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1、どうやら、とあるパーティーがダンジョンで不死の王を発見したようです!

どうやら不死の王がダンジョンを

探索するようです!!


1、どうやらとあるパーティーがダンジョンで不死の王を発見したようです!

数千年も昔の話。かつてこの世界には『暴君』と呼ばれる冒険者がいた。この冒険者は誰もが生涯の内に到達することのできないと言われる、最大レベルの15にまで到達し、ありとあらゆるダンジョンを攻略した。

しかし、猛威を振るった彼の伝説でさえ、今では風化し、空想での話とされている。

快晴のとある日の昼、バートン一行は、最近見つかった冥府の森のダンジョンに潜入していた。

「うぅ、バートン。なんだか気味悪いよぉ、このダンジョン。さっきから死霊系のモンスターしか出てこないし、じめじめしてるし、それなのに、からの宝箱ばっかりだし・・・。」

冒険者バートンのパーティーの回復役、ミーナがあまりの収穫のなさに弱音を吐いていた。

「まあまあ、まだここは三階層だし、もっと深い所まで潜っていけば、宝の一つや二つぐらい見つかるよ。」そうはいったものの、確かに、先ほどから見つかるのは、からの宝箱ばかりで、見つかったばかりのダンジョンだというのに、まるで、すでに取り尽くされた後のようにまで思えるほどだった。バートンのパーティーは、剣士のバートン、回復術師のミーア、盗賊の

アンダー、盾役のグリムで構成されていた。バートン、

アンダーは人間で、グリムはトロールなので、このダンジョンの環境は特に気にならないのだが、獣人の

ミーアにとってはこの湿気の高い空間は、あまり居心地のいいものではないらしい。

「それにしてもよお、バートン。さっきからアンデッドしか出てこないし、俺の盗賊スキルにも宝の反応が一切ない。やっぱり、ここは外れのダンジョンなんじゃないのか?」

「いやいや、ギルドの正式発表で、発表されたばかりだから、そんなにこのダンジョンに潜ってる人は多くないはずだ。せっかくだし、もう少ししたの階層にまで行ってみよう。」

やる気のなくなってきた仲間たちを励ましながら、

バートンたちは進んでいった。

「それでも、俺たちはまだレベル2だからなぁ・・・。

五階層までに宝がなかったら、無駄骨だな・・・。」

アンダーは周囲に金目のものがあったりするとすぐにそれを察知できるスキルを持っていたが、ダンジョンに入ってから、そのスキルが発動することは一度もなかった。今日帰ったら、酒場のどの女の子と話そうかと、アンダーが考えていると、スキルの反応があった。ばっと周囲を確認してみると、壁に飛び出ている部分がある。よく見るとその周囲の岩には切れ目があって、どうやらドアのようになっているようだった。

「おい、みんな!!この向こうに宝の反応がある。

多分このボタンを押すと開くんじゃないかな・・・。」

「グリム、敵の反応は?」

「今の所、俺たちの周囲百メートル内にモンスターは

存在しない。」

バートンはグリムに周囲の敵がいないことを確認させると、剣を引き抜いた。敵はいなくとも、トラップがボタンと同時に発動する場合がある。戦闘能力の低いミーアはグリムの盾の後ろに隠れた。

