10分も経ってないよ? そんなに私に会いたかったの?」


そう言われていつもの彼女だと安心した。


「当たり前だろ? お前に会えないと俺は孤独死するぞ?」


そんな冗談を言って笑い合った。

それから今日学校であった事などを少し話した。

あまり長居するのも悪いかと思って数分後には帰ろうとした。


「それじゃ、気をつけてな」


「あ、うん、また明日」


そうやり取りして彼女の家を出た。



その日はチャットを送ったらゆっくり出来ないかと思って俺も安静にしていた。



翌日、俺はいつも通りな彼女を見たからか、今日は普通に会えると思っていた。

だが、現実は俺を裏切った。

彼女は来て居なかった。そしてアプリでチャットを送っても返信さえ無かった。

俺は学校を抜け出してでも行こうか悩んだ。だが、学校サボるなって怒られるかもしれないし、まだ治って無くてただ寝ているだけかもしれない。

そう思った俺は学校に留まり、授業を受けていた。



4時間目がもうすぐ終わる時、ポケットに入っている携帯が振動した。

さりげなく見てみると、通知欄にあったのは彼女からの返信だった。

それで安心したのも束の間、彼女からの返信内容は驚きの物だった。

「入院することになった」

ただ、それだけが書いてあった。

俺は驚いて席を立つ。


「おい、どうした浜谷」


その時、授業をしていた先生は俺にそう言った。


「早退します!!」


俺はそう言って鞄を持ち、教室を飛び出した。


「おい、待て!」


先生が呼び止めていたが、俺の耳には届いてなかった。



走りながら、チャットで俺は彼女にどこの病院に居るのか聞いた。

ちゃんと学校が終わってから来る事を約束されたけど、もう手遅れだ。

もう学校が見えないところまで来ていた。

彼女が居るのは近くの病院だった。

俺はそこだと思って動いていたからすぐ行ける距離だった。

今来たら怒られるかもしれないけど、待ってられない。

すぐ俺は病院に向かって走り出した。



病院に行ってすぐに受付に行く。


「あの、今日入院した如月 真弓さんの病室はどこですか!?」


受付の人にすぐそう聞いた。


「えっと、302号室ですが…」


俺はすぐに走って3階まで上がる。

エレベーターなんて使ってられない、俺の気持ちはエレベーターより早い。

3階に上がってすぐ、目の前に302号室はあった。


急いでドアを開けると、ベッドで横になっている彼女が居た。

彼女はきょとんとした顔で俺を見ていた。

すぐ、彼女は気付いたんだろう、学校を抜け出したと。


「あー…約束破ったね?」


「ごめん、どうしても会いたかったから」


「ふふっ、まあ分かってたよ」


彼女は来てくれて嬉しいのかそんなに怒っているようではなかった。


「ってか大丈夫なのか?体は…」


そう聞くと彼女は下を向いた。

俺は冗談も言わない彼女に嫌な予感がしていた。


「覚悟して聞いてね…」


彼女はそう言った。

俺はもう怖くなっていた。

まさか難病に…なった…とか…?


「ただの風邪だよ」


…えっ?


