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俺と彼女の死亡遊戯  作者: 松竹梅
第1章:終わりの始まり
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ドキドキ! 入浴タイム

「だ、大丈夫?」

「ああ……大丈夫だよ……」


俺が無意識に叫んだ後、あたしがいちゃ何か不満があんのかと、思いっきりぶん殴られた。

お袋は今、汗かいたからと風呂に入っている。その間に後かたずけをしておくように言われ、今は皿洗いをしている。

まあ、シチューを食べずに済んだからプラマイゼロだな。


「皿洗いなら、私するよ?」

「いや、食べてないのにしてもらうのは気が引けるんだよ」


それにこの処理を素人にやらせるわけにはいかない。お袋の料理の片付けにはやらなければならない手順というものがある。


まず、ガスマスクとゴム手袋を装備。

お袋の料理は普通に口にしても味以外問題はない。

しかし、何故か水と反応を起こし、人体に有害なガスを発生させることがある。

そのため、洗っている最中は必ず換気が必須だ。

そして、水は流さず貯める。流したら、水道管が溶ける場合があるからだ。

ガラスの容器に保存して専門業者に持って行ってもらう。これがお袋が料理した時の皿洗いだ。



「これ……本当に料理なの?」

「分かんねーが、少なくとも食べられる有機物だということだけは確か……かもしれない」


並べられている調味料、食材を見る限りまとも(シチューに使うかどうかはおいといて)だが、どうやったらこれが作れるんだ?


「上がったよ〜」


ちょうど洗い終わった時にお袋が風呂から上がってくる。


「あ〜、さっぱりしたわ〜」


風呂から上がってもやっぱり来ているのは下着だけ。佳世はまた顔を真っ赤にするが、いい加減慣れたのか手で顔は覆わなくなった。

お袋はそのまま台所の冷蔵庫を開けて、缶ビールを2本出す。


「まだ飲めんのかよ……」

「さっきのなんてまだまだ。夜はこれからなんだから。あんたも風呂に入ったら?」

「……そうするか」


***


部屋に戻り、ジャージと下着を準備する。


「なんで、黒ジャージだけこんなにあるの?」

「聞かんといてください……」


中学生の時、何故か黒ジャージってだけでものすごくカッコよく見えた時期があり、調子に乗って何着も買って今に至るが……。

いや、別に厨二病じゃねえし。買ったこと後悔なんかしてねえし。

実用性あるし! 外には着ていけないけど……。

時期とか気にせずに着れるし! 夏は熱を吸収して無茶苦茶暑いけど……。


「あの……、聞きたいことあるんだけどさ……。たっくんのお母さんっていつもあんな感じなの?」

「ああ、お前お袋にあったのは初めてだっけか?」


そういえば。山に連れて行ってもらった時も、うちに遊びに来た時も親父しか会ったことなかったな。


「まあ、いつもあんな感じだな。気にくわないことがあったらすぐに猟銃持ち出してくるし」

「それって普通なの?」

「酔っ払ってないと手が震えるらしいし」

「それにアル中! それでお仕事できるの!?」


驚くことにそれができる。昔、祭りの射的で酔っ払ったお袋が撃ち落としたのが、今俺の部屋にあるBS2だ。

お袋曰く、酔っ払っていると常時の3倍精密射撃ができるらしい。


「よし、行くか」


着替えを持ち、部屋のドアノブに手をかけ、いざ出発……。


「そういえば、お前……風呂どうすんの?」


幽霊なら必要ないと思うんだが……。


「うーーん……、わかんないけど……」

「入りたいと」

「うん……」


そうだよな……。佳世も女なんだし、一日中風呂に入らないのは流石に気持ち悪いよな。


俺は入りたいとは思わないけどな。というか入りたくない。遊ぶ時間が減るからな。昔、入る入らないで、お袋との口喧嘩でぶっ飛ばされてからは、毎日入るようにしたけど。


「じゃあ、入れば良いじゃねえか」

「でも……」

「なんだ?」

「私お風呂長いよ」

「構わねえよ」


そんなに考え込む必要なくね?大それた事をしに行く訳でもあるまいし。

しかし、佳世は中々答えを出さずに、顎に手を当て、黙ってしまう。


……………。


「じゃあ、一緒に入るか?」


場を和ませる為に冗談を言ったつもりだったんだが……


「えっ、入らないの?」

「え?」

「え?」


***


————無理。無理無理無理無理無理無理無理無理!!


風呂に浸かりながら、俺は体温上昇で発生したモノとは別の汗をかいていた。

ああ……。一緒に入るなんて冗談でも言うんじゃなかった……。

いや、別に一緒に入るのが嫌とかそんなんじゃないですよ。

昔はこうやって遊びに来た佳世と一緒に入ったんだし。

でも、なんというか……気不味い。


いや、ダメだろって一応抵抗はしたんだけど、俺の一言に勢いを増した佳世はもうそりゃ一緒に入るといって聞かない。

一人で入るなら、無理矢理入るとまで言い出す始末。


俺も男の子だし……。そんなに求められたら強く言えないっていうか。もう、別に入って良いんじゃない? と思ったのが運の尽き。

今更になって後悔している。俺の馬鹿。


「入るよー!」


き、来やがる! マジで来やがるぞ……!