「よし、そのボタンを押してくれ、アンダー。」

アンダーが、ボタンを押すと、扉はゆっくりと低い音を立てながら開き、大きな入口になった。中は真っ暗だったので、バートンは松明の火を中に投げ入れた。

「誰かいるのか?」

その声は唐突に闇の中から、聞こえてきた。バートンたちは、驚くと後ずさった。

「全員。戦闘態勢。グリム、何か分かるか!?」

「いや、敵の反応はない。なんだ、こいつは・・・

ゴーストでも俺のレーダーには反応するのに。」

「いやだなあ、僕はゴーストなんかじゃないよ。

ちゃんとした人間さ。」

ぺたぺたと足音がして、闇の中から、小柄な体躯の

男の子というぐらいがふさわしい見た目の人間が出てきた。しかしながら、髪の毛は地面に届くまで伸び、

見るからに何の手入れもしていないようだった。

「だれだ、お前は。ここはダンジョンだぞ?普通の人間が何も持たずに暮らしていけるところじゃない。」

バートンはいつでも飛びかかることができるように

剣を握りしめた。明らかに、ダンジョン内に人間が

いることは不自然だった。ならば、この男が自分たちをだましているモンスターなのか、またはそれ以外の

何かなのか、とにかく、バートンは目の前の少年が

人間だという事を信じることができなかった。

「僕は、アルマ=テンペスト=ジ=エンぺリオン=

グロリオール。レベル一のしがない魔法使いさ。

君たちも、僕と同じ冒険者なのか?」

確かに、ギルドに所属している証の、プレートを持ってるので、冒険者という事に間違いはないらしい。

しかし、バートンはまだ心を許さなかった。まだ信用するには情報が少なすぎた。バートンが慎重な人間である一方で、アンダーは余り深く考える方の人間ではなかった。アルマの方へとずんずん近寄っていくと、

頭をつかんだ。

「そうだよ、俺はお前より格上のレベル二の冒険者だ。

こんなところで何してたか知らないけどよ、さっきここの部屋から宝の反応があったんだ。もし、お前が持ってるなら、痛い目見ないうちに出した方が身のためだぜ?何せここまで一つも見つけられなかったから

俺たちはイライラしてるんだ。」

アンダーはすごみながら、アルマに顔を近づけたが、

アルマは顔色一つ変えずに、首をかしげた。それから

少し考えるようにして自分のマントの中をあさると、

豪華な装飾が施された金のナイフを取り出すと、アンダーに渡そうとした、ナイフからはただならないオーラが漂っており、一目見るだけで、すごい代物であることが分かった。アンダーは喜んで受け取ろうとしたが、ミーアの杖で手首を殴られてナイフを落としてしまった。

「何すんだ、ミーア!!こいつがせっかくくれるって言ってるんだぞ??それにこのナイフ絶対すごい奴だぜ!!」

そう言ったアンダーをミーアは厳しく睨み付けると、

ナイフを拾ってアルマの手に戻した。

「ダンジョンでの宝の横取りはご法度だってわかってるでしょ!?それに君もせっかく見つけた物なんだから簡単にあげちゃダメでしょ!!」

アルマはまた首をかしげたが、次は無表情ではなく

困惑した表情を浮かべていた。

「なんだ、欲しいと言ったからやると言っているのに

いらんのか?」

「そうよ、ダンジョンで見つけた宝は見つけた人の物。

あげるなら正式な手続きを踏まなくちゃならないわ。」

ミーアが自慢げに言うと、アルマはますます眉間にしわを寄せて、困惑した表情を浮かべた。

「小難しいことは覚えられないんだ。まあ、たぶんいいことを教えてもらった。お礼にこれを上げよう。」

アルマは再びマントの中をあさると、巨大な水晶と

立派な木でできた杖を取り出すと、ミーアに手渡した。

「え?ちょっと・・・これ、もしかしてユグドラシルと輝龍の鱗の水晶!!?初めて見た・・・こんな素材

一生探しても見つからないのに・・・ってそうじゃなくて!!こういう物はあげちゃダメって言ってるでしょ!!」

ミーアは苦しそうな、どこか残念な表情を浮かべて、

アルマに杖を返した。バートンとグリムはこの一部始終を見守っていたが、どうやらこの少年は本当に冒険者の人間のようだった。アルマはよくわからないと言った様子でナイフと杖をしまうと、バートンの方を向いた。