「えっ?今、何て…?」


「ただの風邪」


俺は何秒か考えていた。

難病かと思っていただけに何秒も考え込んだ。

そして、やっと理解が出来た。

さっきの彼女の悲しそうな顔は冗談だったと。

それにしても彼女の演技力凄いな…

本気の顔にしか見えなかった。


「何だよ… 心臓に悪いからやめてくれ…」


「ごめん、どんな顔するか気になってね」


彼女は笑いながらそう言った。

その笑顔にはどこか寂しさを感じた気がした。


「1ヶ月もしない内には完全に治るから大丈夫だよ」


「1ヶ月も掛かるのか…?」


「最高でだからね?早ければすぐ治るから」


彼女は俺を落ち着かせるようにそう言った。

病人は彼女なのに俺が落ち着かせて貰っててどうするんだ…


「そうか… まあ、頑張ろうな…」


俺がそう言うと、彼女は下を向いて「うん」と呟いた。



それから毎日学校帰りに彼女の病室に寄って帰っていた。

学校が休みの土日も午前中から日没するまで。

そんな毎日が続いていたが、俺はそれでも彼女と居られる時間が幸せだった。


彼女が入院してから1,2週間後の出来事だった。

ふと、彼女のベッドの横を見ると、可愛い猫のようなキャラのぬいぐるみが置いてあった。


「これ何だ?」


俺はそれを手に取って抱きかかえる。


「それ私が作ったぬいぐるみ! 可愛いでしょ?」


「へぇ… 裁縫得意なんだな」


こんだけ一緒に居たのに彼女が裁縫得意だなんて知らなかった。

まだまだ知らないことがあるな。

これからも一緒に居て彼女の全てを知りたい。

変な意味じゃなくて真面目にそう思った。


だが、不幸は訪れる。


7月13日、その日もいつものように学校帰りに彼女の病室に行くと、彼女は悲しそうな顔で寝ていた。そして彼女の母親がベッドの近くに立っていた。

俺はその光景を見てもしかして…と思っていた。


「あの… どうかしたんですか?」


俺が恐る恐る彼女の母親にそう聞くと振り返った彼女は涙を流していた。

その時点で俺はもう分かっていた。

彼女がこれから言う事が何かを。


「そうくん… 真弓ちゃんね… 天国に逝っちゃったの…」


俺は思っていた事を言われて、何も考えられなくなっていた。

頭が真っ白になってもはや目の前の景色さえ見えなくなっていた。



少しして落ち着いた俺は彼女に聞いた。


「ただの風邪だって言っていたのに…何で…?」


すると、彼女は何かを察したように答えた。


「それは真弓ちゃんの嘘だと思う… だって真弓ちゃんの病気は癌だったもの…」


そう聞いて彼女の事だから俺を安心させるために嘘をついたのだと察した。

そしてそれが分かった時、あの時の彼女の顔を思い出した。

あの悲しそうな顔…

あれは演技なんかじゃない。彼女の本心だったんだ。


「すみません、失礼します」


俺はもう耐えられなかった。そう言ってすぐに部屋を出て家に帰った。


家に帰って俺は自分の部屋のベッドに倒れこんだ。

もう何も考えたくなかった。

だけど、彼女の顔が思い浮かぶ。

その度に俺は悲しみが込み上げてくる。


「うわあああ!!!」


俺はベッドのシーツを強く握って泣き叫んだ。

彼女の顔を思い出す度に涙は増した。

何分もずっと泣いていた。

もう彼女に会えない。彼女と話せない。彼女と居られない。

そう思うと涙はどんどん増していった。



気付くと俺はそのまま寝ていた。

時計を見ると、もう学校に行く時間だった。

だが、彼女の事を思い出して、俺は立つ気力さえ出なかった。

天井を眺めてボーっとしていた。

学校に行く気もご飯を食べる気も何も起きなかった。

そんな時、部屋のドアが開いて母親が入ってくる。


「早く起きなさい! ご飯出来てるわよ!」


俺は母親の声が聞こえていたが、何も感じなかった。

ずっと天井を眺めていた。


「何してんの? 遅刻するわよ!」


そう言って母が俺を無理やり起こそうとした。


「やめろよ!!」


俺は咄嗟にそう言っていた。

母に反抗した事なんて一度も無かったから、母は凄く驚いていた。


「放っておいてくれ…」


俺は彼女を失った辛さを母にぶつけた事に罪悪感を感じて、少し冷静になった。


「まあ、勝手にしなさい…」


母はそう言って部屋を出て行った。

それからもずっと俺は天井を眺めていた。


昼食も夕食も食べずにその日は夜になったら自然と寝ていた。

1日の間ずっと天井を眺めていたのは人生初だ。

こんな事になるなんて想像もしていなかった。



次の日、俺はもうすっかり忘れていたが、今日は俺の誕生日だった。

だが、彼女が居ないんじゃ何の意味も無い日だ。

俺はそう思っていた。


今日も起きてからずっと天井を眺めていた。

そんな時、外で恐らく郵便バイクの音が聞こえた。

いつも聞いてる音だからすぐに郵便バイクだと分かった。

そしてその音が俺の家の前で止まると家中にチャイムが鳴り響いた。

それから少しすると、母が「あんた宛に荷物来てるわよ」と言って部屋に入ってその荷物と思われる箱を置いた。

俺はそれまで一切他の物に興味を惹かれなかったが、その時は何故か、その荷物が気になった。

後から気付いたが、それは彼女からの意思だったのかもしれない。

荷物の差出人は死んだはずの彼女からだった。

俺はそれに気付いた瞬間、すぐに箱を開ける。

中に入っていたのは、ぬいぐるみと手紙だった。

手紙はぬいぐるみの下にあったため、先に俺はぬいぐるみを手に取った。

それは良く見ると、彼女をデフォルメしたような姿をしていた。

俺はその後、手紙を開いた。


「嘘ついてごめんね、恐らくこれが私からの最後の誕生日プレゼントです。それを私だと思って大事にしてね… 大好きだよ」


手紙にはそう書いてあった。

俺はその瞬間彼女に欲しい物を聞かれたときの事を思い出した。


『真弓が居れくれれば、それで十分かな』


俺は涙が流れ出したが笑っていた。


「これを真弓だと思えっていうのかよ…? ふざけんなよ…!」


俺はそんな事を言いながらもそのぬいぐるみを抱きしめていた。

一生大切にする。そう誓いながら。


少しして俺はそのぬいぐるみと手紙を箱に入れて、大事な物を置いている所に一緒にして、部屋を出て朝飯を取った。

母に笑顔を見せて、「行ってきます!」と言って学校に向かった。




「ってな事があってな」


俺は彼女に全てを話した。


「大切な物なんだね…」


「あぁ… 未練があるって訳じゃないけど、彼女の事は絶対忘れたくないんだ」


「そっか… ただの元カノのプレゼントだったら怒ってたかもしれないけど、それなら怒らないよ」


「それなら良かった」


「これからも大事にしなよ?」


「あぁ、もちろん…」




如何でしたか? 次書く作品では悪い所に気をつけて書くようにするつもりなので良ければ感想を書いて貰えると助かります!

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