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俺と彼女の死亡遊戯  作者: 松竹梅
第1章:終わりの始まり
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悲劇は突然に

「達海様のご帰宅だぞ……っと」


無事に到着。帰りは坂が下りになる事もあって、登校よりも早く帰れるのが嬉しいところだな。

玄関横の駐車場に自転車を置き、玄関ドアの前でバッグから鍵を取り出そうとすると、いきなりドアが開いた。


「おお、もう帰宅かよ。学生は早くて良いねえ」


姿を現したのは、無精髭を生やした若干童顔気味の中年——俺の親父だ。


「早いって……もう夕方だぞ」

「それでも早いだろうが。何だよ、ダチ公と深夜まで遊びまくるとかしないわけ?」

「俺にそんなコミュ力ある訳ねえだろ」

「切ねえ事言うんじゃねえよ……」


横に退いてやると、親父は車に乗り込まず、路上を危ない足取りで歩いて行く。

……という事は、どっかで飲んでくるのか。

親父はいつも法衣を着ているため、行動によって仕事か遊びに行くのか判断しなければならない。

親父がやる仕事と言うのは、たまに来る寺関係の仕事……なのだが、それ以外の大半、外に飲みに行っている。

お袋の仕送りで十分に暮らしていけるとはいえ、実の父親がほぼ毎日遊び呆けているというのは息子として見るに耐えない。


「はあ……」


自分が解決できない問題をいくら考えても意味がないと開き直り、今日何度目か分からないため息をつきながら、家へ入る。


***


ゲームというのは、人類の発明の中で五本の指に入るぐらい素晴らしいものだ。

現実では味わえないあれやこれやを疑似体験できるのだから。

だが、どんなに素晴らしいものでも欠点と言うものがある。

自分が考えるに、ゲームの欠点というのはハマりだすと、瞬く間に時間が過ぎる事だと思う。

時刻は17時。出された宿題に手をつけなければ、後々地獄を見る気がするので、ゲームをやりながら忘れた上手い言い訳を考える。

宇宙人に攫われそうになって、必死に逃げていたらやる時間がなかったというのはどうだろうか。

ああ、ダメだ。前に使ったんだ。



ブーー……


何の前触れもなく携帯が震える。


「ちっ」


なんだよ、全く。普段は全然鳴らない癖に、こういう大事な時に騒ぎ出すからな。

大事な用じゃなかったら、直ぐに切ると決め、通話ボタンを押す。


「はい、もしも……」

「先輩!!」


思わず耳を遠ざけたくなる程の甲高い声が受話部から発せられた。

どっかで聞いたかと思えば、さっきの後輩の声だ。

いつ連絡先教えたんだ?


「か、会長が倒れたんです!!」

「は?」

「不知火会長が倒れたんですよ!! 私もうどうして良いか……」

「お、落ち着け! 佳世がどうしたんだ!?」


いきなりの展開に頭が追いつかない。

と、とりあえずどうすれば良いんだっけ?


「きゅ、救急車は!」

「呼びました……」

「近くに佳世は居んのか!」

「はい」

「じゃあ……、とにかく名前を呼び続けて意識を持たせるんだ! いいな!」

「はい……」


自分でも良いのか悪いのか分からない対処を述べるが、最初の勢いは何処へやら。後輩の声は徐々に弱々しいものになっていく。


「しっかりしろ! 今はお前だけが頼りなんだからな!」

「わ、分かりました!!」


これ以上、電話越しではどうしようもない。

通話を切り、直ぐに部屋を出て、階段を降りて行き、玄関のドアノブに手を掛けるが……。


「行って何が出来るんだ?」


そうだ。行ったところで俺が佳世にやってやれる事なんて何もない。

ここからじゃ時間がかかり過ぎるし、何よりも佳世が俺に助けを求める……なんてこともないだろう。

だって、あいつには他に仲の良い奴が山ほどいるんだからな。

俺はその内のたった一つ。いや、それにカウントされているかどうかも危うい。

そうだよ。そうだよ。行くなんて時間の無駄だ。


「電源……落としてないよな」


元来た道を戻り、再び自室に籠もって、ゲーム再開。



……これ以降、寝るまでの記憶が俺には無い。


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