「ところで君たちは『暴君』と呼ばれている男を知らないか?どれくらい時間がたったのか覚えてないんだが、彼とこのダンジョンではぐれてから、一度もあってないんだ。」

一瞬の間があって、アンダーが最初に吹き出した。

「いきなりなんだよ!!?こんなところにいるから

変な奴だとは思ってたけど、まさか『暴君』が出てくるとは・・・いいぜ教えてやるよ。いいか、小僧。

『暴君』て言うのはだな、千年前に最大レベルの

レベル十五にまで到達したって言われてる冒険者のことだよ。」

「ふむ、千年か・・・。まあ、今回にしては、短かった方か、前回は二千年だったからな。彼がいまどのような姿をしているか楽しみだな。ところで、君たち

僕は外に出たいのだが、外にまで案内を頼めるかな?」

バートンは剣を納めると、アルマの方へと近づいて行った。

「俺たちもここら辺で切り上げてギルドに向かおうと思う。ギルドまでだったら案内してやれるが・・・。

えーと、アルマ=テンペスト・・・・。」

「アルマ=テンペスト=ジ=エンぺリオン=グロリオールだ。まあ、長い名前だからアルマと呼んでくれれば構わん。それではギルドまでの道案内を頼む。」

そう言って、バートンたちが出口に向かって歩き出そうとすると、グリムが血相を変えてバートンに駆け寄った。

「全方向から敵が迫ってきている!!アンデット、ゴースト、イビルゴースト、それにリッチまでいる。ここは三階層だぞ!!?何でリッチみたいな上級モンスターが・・・。とても俺たちじゃかなわない・・・。」

バートンも血相を変えて剣を引き抜くと、部屋を出て、構えた。モンスターたちの数は数えきれないほどの量で、最初の方はしのぐことができたものの、リッチや

イビルゴーストが相手では手も足もでず、ミーアの回復魔法も追い付かなくなっていった。グリムとアンダーは動けなくなり、バートンも手負いなので全滅するのは時間の問題になっていた。バートンはやっとの思いで、アルマがいた部屋に入ると、ボタンを押して