あいつ……恐れを知らないのか……。

とにかくバスタブの入り口から一番離れた位置に体を縮こませ、後ろ向きになる。


ガチャッ


「うわー、たっくんの家のお風呂やっぱり広いな〜」

「洗うとき大変だけどな」


ああ……、やばいな。どんどん体中の水分が放出されていく……。これは早くなんとかしないと、生命に関わってくるな。


「とおぉぉーー!」


佳世が勢いよく風呂釜に入ってくる。

その影響で風呂の湯がかなり流れてしまう。入り方は昔のまんまだな。


「たっくんと一緒にお風呂なんて久しぶりだね!」

「ああ……、本当に久しぶりだな……」


ありがたいことにバスタブは成人が3人入っても少し余裕がある程の広さがあるので、肌が触れ合わない。

もし、そんなことになっていたら鼻血どころの騒ぎじゃないだろうな……。


佳世は子供のように、バチャバチャと湯の面を叩いたり、手で器用に水鉄砲を作り、俺に発射したりする。


しかし、俺は何をされてもずっと佳世に背中を向けていた。

しばらくすると、はしゃぐのを止めてしまう。


「…………なんで、たっくん後ろ向いてるの?」

「恥ずかしいからだよ!!」


思わず叫んでしまった。

こいつ、羞恥心というものがないのか?


「なんでそんなに平然としてんだよ!?」

「え? だって、久しぶりに一緒に入った訳だし」

「男女七歳にして席を同じうせずって言うだろ!」

「なにそれ?」

「知らねえのか! 男女は七歳で自分の性を自覚して、異性と同じ場所にいちゃいけないって意味だ!」

「それ、時代錯誤じゃない?」

「だとしても、この状況は普通じゃない!」


いくらなんでも今すぐに出て行けとは言わない。

俺が誘ったわけだし……。だが、もう少し、女子としてのもう少し自覚をしてもらいたいものだ。俺の為にも!


「わあぁーー。たっくんって背中広いんだねー」

「人の話聞いて……ひゃっ!!」


急に佳世に背中を触られた俺は思わず喘いでしまう。


「なに触ってきてんだよ!」

「いや、良い体をしてるから」

「その発言は危ない!」


そう注意しても佳世は触り続ける。細く、柔らかい感触が俺の肌をさすり続け、すごいくすぐったい……。


「い、良い加減ヤメて!」

「え〜〜、なんで〜〜?」


五本の指を器用に使い、背中で円を描いたり、上から下を人差し指でつつったり……。

好き勝手に遊びやがって……


カプッ


隙をついて佳世の手を掴み、二の腕を甘噛みする。


「きゃっ! ……たっくん噛まないでよ」

「おふぁえふぃだよ!」

「そっちがその気なら……」


そう言うと佳世は俺の背中に乗ってきた。

……お、重い。

失礼だが、人間、50kgは絶対にあるんだから、重くも感じるだろ。

しかし、その重さよりも肩甲骨辺りに二つの柔らかな感触が伝わり、脳内で警報を鳴る。


「む、胸当たってる! 当たってるから!」

「当ててんの」

「痴女なの!」


……ん? 背中に伝わってくる柔らかい感触の間に何かが挟まっている気がするが……。


「お前……バスタオル巻いてきた?」

「巻いてきたけど……巻かないほうが良かった?」

「ありがとうございます!」


ああ、良かった……。これなら縮こまらなくてもいいじゃないか。なかなか佳世も気が利く。もう、のぼせる一歩手前の状態だ。お先に俺は上がらせてもら……


「——佳世。悪いがバスタオルもう一枚持ってきてもらえないか?」

「いいけど……どうして?」

「…………」


……言えない。俺がすっぽんぽんだなんて……。今はお袋が入れた白濁の入浴剤の湯に浸かっているからまだ大丈夫だが、こんな状態じゃ上がりたくても上がれない。


「…………」

「…………」

「ははあ〜〜ん」

「……なんだよ」

「たっくん、下に何も着てないんでしょ?」

「……着てるわ、ちゃんと……」

「じゃあ、立ってみてよ」

「…………」


立てるわけがない。もし立ったのなら俺の大事な所がお目見えしてしまうじゃないか。

そんなことはできない。俺の漢としてのプライドがそう叫んでいる……。


…………。


「……まあ、いいけどさ」


なかなか立たない俺の反応に飽きたのか、佳世は黙ってタオルを持ってきて、俺に差し出してくれる。

ああ……、やっぱり佳世は優しいな。


「ありが……」


俺がタオルに手を伸ばすと、佳世はヒョイと躱す。


「……なにしてんだ?」

「渡してもいいけど、一つだけ条件出していい?」

「なんだよ」

「明日からも私と一緒にお風呂はいってくれるなら、これを授けよう」

「はあ!?」

「どうせ、たっくんのことだから、今度から何か言い訳つけて一緒に入ってくれなさそうだし」


思考が読まれている……。奴め、エスパーか?


「別にもう一緒に入んなくてもいいだろ。俺は脱衣所で待ってるからそれで……」

「いやだよ」


俺の言葉を佳世は曇った表情に震える声で遮った。


「嫌だよ、もう………。一人でいるのも、一人で何かをするのはもう嫌なの。お願い……。お願いだからそんな意地悪しないで……」


さっきまでの和やかな空気が冷たい何かで切り裂けれ、神妙なムードが場を支配する。

なんで、こうなった?


「わわ、わかったよ! 明日からも一緒に入ってやるから。泣くなよ……」

「本当?」

「本当だから……バスタオルを寄越せ」

「良かった! たっくん大好き!」

「バッ……」


佳世はまた笑顔に戻り、風呂の中の俺に飛びかかり、抱きついてくる。

その弾みで佳世のバスタオルが取れてしまうが、気にしている様子は無い。


「やめて! 生で抱きつくのはやめてぇぇぇぇぇぇーー!!」


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