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レッスン41
心底怖いっ……!!
眇めた精悍な目に射抜かれ背筋が凍りつく。私は恐怖に身を縮めた。
眉間に皺を寄せると流石に熊野さんの双子の兄だけある。
その表情は『凶悪』そのもの。
ましてや中身は優しい熊野さんでは無く、あの、乱暴で、傲慢で、人を人とも思わないいじめっ子の『梶原君』だ。
その凶悪な性質は誤解でも何でも無い。
そうなってしまった生立ちや事情は聴いて同情はしたけれども―――彼がそういう性質だっていう事実は変わらないのだ。
「……ふざけてんのか?……」
ひっ!
「ふ、ふざけてなんかっ……」
反論しようとしても、声が出ない。
ハクハクと口を動かし、震えない声帯を叱咤する。
すると梶原君は。
何を思ったか私の顎に手を掛けて、俯きそうな私の視線を上向けた。
「やっ……っ!」
私はほとんど無意識にその手を振り払い、頭を抱えてしゃがみ込んだ。
バタンっ!
扉が開く大きな音がして、誰かが入って来た。
「浩太!」
梶原君が振り向く。
懐かしい低く深い、バリトン。
私は頭を抱えていた手を下ろし、ゆっくりと顔を上げた。
そこにいたのは―――私が会いたくて堪らなかった―――熊野さんだった。