ドアを閉めた。外では壁をたたく音が聞こえていて

どうやらモンスターたちが散って行ってくれる気配はしなかった。

「バートン、大変!!グリムの傷が思ったより深いの。

それにアンダーはイビルゴーストの呪いで傷がふさがらない・・・。私の回復魔法じゃとても直せないわ

・・・。魔力ももうのこってないし。」

バートンは剣をしまうと大の字に寝っ転がって大きく息を吐いた。

「モンスターたちもここを離れる気配がないし、

グリムとアンダーの怪我も治せないか・・・。死ぬまでにレベル三までは行きたかったな・・・。」

「ちょっと!縁起でもないこと言わないでよ!他の冒険者が外にいるやつらを倒してくれるかもしれないじゃない!!?」

バートンとミーアが言い争っていると、それまでずっと黙って立っていたアルマがバートンの方へと歩いていくと、バートンを上から見下ろした。

「死ぬのか?バートン。」

バートンはあきらめたように笑った。

「あぁ、その通りだ。悪いがギルドまでの道案内は

なかったことにしてくれ。どうやらここから生きて出られそうにないんだ。」

「何!!?それは困る。お前には僕を外に連れて行くという重大な任務があるのだぞ?それなのに死んでしまうなんて許さんぞ。そうだな・・・少しそこで待っていろ。」

アルマはドアの方へと近づいて行くと、何かを唱え、

そのままドアを開けることなくすり抜けて行った。

数秒後にはドアの向こう側で大地がひっくり返るほどの爆音が何度も響くと、モンスターたちの壁をたたく音と、うめき声がさっぱりしなくなった。アルマが

またドアをすり抜けて戻ってくると、アルマは動かなくなったバートンの顔をぺちぺちとたたいた。

「おい、バートン。外に群がっていたやつらは倒しておいたぞ?早く起きて僕をギルドまで連れて行くんだ。」

ミーアは疲れ切った顔で、アンダーとグリムの横に座り込んでいる。アルマはその状況を見渡すと、

「だらしのない奴らだな。僕よりもレベルの高い冒険者だというのに一体何をしているのだ。えーっと・・・

『神々の・・・うーん忘れてしまった。詠唱破棄

『神々の祝福』(ゴッズ・ブレス)。」

アルマの手から放たれた光が四人を包み込むと、全員の傷という傷が、もはや衣服に至るまでの傷がすべて

修復してしまった。バートンたちはみんなさっきまで

虫の息だったというのに、急に全快したので、けがをしていたところを確認したりしている。

「大丈夫だ。その魔法は損傷部分を全回復する。

さあ、バートン。早く僕をギルドに連れて行くんだ。」

「あ、あぁ・・・・・。さっきまで死ぬと思っていたのに・・・けがが全部治ってしまった・・・。アルマ、

お前はいったい何者なんだ・・・?」

アルマは、腕を組んで、バートンたちの方を振り向くと、腕を組んで仁王立ちになって堂々と言った。

「僕の名前はアルマ=テンペスト=ジ=エンぺリオン=グロリオール。『暴君』と一緒に旅をしたことのある、レベル一のしがない魔法使いさ。」

バートンたちにはアルマがレベル一の魔法使いだという事はにわかには信じることができなかったが、本人がそう言っている以上そうなのだろう。先ほどまで

死ぬような思いをして、次の瞬間には全回復。バートン一行はキツネにつままれたような顔をしながら、

アルマを引き連れてダンジョンを出て行った。

ダンジョンを出ると、薄暗いダンジョンの中ではしっかりと確認することのできなかったアルマの姿をしっかりと確認することができた。どうやら、本当に長い間ダンジョンの中にこもっていたらしく、髪の伸びようとその手入れの悪さは目を見張るほどだった。

バートンはダンジョンの中では気づかなかったが、

ぼさぼさと言ってもアルマの髪は艶のあるグレーの髪だった。

「なあ、バートン。ギルドまでは一体どれぐらいで着くのだ?僕は早くギルドに行って彼がどこに行ったのか確認したいのだ。」

またそれか、という風に四人は呆れた顔をした。アンダーは頭の後ろで手を組むと、困った顔をしながら、

アルマの方を向いた。

「命の恩人にこんなことを言うのも何だけどよ・・・、

あんたの言う『暴君』て言うのはとっくの昔に死んでるんだぜ?それなのにどうして会いたいなんて言うんだ?」

「確かに僕が一緒に旅をした代の彼は死んでいるだろう。しかし、彼の意志は確かにこの世界のどこかに

転生をしたはずだ。僕はいつもその意思を探しては

彼らとともに時を過ごしてきた。」

バートンは少し考え込むと、何かを閃いたようだった。

「なあ、アルマ。もしかして、お前が言っているのは

スキルのことなんじゃないか?スキルなら同じのを持ってるやつとかいるからな。何かその彼についての

スキルのことについて知っていることはないか?」

アルマはダンジョンで見せたように首をかしげた。

どうやら、『暴君』のスキルについては何も知らないのか。

「その・・・すきる、とかいうものは一体なんだ?

僕がダンジョンにいる間にまた世界が変わってしまったらしい。」

アルマはまるで初めて発音するかのような口調でスキルのことを尋ねた。バートンとしてはそこからなのか!という感じではあったが、アルマが普通の人間とは少し違うことは承知していた。

「スキルっていうのはだな。一人一人に与えられる

固有スキルってやつと、自由に取得できるエクスストラスキルと、レベルが上がった時にたまに取得できる

特殊スキルっていうのがある。要は才能みたいなもんだよ。スキルに書かれた恩恵を受けられるってことさ。ちなみに、俺の固有スキルは『力持ち』、アンダーが

『盗賊の極意』、ミーアが『回復強化』、グリムが

『鉄壁』だ。」

「ふむ、なるほど、わからんぞ。もっと詳しく説明してくれ。」

「バートンの『力持ち』は普通の人よりもすごく力が強くなって、アンダーの『盗賊の極意』は金目のものがあるとすぐに見つけることができて、私の『回復強化』は回復魔法の効力を上げることができて、グリムの『鉄壁』はHPの減りが減少するのよ。どう?わかった?」

アルマはふむふむとうなづくと、

「わかったにはわかったが、アンダーのすきるは何とも言いようがないほど使い道がないな・・・。というか、お前はそのすきるがなくても、宝を見つけられるくらいにがめついだろうに。」

アンダーはアルマにそう言われると、思ったより図星だったというか、気にしていたことあった言うか、とにかく言われたくなかったことだったようで、グリムの方に行くとしくしくと泣いていた。(肝心のグリムは嫌そうな顔をしていた。)

「して、僕のスキルは一体なんなのだろうな?

よく考えてみれば彼が攻撃するとき、他の人間が同じ技を使う時よりもはるかに威力が高かった気がするぞ。木を一本切り倒す技ならば、彼は百本・・・いや

森ごと薙ぎ払うくらいの威力は在ったはずだ。彼の

剣の一振りははるか上空を往く巨竜を墜とし、天を裂くほどだった。」

アルマがふざけてではなく真剣にそう言っているのを見て、それが本当のことなのだと、四人は理解した。

「ギルドに行けば、自分のスキルを確認することができるが・・・攻撃系の技の威力を増大させるスキルか

・・・。帰ったら調べてみよう。それにしても、お前の魔法はすごいな、アルマ。死にかけの俺たちを一瞬で傷一つなく治したあの魔法、初めて見たよ。」

「そうだよ。あんな回復魔法あるなんて知らなかった。

私はまだブロンズの魔法しか使えないから・・・でもあれだけの効果があるってことは、ゴールドの魔法なの?」

目を輝かせてアルマに質問するミーアをショック状態から回復したアンダーが呆れた顔をしてみていた。

「馬鹿か、ミーア。レベル一の魔法使いがゴールドの

魔法なんて使えるわけないだろ。それに詠唱破棄までしてたんだろ?レベル一ならブロンズの魔法を詠唱破棄するだけでも相当すごいぜ。」

「でも・・・ブロンズの回復魔法の中にあんな強力な効果を持った回復魔法はないもの・・・ねえ、アルマ

何の魔法を使ったのか、教えてくれない?」

「あぁ、構わんが。その前に何か勘違いしているようだが、僕が使ったのは回復魔法ではなく、蘇生魔法だ。

なにせ、魔法をかけるとき、そこの三人はすでに

死んでいた(・・・・・)からな。回復魔法では死者の回復はできん。

よって、あそこでは蘇生魔法を使い、詠唱は忘れたから破棄したというわけだ。・・・・どうした、そんなに口をぽかんとあけて、間抜けというよりほかないぞ。

なんだ、バートンまで、早く歩いて僕をギルドまで連れて行くんだ。立ち止まるんじゃない。」

「蘇生魔法を詠唱破棄・・・?あれ、ミーア蘇生魔法ってブロンズの魔法だったか?そこらへんは自信がないんだが・・・。」

「蘇生させるだけの魔法が、プラチナからあるわ。

それに追加で全回復の効果まで付いている魔法は

多分、ミスリルかそれ以上・・・。レジェンドの魔法

かもしれない。」

「まじか・・・。まじで何者なんだよ、お前。その成りと言い、魔法と言い、わかんないことだらけだな。」

「僕が何者かは先ほどから何度も言っているだろう。

確かに僕の名前はそこら辺の冒険者よりも長いが、ここまで覚えてくれないとなると、さすがに僕も傷つくぞ。それともお前が度を超えた阿呆なのか?えーっと

あん・・・ん?お前の名前なんだったっけ?」

「お前も俺の名前忘れてんじゃねーか!!アンダー

だよ。アンダー!!忘れないようにしっかり頭に刻みつけとけ!!」

「悪いな。若いお前たちと違って、僕は長くいきすぎているから、最近あんまりものを覚えるのが苦手なのだ。だからもし僕が名前を忘れていたとしてもあんまり気を悪くしないでくれるとうれしい。ミーアにバートン、グリムと・・・・。・・・・・?」

アルマはアンダーの方を向くと、何秒かの間、思い出そうと奮闘したが、結局思い出せなかったようで清々しい顔でアンダーの方を見た。その顔に示されていたのは純粋な謝罪の意だった。

「アンダーだっつってんだろ!!」

アンダーの叫びは冥府の森の中で反響し吸い込まれていった。憤慨するアンダーに対して、アルマはとても楽しそうに笑い、からかっているのか、本気で忘れているのかは誰にもわからなかった。

「アルマ、もうすぐ冥府の森を抜ける。そしたら、

ギルドのある町、クスコ=ノワールだ。まあ名前の通り、ノワール王国の領地だ。」

「ねえ、アルマ。ギルドに行く前にアルマと一緒に寄りたい所があるんだけどいいかな?」

「構わんぞ。どうやらギルドに行けるようだし。せかしてしまったがそんなに急ぎの用というわけでもないしな。して、寄りたいところとは一体どこなのだ?」

「あの、助けてくれたアルマにこんなこと言うのは

とっても心苦しいんだけど、私って獣人だから普通の人よりも鼻が利くのよ。それで、その、アルマはずっとダンジョンに潜ってたみたいだから、少し臭うと言いますか、何といいますか・・・。」

「ふむ、確かにそれはそうだな。すまなかった。千年もあそこにいたせいでダンジョンの臭いが体に染みついてしまったらしい。それにこの伸びすぎた髪も邪魔だし、この際に切ってしまうとするか。悪いが、町のことは何もわからんのでな、ミーア、案内を頼めるか?」

「もちろん!!アルマにはこれ位じゃ足りないぐらい助けてもらったんだから!あの時は本当にここで死ぬんだってあきらめてたもの。」

そこで、ミーアとアルマは身支度を整え、他の三人は先にギルドに行くことになった。

まず、アルマとミーアは風呂屋に行くと、風呂に入った。案の定、アルマは風呂の使い方というか、入り方まで忘れてしまっていたので、ミーアに連れられて

女湯の方に入った。アルマは顔立ちが幼く、体も

小さく、また髪も長いので、見られてはいけないところさえ、見えなければ女の子と言えなくもなかった。

アルマもアルマで精神年齢が幼いのか、それとも達観

しているのか定かではなかったが、少なくとも通常の男性のような欲を持っているわけではないようだった。ミーアがお湯をアルマの頭からかぶせると、髪の上にかかった黒いすすや、汚れが落ちていき、きれいなシルバーの髪が現れた。

「うわ・・・グレーの髪と思ってたのに、シルバーの髪だったんだね。綺麗・・・。」

「それを言うなら、君の毛並みも美しいものだと思うぞ。」

「何?口説いてるの?私のパーティーじゃグリムが

『鉄壁』のスキルを持ってるけど、私はギルドでは

『鉄壁のミーア』って呼ばれてるぐらいガードが固いんだからね?」

「そうなのか?それはそうとしてそう言う意味で言ったつもりはなかったんだが、勘違いをさせてしまったのならすまない。」

「まあ、嫌とも言ってないんだけどね・・・。」

ミーアは小さな声でそうつぶやくと、猫耳を横に寝かせた。

「何か言ったか?ミーア。私はのぼせてしまいそうだから、もう上がりたいのだが、ミーアがつかりたいというのならばもう少しここにいよう。」

「ううん。何も言っていないよ。私ものぼせちゃいそうだからもうあがろっか。この後はアルマの髪を切って、ボロボロの服を新調してから、ギルドに行くよ!」

風呂から上がったアルマの髪はしっかりと乾かすと、

風呂に入る前はぼさぼさで汚かった髪が、美しい艶のあるサラサラのシルバーの髪になった。体の汚れも落としたので、顔立ちをしっかりと確認することができ、

ミーアがアルマの顔を見てみると、かわいい顔立ちをしていた。アルマと、ミーアはまず髪を切ることにすると、ミーアがいつも利用している、散髪屋に入った。

「中々、いい雰囲気の店だな。ミーアはいつもここで髪を切っているのか?」

「そうよ。私はあんまり髪が伸びるのが早い方じゃないけど、髪を切るときには必ずここにきてる。」

「どうやら、料金は先払いのようだな・・・。それでは、どれくらいのものがいいだろうか・・・。まだ

この町における僕の持つ宝の価値がわからんからな。

まあ、とりあえずはこんなものか。」

アルマはお馴染みのマントの中をごそごそと漁ると、

一掴みの金貨を取り出して、カウンターに置いた。

この金貨はこの国の通貨ではなかったが、金としての

価値もあれば、売るところを選べば非常に高値で売ることのできる物だった。ミーアを含め、店員、他の客全てが、息をのんだが、アルマは知れっとした顔で

これでは足らんか?などと言って、店員を困らせていた。ミーアはとりあえず、金貨をつかむと、アルマのマントの中に押し戻した。そのままアルマを持ち上げて、隅の方に連れて行くと、

「あのね、アルマ。ダンジョンでも言ったけど、それは簡単に人に見せちゃダメ。悪い人がアルマが持っているものを全部取っていこうとするかもしれないよ?」

「僕としては欲しいというならば、やろうと思っているのだがな・・・。しかし、ミーアがそう言うなら

僕もそうしよう。そこで問題なんだが、この金貨すら使えないとなると、僕はここで髪を切ってもらうための代金が払えないのだが?」

「大丈夫!!きっとアルマはそんなことだろうと思っていたから・・・私が・・・ってあれ?おかしいな、

ちゃんとお金は持ってるはずなのに・・・もしかして

盗られた!!?」

ミーアが財布の中を見ていると、財布の中から一枚の紙切れが舞い落ちた。アルマはその神を拾い上げると、

ミーアに渡した。

「ミーア。財布からこんなものが落ちてきたぞ。どうやら、アンダーからのようだな。」

アンダーの走り書きのメモにはこう書かれていた。

「ごきげんよう、親愛なるミーア。どうやら今月は

金を使いすぎてしまったらしい。なので、ミーアから

お金を借りることにしたぜっ!まあ、俺とお前の仲だからこれ位何の問題もないよなっ!!  アンダー。

アルマ代読」

アルマが声を出してアンダーのメモを読んでいると、徐々にミーアの顔が怒りの色で染め上っていくのを

観察することができた。

「大丈夫か?ミーア。こんなしょうもない男のことで

いちいち怒っていたら、早死にするぞ?」

「いいのよ、アルマ。私が早死にしようともあの男は

必ず私よりも早く死ぬわ。だってギルドに帰ったら

殺すから。」

ミーアから急に怒りの色が抜けたかと思うと、ミーアはアルマに笑って言った。表面上は怒りを隠しているようだが、長い時を生きてきたアルマには、その表情の裏の怒りの感情がこれでもか、というほど伝わっていた。

「あのう・・・なにかお困りでしょうか、お客様?」

隅の方でアルマとミーアが二人で話をしていると、

店長らしき女の人が二人の方に寄ってきた。

「僕の髪を切りたいのだが、生憎、二人とも、払うものを持っていないのだ。」

アルマがそう言うと、店長は少し考えてから、嬉しそうな顔をして、アルマの手を取った。

「それでは、あなたのその長くてきれいな髪を私に売ってくださいませんか?」

「髪を売る・・・だと?そんなことができるのか?

自分で言うのもなんだが僕の髪はそんなに価値のあるものではないぞ?」

「いえいえ、お客様の髪はなかなか見られないシルバーですし、髪の艶も非常にいいので、売ってもらえるのならば、それなりの値段で買い取ります。だめでしょうか・・・?」

アルマはふむ、と相槌を打つとその場で百八十度回転してミーアの方を向いた。

「という事だそうだが、どうなのだ?長い間生きてきたが、髪を売ってくれと言われるのは初めてだから、

正直どうしたらいいか、わからん。」

「私から、誘ったのに、まさかこんなことになるなんて・・・でもアルマの黄金よりはいいと思う。本当に

ごめんね・・・。」

アルマは再び百八十度回転すると、店長の方に向き直った。

「という事なので、僕の髪を買うついでに、カットもしてくれるか?これだけ長いと、動くには邪魔で仕方ないのでな。」

「本当ですか!!?お客様!それでは、すぐに髪を買い取らせていたただきます。そちらの席へどうぞ。」

アルマは店長に導かれるがままに席に座った。

「それでは、切らせていただきます・・・・・。」

髪を切り終わった後、アルマの地面に着くまでに伸びきっていた。髪は肩まで短くなり、顔がよく見えるようになっていた。正直言って誰もが最初はアルマのことを男ではなく、女と思うであろう顔立ちだった。

売った髪はミーアによると、かなりの高値で売れたようで、髪を切っても半分以上がおつりで帰ってくる値段だった。その後、ミーアとアルマは、質屋で、金貨を一枚だけ町の通貨に換金すると、町の服屋で、ボロボロになっていたアルマの服を新調した。

「ねえ、アルマ。せっかく服を新調したのに、そのマントは外さないの?似合ってないわけじゃないけど、

洗ってないから、薄汚いというか・・・・・・。」

「あぁ、これは、僕のバッグみたいのものなのだ。

ダンジョンで手に入れた物を全てここに保管しているのだ。しかし、ミーアの言うことも確かだな。今はしまっておこう。」

アルマがそう言ってマントを取ってふっと息を吹きかけると、マントはハンカチほどの大きさにまで、

縮み、アルマはそれをポケットに突っ込んだ。

「どうした、ミーア。そんな顔をして。ダンジョンの時もそうだが、この国の住民にはその顔をしなければいけない習慣でもあるのか?」

「なに・・・そのマント・・・?」

「これは昔ダンジョンで拾った、時空魔法を応用した

マジックアイテムだ。マントの中は空間が曲がってるから、中はダンジョンが丸々ひとつはいるくらいの

スペースがあるぞ。と言っても最近はダンジョンでの拾い物が多すぎて、スペースがなくなってきているがな。」

「・・・時空魔法・・・。ミスリルの最上級魔法を

応用して、マジックアイテム・・・・・・・。よし、

もう考えるのやめよう!!そうだ、アルマ、おなか減らない?私、いいお店知ってるんだけど・・・。」

「そう言えば、千年のあいだまともなものを口にしていないな。紹介してくれるか?」

「もちろん!」

ミーアはそう言うとアルマの手を引いて走り出した。

服などを売っている商店街を抜けると、次の通りからは何とも言えないようないい香りが漂う、通りになった。アルマは食べなくても死ぬことはないが、それでも人間であるので、おいしそうなにおいをかげばよだれが出てくるものだった。

「なんだ!これは!」

ミーアに紹介された店にアルマは入り、その店の人気料理のあまりのおいしさに舌鼓を売っていた。昔よりもおいしくなった料理と、ろくなものを食べなかった

長い時間も相まって、アルマにはその料理が、今まで食べた何よりもおいしいものに感じられた。

「よもや、この世界がこんなにうまいものを作り出すとは!!神々の魔法より驚きだぞこれは!!ん~

うまい・・・・。」

「そんなに、慌てなくてもいいのに・・・。それじゃあ、アルマが食べ終わったら、ギルドに行こうか。」

その時、ミーアのおなかがかわいらしく鳴った。どうやら腹が減っているのに、アルマにまた頼るのは気が引けたようで、腹が空いていないと偽りを言っていたようだ。ミーアは顔を赤らめて、おなかを抑えたが、アルマはそれにすぐ気付くと、店員を呼び寄せた。

「この料理を追加で二皿くれ。」

店員が行ってしまうと、アルマは手をふきながらミーアの方を向いた。

「腹が空いているのだろう?遠慮をせずに食べるといい。そんなに若いのに、しっかり食べなくては健康も保てないぞ。」

「っべ、別におなかなんて空いてないもん・・・・。」

「ふむ、勢いにのって二皿追加で頼んでしまったが・・・思ったよりもうすぐ満腹になりそうでな、ミーアに食べてもらおうと思ったんだが、そうか、腹が空いていないのなら仕方ない。」

アルマが少し残念そうな顔をしてどうしたものかと

考え込むふりをしていると、ミーアがアルマの肩をつかんだ。

「アルマが食べられないっていうなら、私が手伝おうか・・・・?」

アルマの気遣いに気付き、ミーアは頬を赤らめながら

そう言った。

「うむ、それはとても助かる。」

アルマは満足そうにうなづくと、店員が運んできた

料理をミーアの方に回した。二人とも満腹になって

店を出ると、昼の時間を過ぎ、のどかな青い空に

気持ちの良い風が吹いていた。それからも、二人は

アルマの気の向くままに町のいろんな所を見て、

ギルドに着くころには日が暮れかかることになっていた。ギルドは、周りよりもはるかに大きく四階建てぐらいの建物になっていた。

「さあ、ここがギルドよ。」

「ほほう、僕が昔来たよりも何倍も大きくなっているじゃないか。これなら、期待できるな。」

アルマはにやりと笑うとギルドに入っていった。


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